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遊覧飛行/植田 秀樹

 今年7月下旬、調布市でセスナ機(正確に言うとセスナ機ではなく小型飛行機だったそうです。)が住宅密集地に墜落し話題になりました。一部報道では遊覧飛行ではないか、という話が出ましたが、実は私たち家族3人も今年1月に小型セスナ機で遊覧飛行を体験しました。もちろん私が操縦したわけではありませんが。操縦士を含め4人乗ると機内がいっぱいになってしまうようなセスナ機での遊覧飛行体験は日常では味わえないスリルと興奮の連続でした。
 事のきっかけは、よくある旅行会社が企画する日帰りプランのパンフレットを見たときでした。しかし、飛行時間が20分から30分ほどなのにどのプランもバスで横浜に行って食事をしたり、朝から晩まで拘束されるものばかりでした。遊覧飛行だけ体験できるプランはないかと色々探したところ、近県では茨城県と埼玉県の飛行場に似たような体験ができるプランを見つけました。最初、茨城の飛行場に問い合わせたところ、昨年の4月で飛行場自体が太陽光発電の発電所になってしまうため、遊覧飛行は終了しました、と聞いたときはさすがに時代を感じてしまいました。
 幸いにも埼玉県の飛行場で遊覧飛行の体験プランがあり早速申し込みました。私の自宅はほとんど埼玉県といってもいいところなのですが、その飛行場はJR高崎線の桶川駅で下車後、タクシーで20分ほど走った、荒川の河川敷近くにある本田飛行場というところでした。私が申し込んだのは飛行時間20分ほどの予定で大宮~さいたま新都心近辺を遊覧飛行して戻ってくるというコースでした。
 当日は幸いにも好天気に恵まれましたが、セスナ機に乗るのは皆初めてのため、一体どんなことになるのか全く想像もできませんでした。セスナ機の機内はちょうど軽自動車の車内を少し狭くしたようなスペースで「こんな小さなものが本当に空を飛ぶのだろうか?」と思いましたが、実際に空に浮かんだ時の臨場感といったら!恐怖と興奮が入り混じった気分でした。
 本田飛行場にはたくさんのセスナ機が離着陸していましたが、個人所有のものが大半だとパイロットの方に聞いてまたびっくりしました。企業の社長族やら御曹司が個人でセスナ機を所有し、自ら航空ライセンスを取得し、空に飛び立つのがまるで当たり前のような世界があることに改めて驚かされ日本人の遊びもここまで来たかと肌で感じました。
 さて、恐怖と興奮の遊覧飛行に慣れたころにはもう規定の時間が近づいていましたが、なんでも先に着陸するはずのセスナ機のスケジュールが遅れているという連絡が私たちの乗るセスナ機に入り、パイロットの方が「それじゃ、時間がありますので東京の方へ向かいます。」という言葉を聞きながら飛行を続けていると、先ほども言いましたが、私の自宅というのがほとんど埼玉県で、荒川を境にした東京都にあるため休日にはよく遊びに行く荒川の水門が間近に見えた時には思わず興奮してしまいました。パイロットの方に「私たちの自宅がこの近くにあるんです。」というと「そうですか。それじゃ、行ってみますか。」と言われた時には思わず「お願いします!」と口走っていました。ほどなく自宅であるマンションの並びにある小学校の校庭が見え、自宅マンションの真上に来た時には「あー」とか「おー」とかわけのわからない叫びが飛び交い、家族の興奮は全員MAXに達しました。
 まさか自宅の真上にセスナ機で遊覧飛行するとは夢にも思っていなかったので、実は娘の誕生日に乗って本当に良い思い出ができたと思いました。
 セスナ機を降りてパイロットの方にお礼を言った3人全員の掌はベットリでしたが。

2015年 さかみち 22号より
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