「今の東京都の最低賃金っていくらなんだろう?」
「従業員に支払っている賃金が、最低賃金を超えているか確認したい」
企業の給与担当者の方で、このような悩みを抱えていませんか?
最低賃金とは、法律に基づいて国が定めた賃金の最低限度額です。
企業は従業員に対して、必ず最低賃金以上の賃金を支払わなくてはいけません。
もし違反した場合は、企業は罰則を受けることになります。
当然従業員との信頼関係にも関わるので、最低賃金の改正時に確認することが大切です。
そこでこの記事では、以下の内容を解説します。
- 2022年の東京都の最低賃金
- 賃金が最低賃金を上回っているかチェックする方法
- これまでの推移
法律を守るために、そして従業員に適切な賃金を支払うために、ぜひこの記事を読んで参考にしてくださいね。
2022年10月から東京都の最低賃金は1,072円に
2022年10月1日から、東京都の最低賃金が時給1,072円に改正されました。
都内の企業は、時給1,072円以上の賃金を支払わなければ、最低賃金法違反に問われることになります。
ちなみに前年の東京都の最低賃金は1,041円でした。
都道府県ごとに定められた地域別最低賃金額は、毎年10月1日から順次改定されています。
全国の2022年度の最低賃金額を知りたい方は、下記のリンクからご覧ください。
2022年10月現在で、全都道府県の最低賃金が発効されています。
【2022年度は過去一番の引上げ】東京都の最低賃金のこれまでの推移
2022年の東京都の最低賃金は1,072円と、過去最大の金額になりました。
1977年では345円だったので、この45年間で727円引上げられたことになります。
東京都の最低賃金が過去最大になったのは、食料品や光熱費などの物価が上がったこと、昨年度よりも企業の経営状況が回復しつつあることが理由になっています。
従業員の賃金が最低賃金以上かチェックする方法
最低賃金は年齢や雇用関係に関係なく、すべての従業員に適用されます。
従業員に支払っている賃金が最低賃金以上になっているか、今一度チェックしましょう。
この記事では給与形態ごとに、確認方法を紹介していきます。
まずは時給制からです。
時給制の場合
時給制の場合、そのまま従業員の時給と最低賃金を比べて上回っていたらOKです。
計算式に表すと「時間給≧最低賃金額(時間額)」となります。
日給制の場合
日給制では、賃金を1日の所定労働時間で割って時給に換算し、最低賃金と比較します。
計算式では「日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)」になります。
けれど、特定(産業別)最低賃金が適用されていて、すでに日額が決められている場合は、そのまま比較してください。
月給制の場合
月給制では、月給を月の平均所定労働時間で割り出して、時間額に換算します。
「月給÷1ヶ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)」という計算式ですね。
ここでは東京都で働くAさんの賃金を、具体例として説明していきましょう。
基本給 | 180,000円 |
通勤手当 | 5,000円 |
家族手当 | 3,000円 |
深夜割増賃金 | 20,000円 |
職務手当 | 40,000円 |
合計 | 248,000円 |
年間所定労働時間 | 240日 |
1日の所定労働時間 | 8時間 |
- ① Aさんの賃金から、最低賃金の対象にならない賃金を除きます。
-
除外されるのは、以下の賃金です。
- 通勤手当
- 家族手当
- 深夜割増賃金
計算式:248,000円-(5,000円+3,000円+20,000円)=220,000円
- ② ①で算出した金額を月の平均所定労働時間で割り出し、時間額に換算します。
-
計算式:(220,000円×12ヶ月)÷(240日×8時間)=1,375円
現在の東京都の最低賃金は1,072円なので、Aさんの賃金は最低賃金額以上だと分かりました。
出来高払・その他請負制によって定められた賃金の場合
歩合給制や出来高給制などで賃金が支給される場合、賃金を月間総労働時間で割り出して、時給に換算します。
こちらも具体例を使って説明しましょう。
東京都で働くBさんの賃金(完全歩合給制)で計算します。
月間総労働時間 | 180時間 |
- ① Bさんの賃金から、最低賃金の対象にならない賃金を差し引きます
-
内訳のなかで当てはまるのは、時間外割増賃金です。
計算式:179,000円-4,000円=175,000円
- ② ①で算出した金額を月間総労働時間で割り出し、時間額に換算します
-
計算式:175,000円÷180時間=972.22円
時給の1円未満の端数は、50銭を基準にして切り捨て・切り上げをします。
今回は50銭に満たないので、Bさんの時給は972円になり、東京都の最低賃金を下回っていることが分かりました。
複数の給与形態が組み合わさっている場合
企業の中には、基本給と各手当を別々の給与形態にしているところもあります。
その場合はそれぞれを時間額に換算して、合計した金額を比較してください。
例えば東京都で働くCさんは基本給を日給制で、各種手当を月給制で受け取っているとしましょう。
基本給(日給) | 7,000円 |
〇月の労働日数 | 23日 |
職務手当 | 28,000円 |
通勤手当 | 5,000円 |
合計 | 194,000円 |
労働時間/日 | 8時間 |
年間労働日数 | 260日 |
- ① 支給された手当から、最低賃金の対象にならない賃金を差し引きます
-
対象にならないのは通勤手当です。
計算式:33,000円-5,000円=28,000円
- ② 基本給(日給制)を時間額に換算します
-
計算式:7,000円÷8時間=875円
- ③ 手当(月給制)を時間額に換算します
-
計算式:(28,000円×12ヶ月)÷(260日×8時間)=161.53円
1円未満の端数が50銭以上なので、切り上げて162円になります。
- ④ ②と③の時間額を合計して最低賃金額と比べます
-
計算式:875円+162円=1,037円
この計算により、Cさんの賃金は東京都の最低賃金額より少ないことが判明しました。
もうひとつ具体例を挙げましょう。
今度は固定給制と歩合給制で受け取っている、東京都のDさんです。
固定給 | 153,000円 |
歩合給 | 70,000円 |
固定給に対する時間外割増賃金 | 33,750円 |
固定給に対する深夜割増賃金 | 9,000円 |
歩合給に対する時間外割増賃金 | 2,625円 |
歩合給に対する深夜割増賃金 | 3,500円 |
合計 | 271,875円 |
月間総労働時間 | 200時間 |
所定労働時間 (1年間における1ヶ月平均所定労働時間) | 170時間 |
- ① 固定給から割増賃金(最低賃金の対象ではない)を引き、月の平均所定労働時間で割り出します
-
計算式:153,000円÷170時間=900円
- ② 歩合給から割増賃金(最低賃金の対象ではない)を引き、月間総労働時間で割り出します
-
計算式:70,000円÷200時間=350円
- ③ ①と②の金額を合計し、最低賃金と比べます
-
計算式:900円+350円=1,250円
東京都の最低賃金は1,072円なので、Dさんの賃金は最低賃金を上回っていることが判明しました。
このようにどの給与形態でも、最低賃金の対象でない手当を引き、時間額に換算してから最低賃金額と比べます。
自社の従業員に支払っている賃金が最低賃金を下回っていないか、ご紹介した方法でチェックしてくださいね。
新人の時給を上げたら既存従業員の時給も上げるべき?
最低賃金の改正に合わせて、新人従業員の時給を上げることになった企業もあると思われます。
しかし「新人の時給だけでなく、既存従業員の時給も上げるべきなのか?」と疑問に感じる方もいるのではないでしょうか?
結論から言うと、既存従業員の時給がすでに最低賃金額を超えているなら、時給を上げなくても問題はありません。
しかしそうすると、従業員達の間で不公平感が生まれる可能性もあります。
新人従業員の時給を上げる前に、事前に従業員達と話し合ったり、これを機に時給の見直しを行うと職場環境の改善に繋がります。
研修期間中でも最低賃金以上に引上げるべき?
前述したとおり、最低賃金はすべての従業員に適用されます。
研修期間中の賃金や学生時給でも同様です。
その為研修期間中に最低賃金が改正され、時給が最低賃金より下回ることになったら、会社の時給をアップする必要があります。
どのような雇用形態でも必ず引上げましょう。
たとえ労働者との間で、最低賃金よりも低く支払うことが合意されていても、その労働契約は無効になります。
まとめ|企業は最低賃金以上の賃金を従業員に支払わなければならない
記事内の「従業員の賃金が最低賃金以上かチェックする方法」を実践すれば、支払っている賃金が法律違反となっていないかすぐに確認できます。
この記事を読み終えたら、すぐにチェックしてくださいね。
最後に、ご紹介した内容をおさらいしましょう。
- 2022年の東京都の最低賃金は1,072円
- 最低賃金より少ない賃金を支払ったら法律違反になる
- 最低賃金の確認方法は、賃金額を時間額に換算して最低賃金額と比較する
- 新人従業員の時給を上げるときは、不満に繋がらないように事前に話し合いをするのがオススメ
- 研修期間中でも最低賃金より少ない場合は賃金を引上げる
この記事が少しでも、最低賃金について悩んでいる方のお力になれば幸いです。
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