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私の家庭菜園/鈴木 幹男

 私は自宅裏手に隣接した100坪ほどの畑で、休日の家庭菜園を楽しんでいます。この辺りは、5000年ほど前に噴火した伊豆大室山の溶岩流が作り出した溶岩台地で、雑木を切り倒し、抜根し、溶岩を掘り出し、整地して出来た土地です。今でも、少しほじれば溶岩のかけらがゴロゴロでてくる、なかなか手強い荒れ地です。

 今年も9月に入ってからの休日は、白菜、キャベツ、ブロッコリー、春菊、小松菜、大根といった定番秋冬野菜の種まきや植えつけ作業で大忙しでした。秋冬野菜は種まきや植えつけ時季が重要です。特に白菜やキャベツは、種まきや苗の植えつけが遅れると、収穫前に冬がきて成長が止まってしまうからです。

 種まきや植えつけ時季を守るには、8月下旬から9月上旬の準備作業が重要になります。前作の春夏野菜を片付けた後の畑に、石灰をふり、耕うんし、堆肥や元肥をまいて再度耕うんし、整地してウネ立てするまでの作業です。耕うん作業は、全身の力を振り絞って備中鍬を一鍬一鍬振り下ろします。汗だくだくで、腰が痛くなる肉体作業です。
私が目指している菜園は、①無農薬 ②無化学肥料 ③不耕起で行う野菜作りです。無農薬は100%問題なく解決しました。無化学肥料についても、生育期の追肥に有機化成を僅かに使用することを除けば、ほぼ解決しています。最後の取り組みが、耕さないで野菜を作る不耕起による栽培です。これは少々難易度の高い挑戦です。

 里山や森の植物は、不要となった自分自身の一部分を土に還元し、微生物などに分解させ、それを吸収して成長を続けています。植物自身が育ちやすいよう自らが環境を変えていく営みをしています。不耕起による栽培は、家庭菜園の土壌を里山のように自然に栄養分が集積され、野菜が育っていく土壌にしていくことです。

 昔から、土作りは森の土壌に学べ、といわれてきました。人の手の入らない山や森などでは、不耕起は当然のことです。森の樹木や草などは、耕うんしないのに立派に生えて成長しています。昔の焼き畑農業では、草木を焼いた後、まき穴を掘ってまくか、まいた後に軽く土をかぶせる程度で、全面を耕すことはあり得ませんでした。

 多くの菜園と同じように、私の菜園でも雑草は早め早めに除草してきました。しかし、不耕起による栽培は、耕さず、草を抜き取らずに刈って敷いて、草の命を全うさせ、草と野菜を共に育てる方法です。この栽培方法を数年続けると、いろいろな草と共に微生物や虫など、いろいろな生きものが増え、病虫害も気にならなくなる、といわれています。

 私はこれまで自然の仕組みを生かし、家庭菜園の土壌に里山のように栄養分が集積されるサイクルを作り出す不耕起による栽培方法に強いロマンを感じてきました。とくに、今年春先のぎっくり腰の経験で、この思いを強くしました。私の家庭菜園を、耕うん作業や草戦争のない、不耕起による自然農法に切り替えていきたい、と考えています。

 私は上州の農家の長男に生まれました。子供の頃は、農繁期に学校を休まされて農作業にかり出されました。家庭菜園の農作業は、あの頃の強いられた農作業と違って、四季折々の野菜を自分の力で育て、食する、実に楽しいものです。とりわけ、作業の合間に疲れた腰を伸ばして眺める伊豆の山々は、私の何よりもの清涼剤になっています。

2016年 さかみち 23号より
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