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節分のおはなし/岩井 慶子

 「鬼は外、福は内」?二月三日の節分の日には、如何お過しですか。

 子供の頃の我が家では、その日、母は巻きずしを作り、その傍らで私と妹は練炭火鉢で大豆を妙り、どちらかが巻きずしの巻き方を母に教わります。まず巻きすの上にサッとあぶったのりをのせ、手前一センチ、向こう側二センチ程残してすし飯を広げ、ホーレン草、玉子焼、椎茸、かんぴょうを芯にして巻きます。これにはコツがあって、最初の一巻きをしっかり巻き、あとは一気に巻き上げ、のり代のところにすし酢をつけ、巻きすで形を整えます。私と妹は緊張し乍ら母の言う通りに巻き、うまくゆくと母にほめられ得意になったものでした。そうこうしていると豆も妙りあがり、鰯も焼けました。そろそろ鬼役の父が帰ってくる時間です。「鬼は外、福は内」、あちこちの家からにぎやかに「豆まき」のはじまり、はじまり。豆まきが終ると、夕食です。巻きずしは食べやすく切るのですが、巻き方が悪いとバラバラになったり、具が真中にならなかったり、それでも自分の巻いた巻きずしはおいしく、父に自慢したものです。昔から、鰯の頭も信心からと申しますが、食べ終った鰯の頭を庭の柊の木に刺して、鬼を追い払うという風習があります。豆はとしの数だけ食べるというので、私と妹は大人をうらやましく思ったのですが、母によればお年寄りなどは食べ切れず、懐紙に包んで夜中十字路の真中において神様にさし出し邪鬼を追い払ってもらうのだそうですが、どうも怪げです。

 そして時が流れても、我が家のささやかな行事が受け継がれて、二月三日になると「豆まき」をし、鰯を焼いて食べ頭は柊の木がないので割りばしに刺し、鬼を追い払っています。ただ年の数だけの豆を食べるのが辛くなってきてはいますが‥‥。

 又、恵方(その年の歳徳神がいる方角のこと)に向って巻きずしを丸かぶりするとその年に幸福が訪れると言い伝えられており、いつの頃か我家でも恵方に向って丸かぶりをしています。さて、今年の恵方はどの方角なのでしょうか。

立春の前日のこの行事は、まだまだ寒い日が続く中にも春のしのびよる気配が感じられます。

2000年 さかみち 8号より
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