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9年間を振り返って/三好 きょうこ

すずき事務所を退職して、早一カ月が過ぎました。新しい職場にも少しずつ慣れ、少し距離を置いてすずき事務所を 考えられるようになりました。
 この九年間をふりかえって、一番大切なものを学ばせ頂くことが出来たことを何よりも有難く思っています。 それはどんな時でも人を大切にするこころです。
利益を追求すべき企業としては甚だ稀有なことであり、またその功罪もあるかもしれませんが、どんなときにも、 またどんな人でも、必ず大切にするということを実践する姿を眺め続けてきました。
仕事が切羽詰って、職員は連日の深夜業を繰り返して、へとへとな時などは、序の口だったのでしょうか。 こんな時にですか?また、甚だ傲慢ではありますが当時は、こんな人にでもですか?と思うことさえありました。 けれども、あらゆる状況に関わらず人を大切にする姿に間近に接し続けるうちに、いつしか自分にも自然と幾許か その気風が備わったのではないかと思います。
 そんな事務所を去って転職をする決意を固めたのは、わがままとも言いますが、よく言えば妥協のない性格からなのでしょう。まだ一般には耳慣れない環境教育という分野に関心を持ったのは数年前に遡ります。周知の通り、事情が許す限り全ての休日を山に注ぎ込んできました。
 休みに友達と遊ぶことも殆どできず、寂しくないといえば嘘になります。けれど、厳しくても辛くても山にいる自分に何の疑問も感じない私はやはり幸せです。そんな中で、足元から水をすくって飲むような奥深い渓や森が、切り裂かれ、荒れていくのを見ているのは辛く、何か出来ないものかと思うようになりました。
すずき事務所で学んだもう一つの大きなことは、企業は理念に尽きるということです。経営者になったこともなく、利益を出すのに血の滲む努力をしたこともないのに甚だ僭越なこととは承知していますが、。仕事を通じでたくさんの事業主の方々に接する機会に恵まれ、蟻の目で見聞きし考えた一つの結論は、舵取りの最後は何を持ってよしとするか、その経営理念に尽きるということでした。

2003年 さかみち 10号より
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