「就業規則の作成は義務なの?」
「どういう会社に就業規則の作成義務があるの?」
「もし違反したらどうなるの?」
このような疑問を抱えていませんか?
ある一定の規模の企業は、就業規則の作成・届出の義務が課せられます。
義務と聞くと「自分の会社はどうなんだろう?」と、不安になりますよね?
そこでこの記事では、就業規則の義務について以下の内容を解説していきます。
- 就業規則の作成・届出の義務がある会社
- 義務に違反したときのリスク
- 作成・届出義務に関するよくある質問
就業規則がもたらすメリットも解説しているので、義務がない会社の経営者の方も、ぜひ最後までご覧ください。
従業員が10人以上の会社は就業規則の作成・届出義務がある
労働基準法第89条には、「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し行政官庁へ届け出なければならない」と定められています。
つまり、日常的に従業員が10人以上いる会社は、就業規則の作成・届出が義務付けられているのです。
就業規則を改定した場合も、届出が必要です。
一方、日常的に従業員が10人未満しかいない会社は義務はありません。
しかし労働局は「労働者が10人未満であっても、就業規則を作成することが望まれる」と述べています。
就業規則には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
先にメリットを知りたい方は「就業規則の5つのメリット」をご覧ください。
就業規則の作成・届出義務に違反したときの2つのリスク
就業規則の作成・届出義務を怠った企業は、30万円以下の罰金が科せられます。
変更の届出をしなかった場合でも同様です。
また、労働基準監督署から是正勧告を受けることもあります。
是正勧告とは、労働基準関係法令を違反した企業に対して行われる行政指導です。
法的拘束力はありませんが、勧告を無視し続けると、司法警察官にあたる労働基準監督官によって書類送検される恐れがあります。
就業規則の作成・届出義務に関する8つの質問
就業規則の作成・届出義務について、よくある質問に回答します。
- Q1.パート・アルバイトは従業員に含まれる?
-
A.含まれます。ただし、派遣社員は含まれません。
- Q2.事業所が複数あります。各事業所は常時10人未満だけど、会社全体では常時10人以上の場合はどうすればいい?
-
A.各事業所とも作成・届出義務は発生しません。就業規則の義務は「事業所」単位で考えられるからです。
- Q3.複数の事業所がすべて同じ就業規則を適用している場合、届出は本社だけでもいい?
-
A.ダメです。事業所単位での届出が決まりなので、同じ就業規則を適用していても、全事業所の届出が必要になります。
ただし、次の書類を本社管轄の労働基準監督署に提出すれば、本社一括届出が認められます。本社と各事業所の就業規則が、同じ内容であることが前提です。
- 本社の就業規則届(2部)
- 本社の意見書と就業規則本体(各2部)
- 各事業所とそれぞれの管轄監督署を記した一覧表(2部)
- 各事業所の意見書(事業所ごとに1部)
- 各事業所の就業規則本体(事業所の管轄監督署ごとに1部)
- Q4.労働保険の継続一括届を提出していたら、就業規則の届出も本社だけでもいい?
-
A.ダメです。労働保険の継続一括届は、あくまでも労働保険の事務手続きのものです。就業規則とは無関係なので、各事業所が届出をする必要があります。
- Q5.就業規則の変更届を行う場合、変更点のみの届出は可能?
-
A.変更点が一部だけなら可能です。新旧条文対照表、就業規則における該当ページの写しなど、変更点が明らかになる書類を添付してください。
- Q6.就業規則の変更点は、数年に一度にまとめて届け出てもいい?
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A.ダメです。就業規則を一部でも変更したら、その都度、所轄の労働基準監督署に届け出なくてはいけません。
- Q7.退職金規程、育児・介護規程も届け出る必要があるの?
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A.就業規則の一部であれば必要です。
ただし、届出が義務付けられていない労使協定の場合は、就業規則の一部として届け出る必要はありません。(年次有給休暇の賃金に関する規程など)
【義務がない10人未満の会社も必見】就業規則による5つのメリット
メリット①:労使トラブルを防止できる
1つ目のメリットは、労使トラブルを防止できることです。
懲戒処分を行うには、就業規則に懲戒の種類や事由を定めておく必要があります。
「どんな罪にどんな罰が下されるのか」が明確になれば、従業員たちへの抑止力になり、労使トラブルを未然に防ぐことができます。
メリット②:離職率の低下につながる
2つ目のメリットは、離職率の低下に効果があることです。
給料や残業時間、有給休暇などのルールがきちんと定められている会社は、従業員にとって働きやすい会社です。
誰もが働きやすい会社になれば、人材は定着しやすくなり、離職率の低下につながります。
メリット③:助成金の申請に活用できる
就業規則は、助成金の申請に使われる場面がいくつかあります。
例えば、有期雇用労働者の正社員化などを促進した企業に助成される「キャリアアップ助成金」の申請には、添付書類に就業規則が必要です。
他にも「働き方改革推進支援助成金」の申請には、就業規則の整備が要件になっています。
このように、助成金の申請に就業規則が必要になる場面があるのです。
メリット④:従業員が10人以上になったときに慌てずに済む
現在は従業員数が10人未満でも、いずれは10人以上になる可能性もありますよね?
すでに就業規則を作成しておけば、人員が増えたときに慌てて作成しなくて済みます。
メリット⑤:経営者の考えを従業員に伝えられる
就業規則は、経営者の考えや思いを伝える役割を持ちます。
「これから会社をどうしていくか、そのために従業員にどのように行動してほしいか」といったメッセージを盛り込むことで、従業員は経営者の考えを汲み取りやすくなります。
就業規則の作成~届出の流れを5ステップで解説
就業規則の作成から届出までは、以下の流れで行われることが多いです。
作成・届出の義務が自社にあると分かったときに、参考にしてください。
ステップ①:就業規則の原案を作成する
まずは就業規則の原案を作成します。
弁護士や社労士に相談したり、厚生労働省のモデル就業規則を参考にして、自社の実態を考慮しながら作成していきます。
出典:【全体版】モデル就業規則(令和3年4月)(厚生労働省)
ステップ②:従業員へ周知する
原案を作成したら、一度パート・アルバイトを含む従業員に周知します。
「これから会社にこんなルールができますよ」と、事前に知らせておきましょう。
周知方法は社内に掲示、書面の交付、もしくはデータ共有等があります。
ステップ③:従業員代表から意見聴取する
次に従業員代表に原案を確認させて、意見を聴き取ります。
意見によっては、内容を修正することも検討しておきましょう。
聴取した意見は意見書に記入して、届出の際に添付します。
意見書は労働局のサイトでダウンロードできます。
ステップ④:就業規則届を記入する
就業規則が完成したら、就業規則届を記入します。
就業規則届も労働局のサイトでダウンロードできるので、印刷して使うと便利です。
ステップ⑤:管轄の労働基準監督署に届け出る
就業規則、意見書、就業規則届が準備できたら、管轄の労働基準監督署に届け出ます。
就業規則と意見書は、それぞれ2部提出します。
1部は労働基準監督署で受付印が印字されるので、それを控えとして保管してください。
これで就業規則の作成・届出は完了ですが、完成した就業規則をもう一度従業員に周知することを忘れないでください。
就業規則は周知によって効力が発生します。
まとめ:就業規則は義務がなくても作成した方がいい
それでは、この記事のおさらいです。
「日常的に従業員が10人以上いる会社」は、就業規則の作成と届出をしなくていけません。
もし義務に違反した場合、30万円以下の罰金が科せられ、労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性もあります。
従業員が10人未満の会社に義務はありませんが、就業規則にはたくさんのメリットがあります。
- 労使トラブルを防止できる
- 離職率の低下につながる
- 助成金の申請に活用できる
- 従業員が10人以上になったときに慌てずに済む
- 経営者の考えを従業員に伝えられる
これでおさらいは終了ですが「じゃあさっそく就業規則を作ろう!」と決心した経営者の方もいるのではないでしょうか?
就業規則の作成は自力ではとても難しいので、社労士や弁護士に相談しながら作り上げていくのがおすすめです。
まだ相談先が決まっていなければ、この記事を掲載している飯田橋事務所はいかがでしょうか?
経営者の考えや、記載したルールが必要な理由を、明確に伝えられる就業規則を作成します。
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