「介護休業と介護休暇の違いはなに?」
「どっちも期間中に給与は支払われるの?」
「従業員に違いを聞かれたから、説明できるようにしたい…」
人事労務担当者の方で、このような悩みを抱えていませんか?
介護休業と介護休暇は異なる制度ですが、名前が似ているので間違われがちです。
ですが、2つの制度の違いを理解していないと、いざ従業員から取得を求められた際に、間違った対応をしてしまう恐れがあります。
そうした事態を防ぐために、今のうちに制度の違いを確認しておきましょう。
本記事では、介護休業と介護休暇の違いの他に、次の内容を解説します。
- 介護休業給付金とは
- 介護離職を防ぐために会社ができること
この記事を読むと、もう介護休業と介護休暇について混同しなくなりますので、ぜひ最後までお読みください。
介護休業と介護休暇の違いを表で解説
まずは、介護休業と介護休暇の違いを表で表します。
介護休業 | 介護休暇 | |
---|---|---|
概要 | 要介護状態にある家族のために休める制度 | 要介護状態にある家族のために休める制度 |
取得できる労働者 | 以下に該当しない労働者 1.日雇い労働者 2.取得予定日から起算して、93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかな労働者 3.入社1年未満の労働者 4.週の所定労働日数が2日以下の労働者 5.休業申請してから93日以内に退職する労働者 (※3,4,5は労使協定を締結している場合) | 以下に該当しない労働者 1.日雇い労働者 2.入社してから6ヶ月未満の労働者 3.週の所定労働日数が2日以下の労働者 (※2,3は労使協定を締結している場合) |
対象となる家族の範囲 | ・父母 ・子 ・配偶者の父母 ・祖父母、兄弟姉妹、孫 | ・父母 ・子 ・配偶者の父母 ・祖父母、兄弟姉妹、孫 |
取得日数 | 対象家族1人につき3回まで、通算93日まで | 対象家族が1人の場合は、1年に最大5日まで 対象家族が2人以上の場合は10日まで |
賃金の有無 | 会社の規定・契約による ※ただし、条件次第で給付金の申請が可能 | 会社の規定・契約による |
介護休業と介護休暇の大きな違いは取得日数です。
介護休業は対象家族1人につき93日間取得でき、介護休暇は最大5日間の取得になります。
似ている部分は多々ありますが、2つは全く別の制度です。
それぞれの違いを、これから詳しく解説していきます。
【取得可能日数は最大93日まで】介護休業について解説
介護休業とは、要介護状態にある家族のために、仕事を休むことができる制度です。
要介護状態は、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことを言います。
取得できる労働者
介護休業は、次に該当しないすべての労働者です。
- 日雇い労働者
- 雇用期間が6ヶ月未満の労働者
- 週の所定労働日数が2日以下の労働者
- 休業申請してから93日以内に退職する労働者
家族の範囲
従業員の親族のうち、次の範囲であれば介護休業を取得できます。
- 配偶者(事実婚でも可能)
- 子供(養子を含む)
- 父母(養父母を含む)
- 兄弟姉妹
- 祖父母
- 孫
- 配偶者の父母(養父母を含む)
取得日数
休業できる日数は、介護の対象となる家族1人につき93日までです。
最大3回に分割して取得することができます。
なお、93日間は土日祝日も含めた暦日数です。
給与の有無
介護休業中の給与支払いについては、法律上の明確な規定はありません。
そのため、休業中に給与が支払われるかは、会社の就業規則や労働契約によります。
しかし、介護休業中は一定の条件を満たすことで、雇用保険から介護休業給付金を受け取ることができます。
申請方法
従業員から介護休業の申請があった場合、一般的に次のような流れで対応します。
まずは従業員に「介護休業申出書」を作成・提出してもらいます。
介護休業の開始予定日から2週間前までの提出が必要です。
この申出書は、介護休業給付金の申請時にも必要になります。
介護休業の開始予定日や終了予定日を「介護休業取扱通知書」に記して、従業員に通知します。
休業中の従業員が負担する社会保険料、住民税の支払い、賃金等についても会社の規定に沿って伝えてください。
「介護休業取扱通知書」に記した期間中、従業員は介護休業を取得できます。
従業員が復職する前に面談を実施します。
復職後も滞りなく業務に戻れるように、業務内容を確認してください。
【取得可能日数は最大5日まで】介護休暇について解説
続いて、介護休暇について解説します。
介護休暇は、要介護状態となった家族の介護や世話をするために、従業員が取得できる休暇制度です。
制度の概要は介護休業と似ていますが、介護休暇は突発的で短期的な介護を目的としています。
例えば、家族の買い物や通院の付き添い、書類手続きなどに対応するために利用されることが多いです。
取得できる労働者
介護休暇を取得できるのは、次に該当しないすべての労働者です。
- 日雇い労働者
- 入社してから6ヶ月未満の労働者
- 週の所定労働日数が2日以下の労働者
家族の範囲
介護休暇を取得できる家族の範囲は、介護休業と同様です。
- 配偶者(事実婚でも可能)
- 子供(養子を含む)
- 父母(養父母を含む)
- 兄弟姉妹
- 祖父母
- 孫
- 配偶者の父母(養父母を含む)
取得日数
介護休暇は、1年に最大5日まで取得できます。
介護対象が2人以上の場合は10日まで取得でき、時間単位でも取得可能です。
給与の有無
介護休暇中の給与支払いについては、法律で定められていません。
そのため、各会社の規定や判断に委ねられます。
申請方法
介護休暇の申請方法は会社によって異なります。
自社の就業規則に則って、手続きを行ってください。
介護休業を取得した従業員がもらえる「介護休業給付金」
先ほども触れたように、介護休業を取得した従業員は、一定の条件を満たすことで介護休業給付金を受け取ることができます。
受給条件
介護休業給付金の受給条件は次の4つです。
- 雇用保険の受給資格者
- 介護休業の開始日の前の2年間に、雇用保険に12ヶ月以上加入していること
- 介護のため2週間以上の休業が必要である
- 職場復帰を前提として介護休業を取得する
受給金額
介護休業給付金の受給金額は給与の67%です
具体的な金額は次の計算式で求めることができます。
申請方法
介護休業給付金の申請手続きは会社が行います。
従業員から「介護休業給付金を申請したい」と申し出されたら、次の流れで対応してください。
まずは、管轄のハローワークに提出するための書類を用意します。
添付書類は異なる場合があるので、ハローワークに確認してください。
- 雇用保険被保険者 休業開始時賃金日額証明書
- 介護休業給付金申請書
- 対象従業員の賃金台帳
- タイムカード
- 従業員が提出した介護休業申出書
- 介護の対象となる家族の証明書類(住民票記載事項証明書等)
用意した書類を、管轄のハローワークに提出します。
届出期間は、介護休業終了日の翌日から数えて2ヶ月を経過する日が含まれる月の末日です。
休業期間が3ヶ月以上になる場合は、休業開始日から3ヶ月を経過した日の翌日から数えて2ヶ月目の末日になります。
介護休業給付金の支給が決まると、管轄のハローワークから「支給決定通知書」が会社に届きます。
通知書に書かれている支給決定日から約1週間後に、従業員の口座に給付金が振り込まれます。
これで、介護休業給付金の手続きは完了です。
従業員の介護離職を防ぐために会社ができること
内閣府の調査で、家族の介護や看護を理由に退職した数は、2016年から2017年までの1年間で約10万人だと判明しました。
高齢化社会が進む中で、今後ますます介護理由による離職者は増えていくでしょう。
そんな従業員の介護離職を防ぐために、会社はどのように対処すれば良いでしょうか。
大切なことは、従業員が仕事と介護を両立しやすい職場環境にすることです。
例えば、育児・介護休業法には、従業員が仕事と介護を両立して働き続けるための制度が定められています。
- 介護休業
- 介護休暇
- 所定外労働の制限
- 時間外労働の制限
- 深夜業の制限
- 所定労働時間の短縮
これらの措置を従業員に提供することで、従業員は安心して仕事と介護を両立しながら働くことができます。
また、柔軟な勤務時間制度を導入したり、在宅勤務やテレワークを設けたりすることも得策です。
例えば、現在企業には勤務間インターバル制度の導入が努力義務となっています。
勤務間インターバル制度とは、勤務終了時間から翌日の勤務開始時刻の間に、一定の休息時間(インターバル)を設ける制度です。
休息時間を確保することで、長時間労働を防ぎ、介護を抱える労働者の健康を守ることができます。
もちろん、介護をしていない労働者も心身を休めることができるので、すべての労働者にとって働きやすい職場になります。
このように、仕事と介護を両立しやすい職場環境にすることで、介護理由による離職者を減らすことが期待できるでしょう。
勤務間インターバル制度については、こちらの記事をご覧ください。
まとめ|介護休業と介護休暇は似ているけど別の制度
介護休業と介護休暇は、どちらも要介護状態にある家族のために仕事を休める制度ですが、異なる点がいくつかあります。
人事労務担当者の方は2つの制度の違いを理解し、介護をする従業員をサポートできるように、正しく対応できるようにしましょう。
また、「どちらの制度も柔軟に利用できるような職場環境にしたい」という方は、ぜひ飯田橋事務所にご相談ください。
人事労務の経験を積んだ当事務所の専門職員が、職場環境の改善のために支援させていただきます。
その他にもご不明な点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。