ネット・さかみち

趣味、ペンギン。/小林 礼子

 「あなたの趣味は何ですか」 自己紹介にありがちなこの質問に、いつも戸惑いを覚えていた。
「○○が私の趣味です!」と堂々と言えなかった。
食べることや音楽は好きだけど、趣味と呼べるほどのものではない気がして、趣味が欲しいなぁ、と思っていた。
つい2、3年ほど前までは。

 最近すっかり心を奪われているものがある。
 JRの駅で見かける「suicaのペンギン」だ。
出会いは6年ほど前、JRの懸賞キャンペーンに当選して「ペンギンどてら」を手に入れたことがきっかけ。
ユーモアや温かみあるペンギンの姿にすっかり惚れ込んでしまい、駅のコンビニで売られているグッズを少しずつ集めるようになった。
グッズは定期的に新作が登場し、懸賞キャンペーンも度々あるので、こまめにネットで情報収集している。
「手を変え品を変え」の戦略に踊らされているだけかもしれないが、ペンギンは一企業の広告塔の役割をしっかり果たしていると私は思う。
あの黒い真ん丸の顔だけで「ペンギンだ!」とわかるほど認知されているのだから。コアなファンは、実は結構いる。

 ペンギンの作者である坂崎千春さんは、「カクカクシカジカ」や「チーバくん」の作者でもあり、年に数回ペンギンだけの個展を開催している。
絵画の展示のほか、文房具やアクセサリーなど物販も行っている。
実はこの物販、地方からくる人もいて、整理券が交付されるほど大変人気である。
数量限定で値段が高いのに、皆購入額が半端ない。
私も全部欲しいがお財布がついていかないので厳選して購入している。
毎回どれを買おうかワクワクしながら悩んでいる。
数万する原画は、いつか買いたいと憧れ夢見ている。
通い続けて最近は常連の人たちの顔も覚え、直接話こそしないが(激しく人見知りのため)、SNSでやり取りしたりしている。

先日、坂崎さんはじめペンギンが好きな画家たちで催された個展があったので行ってみたところ、サイン会の最中で、坂崎さん本人にお会いすることができた。
個展の記念プレートを買い、それに画家さん全員のサインをしてもらった。
坂崎さんとは一言二言だったが初めてお話することができ、いつも楽しませてもらっていますと言ったら、ありがとうございます、と返してくれた。とても嬉しかった。プレートは私の宝物となった。
もちろん、ペンギンも描いてもらった。

 今、事務所の私の机周りは、ペンギンで囲まれている。
定規、メモ帳、マウスパッド、カレンダーなど。
事務所でも私のペンギン好きは公認(?)のようで、職員から情報やグッズをいただくことも(感謝です!)。
ちなみに自宅はプリント画をはじめ、小物たちが棚に陳列され、和みのある空間となっている(笑)。

ここまでくると、もはや「ペンギン中毒」ではないかと自分でも思う。
でも、いつもSNSでお世話になっている方の言葉を借りると「ペンギンのいる生活はプライスレス」。
集めたグッズを眺めたり、個展に足を運んだりする時間はとても大切であり、趣味を超えもはや生活の一部といっていいほどのものである。
どうか、ペンギンに囲まれている私を呆れることなく(まぁそれも仕方ないが)温かく見守っていただきたい。

 私にとって趣味と呼べるものは自然と身についたものであった。
もう一つの趣味であるランニング。
心や体を強くしたい、皇居を走ってみたい、という気持ちから始めたものだったが、うっかりした出来事(さかみち18号参照)をきっかけにこれも生活の一部となってしまった。
今や坂崎さんの展示会とフルマラソンは私の年間カレンダーにしっかりと刻まれている。
楽しい時間をこれからも満喫したい。

2012年 さかみち 19号より
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