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近所の人々/佐藤 光一

 他人を観察するのは結構おもしろい。
 今回は近所の人々について語ることにしよう。

 まず、わが家の南側の大家どのの家だ。ここは両親と子3人の5人家族だ。父親は40代後半で個人タクシーの運転手らしいが、これがまた、ものすごく怒りっぽいときている。
  たまたまゴミの収集場所が大家どのの家の角にある。ところが、たまに収集係の人が間違えて大家どのの車庫前(ほとんど使っていない)に収集カゴを置こうものなら、もう大変。収集車が来るのを一時間も外で待ちかまえているのだ。そして収集車が到着するや否や大爆発!
  これが何度かあり、他には宅配便の人にも大爆発していた。しかし、かわいい一面もあり、オウムを飼って自分のことを「オトーサン」と呼ばせようと必死に教え込むものの、このオウム、いつも「オカアサン」としか言わず、今だに「オトーサン」と言うのを聞いたことがない。

 次は、わが家の西側の隣人。20代学生風の男。この男、いつも目ざまし時計を止めずに外出するらしく、夜の7時から9時ごろにかけ50分間、あの金属的な音が情容赦なく鳴りひびく。もう3ヶ月になるので、ついに私の妻も切れたらしく、誰もいない隣人の部屋に向かって「目ざまし止めろ一。」と叫んでいる。

 極めつけが東側の一軒家。ここのおばば(50代後半)はかなりおかしい。自分の家の前と、その隣りのマンションの前に車が止まると「止めなーいでください!」と大声でどなりながら、かんぱつ入れずとび出てくる。そして車に蹴りを入れるのだ。ところで、わが家の車庫は、ちょうどおばばの家のまん前にあるから、車を車庫に入れるため、一旦停車し、シャッターを開けていると、まるで獲物がか かったかの様に窓からじろっとこっちを睨んでいるが、さすがのおばばも車庫に入れる車には文句をいえないとみえる。ある日、すごいことを発見したのだ。
  なんとこのおばば、自分の家の窓をいつでも10センチ程開けていて、車が止まるのをいちいちチェックしているらしい。それが真冬だろうが、真夜中だろうが開いているから驚きだ。そして、一番敵対視しているのが、おばばの家の隣りのマンションである。おばばはよく「このマンションの管理人が悪い」とか「このマンションの住人は頭がおかしい」などとどなっている。

 そんなこんなのある時、とんでもない大事件が発生したのである。私がある朝目を覚ましカーテンを開けてみると窓の 外がチカチカ赤く光っている。何だろうと思い、さらに窓を開けてみてビックリ。なんと12、13台ほどの消防車がマンション前に列をつくり停まっているのだ。
  中には化学機動隊の車もありサリン事件でも起きたのかとドキッとしたが、どうやらこのおばばがこのマンションを恨みに思い「ちょっとへんな臭いがした」(実際はその様な臭いはしなかった)とかで呼んだらしい。さすがにこのおばばも事の重大さに気づいたのか、この事があってから半年程行方不明となった。しかし最近になり、突如姿を現わしまたまた「車、停めなーいでください!」と真夜中問わず連発。私としてみれば「おばばよ。おまえさんが一番近所迷惑なんだよ」と言いたい。

 私が引っ越しをしてしまうと、このおばばの観察ができないのがちょっと残念な気もする。

1997年 さかみち 5号より
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