ネット・さかみち

郵便ポスト/藤本 樹子

 郵便ポストを開けるのが好きだ。

 幼稚園に通っていた頃のあるクリスマスイブの夜、母に頼まれてその当時住んでした社宅の一階まで郵便物をとりに行った。

 たくさんの郵便物の中に、少し厚めの封筒が入っていた。

「開けていいよ。」と言われて封を切ると、中からキラキラ光る英語の文字の紙に包まれた一枚のチョコレートがすべり出してきた。

まだ小さかったのと、そのきらびやかな包装に気をとられて、誰から送られてきたのか覚えていないけれど、それを見つけた時のうれしい気持ちは今でも鮮明に覚えている。一かけチョコレートを口に入れると、その包装紙と封筒を何度もひっくり返してながめていた。

それ以来、大人になった今でも、郵便ポストを開けるときはいつもちょっぴりワクワクする。

あれから20年余り、私の郵便ポストにも、悲喜こもごもいろんな郵便物が届けられた。

そして私がポストを開ける時、扉を開くその瞬間まで、ポストの中にはいつもあの時のチョコレートが入っている。

あ、だけど、もうすぐ21世紀の今、チョコレートは電気信号に姿を変え、電話線の中で私がディスプレイのスイッチを入れるのを待っているのかもしれない…。

2000年 さかみち 8号より
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