ネット・さかみち

はじめてのレコーディング/鈴木 さやか

  この夏、私は初めてレコーディングというものを経験しました。おそらく最初で最後、一生に一度の出来事だと思います。
 あ、レコーディングといっても歌ではありません。箏です。一人ではありません。結構な人数です。レコード会社で作られますがデビューとかではないです(笑)。団体としては大学のサークルです。
 私は女子大に通っていた4年間、箏曲倶楽部という飲み会の一切ない、週に一度外部から先生がお稽古に来て下さるという、お稽古事のようなサークルに所属していました。年一回発表会があるのですが、現役生は1学年平均3名。人数が足りないこともあり、OGが有志で毎年10人前後参加するのが通例になっていました。
 その箏曲倶楽部が今年は発表会ではなく、CDを作ろう、ということになったのです(ここに至るまでいろいろあるのですが長くなるので割愛)。制作に関して、JASRACの手続やら機材の手配やらマスタリングやらの全ては、上畑正和さんという作曲家・ピアニストの方にお願いすることになりました。私たちは弾きなれた曲の完成度を上げて…だけの予定だったのですが、先生がなんと箏の作曲も依頼していたのです!全く世に出ていない、新しい譜面です。しかも上畑さんはピアノや弦楽器の作曲をされる方。出来上がった曲は箏の曲とは思えないほど綺麗で、箏の曲とは思えない譜面…。これ、弾けるのか?誰もが不安に思いました。

それでも何とかお稽古を重ねて、録音日を迎えました。スタジオを借りるお金はなかったので、ホールを貸切っての録音です。1曲につき数回録って、いいところをつなげるわけですが…録音用のマイクをいうのはどんなに小さな音でも入ってしまうようで、糸(音)を間違えた音はもちろんのこと、空調の音(冷房・換気扇は止めました)、咳を我慢しようとした息、爪同士が当たった音、弦に置いていた手を離した音…慣れない私たちは雑音を出しまくりました。何よりつらいのは長時間の正座!しびれるのではなく、痛い!懲りて2日目はクッションを持参したものの、お尻の位置が高くなると箏を見下ろす角度も変わり、糸間違えをするので、結局使用せず。地味に上がる室温と自分の体重に集中力を切らさないよう戦う2日間でした。

  終わった後は、とにかく疲れた、早く休みたい、マッサージ行きたい…としか感じられませんでしたが、しばらくすると、中学の部活動のような夏だったと寂しく感じます。また、レコーディングなんてこの先ないと思うととても貴重な経験ができたととても嬉しく思います。そして普段接点のない録音業界の方の耳の良さと、私たちのような録音初心者相手でもちゃんと導いてくれる力に驚きました。
秋に編集やマスタリングが行われ、CDが出来上がるのは年明け。まだまだ先ですが、待ち遠しいです♪

2014年 さかみち 21号より
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