特定理由離職者ってなに?失業保険の給付日数や必要書類について解説

「退職予定の労働者から、自分は特定理由離職者に当てはまるのか聞かれた」

「特定理由離職者だった場合、どのように失業保険の手続きをすればいいのかと相談された」

「人事である自分も特定理由離職者について詳しく知らないから、この機会に勉強したい」

人事・労務担当者の方でこのような悩みを抱えていませんか?

特定理由離職者とは、雇止めや正当な理由で自己都合退職した人のことです。

失業保険を受給したいけれど、一般離職者と同じように手続きをしていいのかと不安に思い、人事労務に相談する労働者も多いと思います。

実際に、何度か相談を受けた人事・労務担当者の方もいるのではないでしょうか?

退職者に向けて正しく情報提供できるように、本記事では特定理由離職者について次の内容を解説します。

  • 特定理由離職者とは
  • 特定理由離職者と特定受給資格者の違い
  • 失業保険の関係について

また、特定理由離職者が会社の助成金に影響をもたらすのかも解説しています。

ぜひ最後まで読んで、参考にしてください。

目次

特定理由離職者とは

特定理由離職者とは

特定理由離職者とは、期間の定めのある労働契約が更新されなかった、いわゆる「雇止め」が要因で離職した人のことです。

また「病気やケガなどの正当な理由で自己都合退職した」人も、特定理由離職者に該当します。

特定理由離職者の区分①:雇止めで離職した

雇止めで離職した人が特定理由離職者と判断されるには、次の3つの条件を満たす必要があります。

  • 期間の定めのある労働契約の期間が満了した
  • 労働契約の更新又は延長があることが明示されていた
  • 労働者が契約更新を希望したにもかかわらず、合意が成立しなかった

1つでも当てはまらなかった場合、雇止めが理由で退職しても特定理由離職者と認定されません。

特定理由離職者の区分②:正当な理由で自己都合退職した

下記のいずれかに当てはまる場合は、正当な理由で退職したと見なされ、特定理由離職者だと判断されます。

  1. 体力の不足、心身の障害等により離職した
  2. 妊娠や出産、育児等により離職し、失業保険の受給期間延長措置を受けた
  3. 父母の死亡、疾病、負傷等のため、父母を扶養するために離職した
  4. 配偶者または扶養親族と別居生活が困難になったため離職した
  5. 次の理由により、通勤が不可能又は困難になったため離職した
    • 結婚に伴う住所変更
    • 保育所の利用
    • 事業所の移転
    • 望まない住所や居住の移転(強制立ち退き、天災等による移転等)
    • 鉄道、鉄道、バスその他の運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
    • 事業所の命による転勤、または出向に伴う別居の回避
    • 配偶者の事業所の命による転勤もしくは出向、または配偶者の再就職に伴う別居の回避
  6. 希望退職者の募集に応じて離職した

なお、特定理由離職者になるかは最終的にハローワークが判断します。

特定理由離職者と特定受給資格者との違い

特定理由離職者と特定受給資格者との違い

特定受給資格者とは、主に倒産や解雇等の理由で再就職の準備をする時間的時間がなく、離職を余儀なくされた人のことです。

特定理由離職者との違いの1つが離職理由です。

離職理由によって、特定理由離職者と特定受給資格者のどちらに判断されるかが変わっていきます。

スクロールできます
特定理由離職者特定受給資格者
離職理由・雇止め
・正当な理由のある自己都合
・会社の倒産
・解雇


関連記事はこちら👇

特定理由離職者と失業保険について

特定理由離職者と失業保険について

ここからは、特定理由離職者が失業保険を受け取るための受給条件や給付日数等について解説していきます。

受給条件

特定理由離職者が失業保険を受給するには、次の条件を満たす必要があります。

  • 離職以前1年間に、被保険者期間が通算して6ヶ月以上あること
  • 就職する意思があること
  • いつでも就職できる能力があること
  • 積極的に仕事を探しているが、現在職業に就いていないこと

条件の1つである被保険者期間については、一般離職者の場合と異なります。

混同して労働者に伝えないように注意しましょう。

給付日数

特定理由離職者の区分によって、失業保険の給付日数は変わります。

区分①(雇止めの場合)

特定理由離職者のうち、雇止めで離職した人の給付日数はご覧の通りです。

特定理由離職者と失業保険について
出典:基本手当の所定給付日数|ハローワークインターネットサービス

なお、受給資格に関係する離職日が2009年3月31日〜2025年3月31日までの間にある場合は、給付日数が特定受給資格者と同様になります。

区分②(正当な理由のある自己都合退職の場合)

一方、正当な理由で自己都合退職した人は、ご覧の期間まで失業保険を受け取れます。

出典:基本手当の所定給付日数|ハローワークインターネットサービス

給付開始時期

特定理由離職者の場合、受給資格決定日から7日間の待機期間を経てから給付が開始されます。

しかし、実際に現金が振り込まれるのは受給資格決定日から約1ヶ月後です。

また、特定理由離職者に限りませんが、7日間の待機期間中にアルバイトをしたり再就職先が決まった場合、失業保険を受け取ることはできません。

受給資格決定日とは

離職後に初めてハローワークで求職の申込を行い、離職票を提出した日。

受給するまでの流れと必要書類

特定理由離職者が給付を受けるまでの主な流れは、下記の通りです。

  1. 必要書類を準備する
  2. 退職後にハローワークで求職の申込を行い、必要書類を提出する
  3. 雇用保険説明会に参加する
  4. 書類を提出した7日後に失業保険の給付が開始する

なお、先ほどでも触れたように、実際に現金が振り込まれるのは約1ヶ月後となります。

必要書類は、退職者が用意するものと会社が用意するものがあります。

退職者が用意する書類

  1. 離職票-1(会社が発行)
  2. 離職票-2(会社が発行)
  3. マイナンバーカード
    • マイナンバーカードを持っていない人は、次の①及び②をそれぞれ1種類をお持ちください
      ①通知カード、個人番号の記載のある住民票
      ②運転免許証、運転経歴証明書、官公署が発効した身分証明書・資格証明書(写真付き)
    • ②がない場合は公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証明書等(コピー不可)
  4. 本人の印鑑(認印・スタンプ印以外)
  5. 写真(最近の写真、正面上半身、縦3㎝×横2.5㎝。1枚は離職票-2に貼付欄に貼付)
  6. 本人名義の預金通帳(一部の金融機関を除く)
    • 金融機関指定届に金融機関による確認印があれば不必要
  7. 船員であった方は船員保険失業保険証及び船員手帳

会社が用意する書類

会社は退職者が特定理由離職者だと証明できる書類を、ハローワークの要望に応じて用意します。

雇止めで離職した場合
  • 労働契約書
  • 雇入通知書
  • 就業規則
正当な理由で自己都合退職した場合
スクロールできます
理由書類
心身の障害医師の診断書
妊娠、出産受給期間延長通知書
父母の扶養所得税法第194条に基づく扶養控除等申告書
健康保険証
医師の診断書等
通勤不可能離職者の通勤経路に係る時刻表等
人員整理窓口に問い合わせ

※詳しくはハローワークにお問い合わせください。

また、離職票も会社が発行して退職者に渡してください。

離職票を発行するには、次の書類を管轄のハローワークに提出する必要があります。

離職票発行に必要な書類
  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 雇用保険被保険者離職証明書
  • 出勤簿、就業規則、賃金台帳などの添付書類

不正受給した場合の罰則

もし失業保険を不正に受給した場合、次の処分を受けることになります。

  • 失業保険の給付停止
  • 給付を全額返還
  • 支給額の倍を納付
  • 詐欺罪として告発

また、企業も離職票等の内容を偽って記載した場合、企業も連帯して処分を受けることがあります。

特定理由離職者は助成金受給に影響がある?

特定理由離職者は助成金受給に影響がある?

人事・労務担当者の方から「特定受給資格者が出たら雇用関連助成金を受け取れなくなるの?」と聞かれることが多々あります。

結論から言うと、会社から特定理由離職者が出ても雇用関連助成金の受給に影響はありません。

雇用関連助成金の受給資格がなくなるのは「一定期間内に事業主の都合による離職者が出た会社」(雇用保険被保険者資格喪失届の喪失原因が「3」に該当する場合)です。

特定理由離職者は会社都合による離職者ではなく、不支給要件に当てはまらないため、助成金を申請することができます。

一方、特定受給資格者は会社都合で離職した人なので、一定期間内に特定受給資格者を出した会社は、雇用関連助成金を申請できません。

どうしても特定受給資格者を出さざるを得ない状況になった場合、不支給要件に該当する時期が過ぎるのを待ち、改めて申請してください。

まとめ|特定理由離職者について疑問点があれば飯田橋事務所へ

まとめ|特定理由離職者について疑問点があれば飯田橋事務所へ

それでは最後に、本記事のおさらいをしましょう。

本記事のおさらい
  • 特定理由離職者とは「雇止めで離職した人」「正当な理由で自己都合退職した人」のこと
  • 特定受給資格者は「会社の倒産・解雇」等が理由でやむなく離職した人
  • 失業保険の手続きの際、会社は「退職者が特定理由離職者だと証明できる書類」を用意する必要がある
  • 雇用関連助成金の申請に影響はない

この記事が、人事労務担当者や相談に来た労働者の一助となれば幸いです。

もし特定理由離職者についてご不明な点がありましたら、いつでも飯田橋事務所にお問い合わせください。

人事・労務管理の経験を積んだ専門職員が、親身になって対応させていただきます。

どうぞお気軽にご相談ください。

※個人の方からのご相談は受け付けておりません、ご了承ください。

人事・労務でお悩みなら是非ご相談ください

専門性と豊富な経験: 社労士18名(うち特定社労士11名)、ハラスメント防止コンサルタント、採用支援、中退共導入支援、産業カウンセラーなど、幅広い専門性を持った職員が支援します。
多様な顧問先への対応: 従業員数が数名から8,000名超の様々な規模・業種の顧問先に対応しており、多くの事例と実績があります。
担当者制と迅速な対応: メイン担当者制に加え、グループ制や複数担当者制で、「連絡が取りやすい」「回答が早い」といった支援体制を確立しています。
業務のデジタル化: ITシステムを活用して労働・社会保険の諸手続きや給与計算などをデジタル化・効率化しています。
高いセキュリティー: プライバシーマークを取得し、日本でも有数の更新回数です。個人情報の保護に実績と信頼があります。
お客様から圧倒的に信頼されている飯田橋事務所へのお問い合わせはこちら👇

目次