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孫娘にさるすべりの花(百日紅)を/鈴木 幹男

 私事ですが、ようやくというか、ついにというか、7月の初めにお爺さんの仲間入りをしました。最近、同世代との会話で孫の話が出てくることが気になっていました。先日も田舎の同級生に電話をしたところ、電話口に出てきたのが孫娘でした。「おまちください、ジイジー、ジイジー、でんわー」、と大きな声で呼んでいました。「誰だ、誰だ」と、ボソボソいいながら電話口に出てきた同級生によれば、孫は5人、内孫が2人で5才と3才、毎日が孫の世話で「忙しくて、忙しくて」と、実感のこもった話しぶりでした。孫に囲まれ、年金生活に入った彼の生活ぶりを想像しながら、深く感じ入ったものでした。

どういうわけか、我が家は女性に縁の薄い家系のようです。私は弟が一人だけ、私の子供は2人とも男、父の兄弟も5人とも男(うち2人が戦死)、更に祖父の兄弟も3人とも男です。それに比べて、弟の子供は3人とも女だし、父の兄弟の子供も男1人に女3人と女が優勢です。3年前に亡くなった母は、母子家庭で3人姉妹の長女でした。男は学校を出ないと将来困るからと、義務教育を終えると姉妹は3人とも紡績工場などに住み込みで働き、末の弟を大学に通わせた、という話をよく聞かされました。だから、私の家系には、たくましく、優しい女性の歴史もあるのですが、父系に関して女はゼロなのです。。

このこととの関係は定かではありませんが、我が家で犬を飼うことになったときは迷わずメス犬でした。私が18才の頃に見た映画「キューポラのある町」で、貧しさにもめげず、明るく逞しく生きる吉永小百合演じる少女ジュンの名前を拝借し、名前をジュンとしました。私に娘がいたら、ジュンのような娘に育ってほしい、という期待を込めてでした。ところで、私の孫娘の名前は心南(ここな)です。名前の由来を息子の嫁さんに尋ねたところ、南という文字に、優しさ、温かさ、を感じたので、心という文字と合わせて、心の優しい、温かい娘に育って欲しい、という願いを込めて名付けた、とのことでした。。

先日、この孫娘に会いに出産で里帰りしている嫁の実家(群馬県沼田市)に妻と出かけました。孫娘は嫁さんに抱かれ出てきました。「心南(ここな)を抱っこしてやって下さい」と、嫁さんにせかされ、慣れない手つきで抱っこしてみました。小さな顔に瞳が微笑んでいました。固く結んだ手のひらを無理やり広げて、小さな握手をしました。それまで忘れていた、2人の息子を最初に抱き上げたときの遠い記憶が蘇ってくるようでした。その息子が、慣れた動作で孫娘の世話をしている様子は意外な光景でした。人はその立場になれば立場に相応しくなるものだ、ということを再確認したようで、内心ホットしたものでした。。

今年の夏は熱中症が連日報道される記録的な猛暑でした。この猛暑のなかに生まれてきた孫娘の心南(ここな)を歓迎して、我が家の庭にうす紅色のさるすべり(百日紅)を植えました。さるすべりは夏の花です。百日紅という名前のとおり、孫娘の生まれた6月から9月にかけて、清純で可憐な花を咲かせます。夏の日差しが強ければ強いほど、真夏の太陽に向かって色鮮やかな花を咲かせ、見るものを感動させます。植樹したさるすべり(百日紅)は1メートルほどの若木ですが、これから孫娘の誕生日(夏)を迎えるたびに花を咲かせ、大きく育ち、我が家の庭からその成長を見守ってくれることでしょう。

2010年 さかみち 17号より
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