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山への足跡/飯嶋 光江

 事務所の勤務も今年で、はや20年になります。社労士試験の勉強中に就職して、2年後になんとか試験に合格して、それからじっと我慢していた読書を夜更けまでしたり、東京都の都民カレッジに通ったりとしましたが、いまひとつ満足できないでいたところ、「東京都のお知らせ」で登山教室開催、参加者募集を見て応募、たくさんの応募者のなかから運よく受講する機会を得ました。十代の頃に富士山と大菩薩嶺に登った経験しかなかったのですが、そこで、登山靴の選び方、持ち物、シルバコンパスを使用しての地形図読みなど、まさに初歩から教えてもらう事が出来ました。教室終了後、そこで講師をしていた方がリーダーの一人であった山の会に入会。そこから山の魅力に取りつかれることになってしまいました。
 初めは月一度程度に奥多摩あたりを歩いていたのですが、いつの間にか、ほぼ毎週、全国にわたって歩くようになりました。今は、都道府県の最高峰も福岡県だけを残すだけになりました。難しいといわれている山にもリーダーに恵まれて、いつの間にか登っていました。北海道のカムイエクウチカウシ山などは、2度3度挑戦しても天候不順や札内川の増水で登れなかったりと苦労している仲間もいるなかで、私は二度もすんなりと頂上を踏めています。毎年、夏には北海道の山に行くのが、もうここ何年かで慣例になりました。

 また、山の魅力の一つは高山植物でもあります。チングルマ、イワカガミ、高山植物の女王コマクサ、貴婦人といわれるシラネアオイ、有名になったトリカブトは濃い紫の美しい花を咲かせます。今年は東北の以東岳に8月上旬に登ったところ、マツムシソウの群落でした。薄紫の可憐な花が一面に咲く様子は本当に感動してしまいました。また、百名山最後の山、「聖岳」直下の山小屋付近でたくさん咲いていた花が2週間後には同じ小屋を起点にして登るため行ったところ、もう、無残に枯れていました。高山植物もほんのわずかな期間しか、咲いていないことが多いのです。そんな花や、展望を楽しみながら幾多の山を登るうち、この夏には、とうとう日本三百名山を踏破しました。百名山は深田久弥が選定し、二百名山は深田クラブが、三百名山は日本山岳会が選定しています。ケーブルで簡単に登れる山もありますが、テント泊や山頂まで日数のかかる山も沢山あります。これも多くの山仲間の協力があってのことと感謝しています。大勢で行った山もありますし、数人でいったり、仲間と二人でいったりとさまざまです。
十年前には雪の八甲田山から下山できなくなり、家族や、事務所に心配や多大な迷惑もかけました。そんな体験をしても、やはり、山は素晴らしいのです。

 よく、ストレス解消のためとか言われたりしますが、私は、山そのものの魅力に取りつかれています。山頂の景色や達成感は途中の苦しさをすべて忘れさせてくれます。下山後に入ったり、泊ったりする温泉も毎回、楽しみです。今年の春には最高地にある温泉八が岳の本沢温泉の露天風呂にも入り、満足。周囲の雪景色を眺めてなかなか風情がありました。
一区切りでも、まだまだ残る未踏の山、温泉に楽しみは尽きません

2011年 さかみち 18号より
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