ネット・さかみち

「モガ」の災難/佐藤 光一

 もぐもぐもぐ‥‥。よく食べるのでその名がついたのかわからないが、我が家の飼い猫モグもことしで十一歳となる。人間でいえば、ちょうど立派なお爺さんである。

 このモグ爺さん、以前の毛のつやもなくなり「食っては寝る。」という暢気な生活を繰り返していた。
 そして、当事務所も三十周年を迎えました。僕と同い年ということです。

 ところが、そんな生活も長くは続かないものだ。それは、人間チビガキ小僧(我が家の長男)の出現である。モグのわずかばかりの外出(散歩)が終わり、彼ご自慢の通路を通って家にはいってくるやいなや、「モガー!」と恐怖のチビガキ小僧の声が響き渡る。このチビガキ小僧、モグの「グ」を発音できず「モガ」と呼びながら追いまわすのである。しっぽを握られ、たたき飛ばされ、それはもう災難だ。それでも彼は、高齢の体にムチをうちチビガキ小僧の横をすり抜け一目散にエサ場に。しかし、恐怖のチビガキ小僧は、そこまで追いかけてきて「モガー!」。おちおち食事すらできないはめに‥‥。

 チビガキ小僧には、格好の遊び相手にうつるかもしれないが、彼にとってはさぞ迷惑なことなのだろう

そんなモグにも、やすらぎのひと時を迎えられる時がある。それは、チビガキ小僧の昼寝タイム。この時とばかり彼は、毛づくろいをし部屋のど真中に大の字に寝転がり、ゴロゴロとのどを鳴らしながらうたた寝する。実に気持ち良さそうである。そして、チビガキ小僧が昼寝から目覚める直前に、必ずと言っていいほどタイミングよく外出する。チビガキ小僧の目覚めの気配を感じるのであろうか…?

 それでも何と驚くことに、彼はチビガキ小僧にすりすりと体をこすりつけて甘えることがある。それは、大好物のおつまみイカをねだる時である。実はこのチビガキ小僧、「モガ」にイカを与えるのが好きなのだ。しかし、そんな平穏な時間は短く、すぐにおもちゃのミニカーなどをぶつけられ、退散するのである。

 まさしく「アメ」と「ムチ」である。最近になり、さすがのチビガキ小僧もすこしばかり成長し、「モガ」への攻撃も少なくなったようだ。でも、油断は禁物。また、我が家に第二のチビガキ小僧が出現した。「モガ」の災難はまだまだ続きそうだ

2000年 さかみち 8号より
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