ネット・さかみち

休日には“カフェ”で/武藤 真美

行きつけの"カフェ"で、美味しいコーヒーを飲みながら、時間を気にせずにのんびりと読書を楽しむ、そんな休日の過ごし方に憧れる。

"カフェ"などという洒落た場所に入るのは小っ恥ずかしい気がして、これまで「スター○ックス」にすらほとんど行ったことのなかった私がそう思うようになったのは、今年のG.W.に行ったオーストリアのウィーンの影響が大きいかもしれない。 ウィーンの街中にはとにかくたくさんのカフェハウスが立ち並んでいる。

個性も店によって実にさまざまで、家具や調度品、お菓子、食事のメニューなど、それぞれに強いこだわりが感じられる。ウィーンのカフェ文化には三百年以上もの歴史があると言われ、伝統のあるカフェハウスが今でも数多く残っている。 ウィーンでは誰もがお気に入りのカフェを必ず持つ、といわれるほど、ウィーンの人々にとってカフェは欠かせない存在なのである。休日には、朝から贔屓のカフェハウスに出かけ、一日の大半をそこで過ごすこともあるという。カフェに通う人々は、経過する時間のことなどほとんど気にかけない様子で、本や新聞を読んだり、おしゃべりをしたり、おのおの好きなことを楽しんでいる。

お客がのんびりと過ごすウィーンのカフェでは、ウェイターたちも実にのんびりとしている。たいていの場合、ウェイターを呼んでから席に来てくれるまでに暫く待たされる。さすがに最初のうちは、「呼ばれたことを忘れているのかも…」と不安になった。しかし、そう思って再び呼んでも、「わかっているから心配するな」という表情を返されるだけで、結局はさらに待たされ続けるのである。推察するに、どうやら彼らには自分なりの順序があり、相手がお客であろうが、とにかく先に決まっている仕事を優先する、ということらしい。ちなみにそれは、私たちが観光客だからというわけではなく、地元のお客に対しても同様なのであった。

まさに、ウィーンの伝統あるカフェハウスは、のんびりとしたオーストリア人の気質と密接に結びつき、何十年、何百年と愛され続けてきた、ということなのであろう。

天気に恵まれ、暑い日の多かった今回の旅行中、街のいたる所にあるカフェハウスは、疲れた身体を癒してくれるオアシスであった。店内でさほど長く過ごしたわけではないが、ゆったりとした時間の流れるウィーンのカフェ文化に出会ったことで、どれだけ自分が毎日せかせかと生きているか、ということにあらためて気付かされた。ウィーンのカフェハウスは、美味しいコーヒーとケーキだけでなく、日本での忙しい日常の中ではなかなか感じることのできない「心からの休息」というものを味わわせてくれたのであった。  

―もしまたウィーンに行くチャンスがあったら、伝統あるカフェハウスでのんびりと一日を過ごす、なんて贅沢をしてみたいなぁ…


2010年 さかみち 17号より
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