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特定社労士の秋/清水 亜希子

 秋といえば、「食欲の秋」「読書の秋」、また気候のいい時期ゆえに旅行に行ったり、と何かと楽しいこと満載な季節。しかしながら、私の昨秋は「特定社労士の秋」というなかなかハードな(ある意味「楽しかった」とも言えるのですが)季節となりました。

 紛争解決手続(ADR)の代理業務は、特別研修を修了し、紛争解決手続代理業務試験に合格し、その旨の付記を受けた特定社労士のみが行うことができます。個別労使紛争が起こらないように人事労務管理の相談・指導を行うことが社労士の本来の業務であり、正直に言うと私自身は代理業務を行いたいというよりも、この能力担保措置(研修と試験)を通じて学んだことを本来の業務に役立てたいとの思いでチャレンジすることを決めました。

 特別研修は「講義」「グループ研修」「ゼミナール」の3本立てでほとんど週末に行われます。「講義」は全国均一の条件とするためでしょう、ビデオ講義です。15分以上の欠課は認められず、途中トイレに立つのもチェックをされる場合があり、この30時間の講義が一番辛かったというのが実感です。確か「労働契約総論」だったと思いますが、ラストの1時間の内容が自分にとってあまりにも難しく「えらいことを始めてしまった」と頭を抱えたのが思い出です。この講義が終わると「グループ研修」になります。同じ支部内で10人程度のグループとなり、依頼者の主張を「申請書」にまとめること、相手方の申請書に対し反論する依頼者の主張を「答弁書」にまとめることを行います。どちらも事前に書面を作成してから研修に臨むのですが、依頼者の主張を的確に文章に表現するのが非常に難しく、かなり時間もかかってしまいました。この他に5つの事例について、問題点を中心に議論を行うというものもありました。このグループ研修を通じて、問題のポイントとなることは何か、そしてそれをどう考え、的確に表現するかということが非常に勉強になりました。そして最後は「ゼミナール」。グループが5つほど集まり、弁護士の方と話をしながら講義が進みます。事前に提出した申請書・答弁書に関して、また事例ごとの問題点の解説、守秘義務や利益相反など倫理についての解説などです。弁護士の方が「なぜそう考えたのか?」とランダムにビシビシと指名をしてくるので、常に緊張感たっぷりな講義でした。

 ゼミナールが終わると、昼食をはさみ、午後からがいよいよ試験となります。社労士の本試験とは違い、暗記してどうこうという試験ではないのですが、独特の言い回しは頭に叩き込んで臨みました。 ただ、答案(すべて記述式)をボールペンで書くことに結局最後まで慣れず、書きながら「あっ、話がずれている」と気づいたりもしてとにかく時間に追われながら、全問を解くことだけ考えて回答をしたので、終わった時はできたのかできなかったのかの手ごたえは「わからない」。試験後に「お疲れ様会」と称し、同じグループだった方々と飲みに行ったのですが、その場でもどう回答を書いたかで意見が割れ、「やっと解放された!」との思いもあり、つい飲みすぎてしまいました…。

 試験の結果が出たのは何をどう書いたのかまったく記憶のかなたに消えた4ヶ月後。自分の受験番号を見つけたときには「ほっ」としたのが正直な感想です。

 何をどう勉強したということはないのですが、研修・試験を通して、トラブル(もしくはトラブルとなる可能性がある)のポイントがつかめるようになり、それをつかむために何を聞きだしたらよいかを感覚的に理解できるようになった(ただし実践できているかは不明)ことが非常に仕事に役立っています。せっかく「行楽の秋」を犠牲にして(?)、また日常業務と研修でいっぱいいっぱいになり周りの方に助けていただいた上でチャレンジした研修を無駄にすることなく、これからの仕事にもつなげていきたいと思っています。

2008年 さかみち 15号より
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