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いざ、フジヤマへ/小林 礼子

2~3年前からいつか行きたい、と思っていた富士山。その時は突然やってきた。きっかけは7月の下田旅行。カフェでケーキを食べながら、とりとめのない話をしていた時、突然友達が「富士山登ってみたいんだよね」と言い出した。その一言に私が乗っかり、とんとん拍子に話が進んだ。慌てて登山用品を準備し、あっという間に決戦日を迎えた。

朝は7時に新宿のバスターミナル集合。8月は富士登山のピーク期ということもあり、ライブ会場のような人ごみ、何十台も連なるバス。今日だけでこんなに登る人がいるの?といきなり面食らった。渋滞の中バスに揺られ、5合目に到着。すでに半袖は涼しい。ここでもまた、日本一の山を目指して全国からやってくる人の多さに驚く。 昼食を済ませ、山岳ガイドに案内されながら、まずは山小屋のある8合目を目指す。山道は人で渋滞しているほどで、ペースはゆっくりだった。しかし上がるにつれ空気は薄くなり、息が切れてくる。それでも、休憩時にお菓子を食べたり、山から見下ろす景色を楽しみながら、山小屋にたどり着いた。 ここで夕食を済ませ、3時間ほど仮眠をとる。仮眠といっても、寝返りもできないほど狭いうえ、人の熱気で蒸し暑く、とてもじゃないけど眠れない。結局一睡もできなかった。

午後11時半。ご来光に間に合うよう、再び山頂を目指す。ツアーで一緒に登っていたのは二十数名だったが、高山病のため何人かリタイアしたらしい。日の落ちた8合目は、初冬の寒さ。相変わらず渋滞なので途中立ち止まる。汗をかいている身体に風が通ると、とっても寒い。寒いけど、夜景はキラキラ輝き、月は地平線近くにあって、まるで月を見下ろしているかのよう。9合目の休憩ポイントでは見たことのない星空が待っていた。まさか、天の川や流れ星が富士山で見られるとは思っていなかった。9合5勺から山頂前は岩場がきつくてしんどかったが、もうすぐ、と奮い立った。

そして、午前2時半、山頂到着。幸いにも、友達もみなリタイアすることなく登頂することができた。登った達成感と、思った程大変ではなかった意外さとが入り混じった複雑な気持ちのまま、ご来光まで待つ。 そして待ちに待った日の出瞬間・・・私は長蛇のトイレの列の中にいた。非常に勿体ないのだが、生理現象には勝てなかった(笑)瞬間は見逃したが、雲海がたなびき、絵に描いたような美しさを放つ山頂からの光景は忘れられない。
下山道。ここが一番しんどかった。砂利道のため滑りやすく、バランスを崩してしまう。登山靴を買った時、少し足の親指が当たるのが気になったのだが、それが良くなかった。重心が前にかかって圧迫され、足の親指が痛くてたまらない。7合目あたりでは歩くのがやっとで、友達のペースにもついていけず一人でヨチヨチ歩き。上りの元気はどこへ行ったのか、弱弱しい姿は人に見せられたものじゃなかったと思う。周りにいたたくさんの人たちは元気に下山していたのに、私は早く終わってくれと何度心の中でつぶやいたことであろう。

そんなこんなで終えた富士登山、一度は体験してよかったと思う。自然の美しさ、富士山の雄大さを肌身に感じることができた。自然に対するマナーも少しは身に付けられたのではないか。 そしてまた、登山という行動によって私自身を自己分析できたようだ。目標達成までは元気だが、その後著しくテンションが下がる。辛いことがあると、逃げ出したくなる。私はまだまだ、「甘ちゃん」のようだ。引き続き、登山で自己鍛錬したほうがよいのかもしれない。 下山で痛めて紫色に変色してしまった、足の親指の爪を眺めながら思う。せっかく登山用品も揃えたことだし、来年は屋久島でも行ってマイナスイオンに癒されようかなぁ♪

「甘ちゃん」はつらいこともすぐ忘れてしまうようだ。

2010年 さかみち 17号より
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