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ボクシング観戦記/笹島 敏邦

10代後半から20代前半にかけて、ボクシングをよく見に行っていた。後楽園ホールがボクシングの聖地であり、月に一度は見に行ったものだ。前座の4回戦から見るのが通だと思っていたので、ガラガラの後楽園ホ ールの最前列で、未来の世界チャンピオンを探していた。

メインの試合が行われる頃は、当然正規のチケットを持っている客が来ているので、後方の空いている席から見ることになる。こうなると選手の細かい動きまで見ることができないので、雰囲気だけを味わい、当日の夜中放映されるテレビで、細かいところを復習することになっていた。

あまり大きな声では言えないが、実はタダでボクシングを見ていたのだ。始めの頃は一番安い席の料金(高校生は千円?)を払っていたと思うが、たまたまタダで後楽園ホールに入れるルート知ってしまったので、このルートを利用させていただいていた。

後楽園ホールはチケットを1階で購入し、エレベーターで確か7階まで行って入場することになっている。この階のひとつ下のフロアーが、選手の控室になっている。選手の控室から階段をトントンと登っていけば、そこは試合会場。

ごめんなさい、もうしません。

ボクサーのファイトマネーはピンキリで、4回戦ボーイだと5万円前後、それもチケットで支給されることもあるらしい。日本チャンピオンでさえアルバイトをしなければ生活できない厳しい世界だが、世界チャンピオンになり防衛を重ねれば、1試合で数千万円のファイトマネーが手に入る。日本人の世界チャンピオンは今まで50人弱誕生しているが、その中で私のお気に入りは、川島郭志というボクサーだ。川島は高度なテクニックの持ち主で、世界王座を獲得した後、6度の防衛に成功した。特にすごいと思ったのが、ディフェンスの技術だ。普通、顔面に向かってパンチが来ると、顔を上下するか、左右に振るかして、パンチが当たらないようにする。川島はあえてパンチを受け、当たった瞬間に首を回転させ衝撃を和らげていた。

非常に仲良くしてもらっている社労士仲間で元プロボクサーがいる。川島が世界挑戦する際、スパーリングパートナーをつとめたそうで、川島の技術の高さに感心し、「必ず世界チャンピオンになる」と思ったそうである。彼は中学を卒業後、自動車修理工場に勤め、元世界チャンピオンの井岡弘樹が所属するグリーンツダジムに入門した。デビュー戦をーラウンドKO勝ちするなど、順調にランキングを上げていったが、日本チャンピオン決定戦で敗れてしまった。初めての敗戦であったが、この試合でボクシングをきっぱりやめてしまったそうである。その後、どのような仕事をしていたのか聞いていないが、大検を受け通信で短大を卒業し、社労士試験に合格し、現在私と同じ仕事をしている。お互いに、この世界でもう少し上を目指している。

2004年 さかみち 11号より
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