「労働者死傷病報告書ってなに?」
「休業4日未満でも報告は必要なの?」
「誰がどこに提出すればいいの?」
人事労務担当者の方で、このような悩みを抱えていませんか?
労働災害によって労働者が死亡・休業した際に提出するのが労働者死傷病報告書です。
労災の再発防止や事故の原因解明のために、会社は滞りなく報告することが義務付けられています。
しかし、いざ報告をしようと思っても、使用する様式や提出先等が分からずに戸惑っている担当者の方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は次の内容を解説していきます。
- 労働者死傷病報告書とは
- 提出者と提出先
- 派遣労働者が被災した場合
- 休業なしの場合
- 休業4日未満の場合と4日以上の場合に使用する様式
- 様式ごとの提出期限・記入例
この記事を読むと、スムーズに労働者死傷病報告書を作成・提出することができるので、ぜひ最後まで読んで参考にして下さい。
労働者死傷病報告書とは
労働者死傷病報告書は、労働者が労働災害により死亡・休業した際に提出する報告書です。
労働安全衛生法に基づき、労災が発生した際には、会社は「労働者死傷病報告書」を提出しなくてはいけません。
なお、休憩中の負傷で、事業場や付属する建築物の不備や欠陥による負傷等、労働災害となる場合についても報告が必要です。
この報告により、労災の再発防止や事故の原因解明に役立ちます。
労働死傷病報告書の作成・提出者
労働者死傷病報告の提出者は、原則として、労災に遭遇した従業員を直接雇用している事業主です。
建設業の下請け労働者が被災した場合も、被災労働者を直接雇用している下請けの事業主が提出します。
労働者死傷病報告書の提出先
労働者死傷病報告書は、基本的に、被災労働者の勤務先を管轄する労働基準監督署へ提出します。
もし、労働者が被災した場所が、会社の事業所の地域と異なる場合でも、勤務先を管轄する労働基準監督署に提出することになります。
派遣労働者が被災した場合
被災労働者が被災した場合は、派遣先と派遣元の双方が手続きを行う必要があります。
手続きの流れは以下の通りです。
- 派遣先が労働基準監督署に報告を提出する
- 報告内容の写しを派遣元に送付する
- 派遣元は送付された内容を元に、労働者死傷病報告書を作成・提出する
提出先は、それぞれの事業場の住所を管轄する労働基準監督署です。
休業なしの場合
休業がない場合や、通勤災害が発生した場合は、労働者死傷病報告を提出する必要はありません。
報告を怠った場合の罰則
労働者死傷病報告の報告を怠ったり、虚偽の内容で提出した場合は、労働安全衛生法違反により50万円以下の罰金が課せられることがあります。
また、厚生労働省のホームページで違反した企業名が公表されることもあります。
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労働者死傷病報告書の必要書類・期限・記入例などを解説
被災労働者が休業した日数によって、使用する様式や提出期限は異なります。
休業日数については、労災発生日の翌日からカウントしてください。
労災発生日の翌日から被災労働者が出勤している場合は、休業日数は0日となります。
また、休業期間中に土日がある場合、その2日も休業日数にカウントされます。
死亡および休業4日以上の場合
- 必要書類
-
- 様式第23号(労働者死傷病報告)を1部
控えがほしい場合は、当該報告書のコピーと合わせて2部提出します。
郵送の場合は、切手を貼った返信用封筒も同封すれば、後日受付印が押された1部が返送されます。
- 提出期限
-
明確な提出期限はありませんが、遅延なく提出することが求められます。
ただし、労災発生から1ヶ月以上経過した場合は、報告遅滞理由書の提出が求められることがあります。
そのため、遅くとも1ヶ月以内に提出することが望ましいです。
- 提出方法
-
- 労働基準監督署の窓口に持参
- 郵送
- 電子申請
- 記入例と記載事項
-
出典:労働者死傷病報告(休業4日以上)様式 記載例1|厚生労働省
- 労働保険番号
- 事業の種類
- 事業場の名称
- 工事名
(建設工事にかかる災害の時のみ記載する) - 事業場の所在地・電話番号
- 郵便番号
- 労働者数
- 親事業場の名称・元方事業場の名称
(製造業等の構内下請事業場、建設工事の関係請負人が被災した場合に記載する) - 派遣先の事業場の労働保険番号、郵便番号、名称、提出事業者の区分
(派遣労働者が被災した場合のみ記載する) - 労災の発生日時
(時刻まで確実に記載する) - 被災労働者の氏名
- 被災労働者の生年月日
- 被災労働者の性別
- 被災労働者の職種
- 被災労働者の職種の経験期間
(経験期間が「3年9ヶ月」等の場合は「3年」のように切り捨てて記載する) - 休業見込期間又は死亡日時
(休業見込期間は被災者が再び出社できるまでの期間を記載する) - 傷病名
(やけど等、分かる範囲で記載する) - 傷病部位
(左足等、分かる範囲で記載する) - 被災地の場所
- 災害発生状況及び原因
(詳細に記載する) - 略図
- 国籍地域・在留資格
(被災労働者が外国人である場合のみ記載する) - 報告書作成者職氏名
- 報告書作成年月日
- 事業者職氏名
(支店等で報告権限が委譲されている場合は、支店長名等でも可) - 提出先の労働基準監督署名
休業1日以上4日未満の場合
- 必要書類
-
- 様式第24号(労働者死傷病報告)を1部
控えが必要な場合は、該当の報告書のコピーも一緒に2部で提出して下さい。
郵送する際は、返信用の切手付き封筒も貼付します。
そうすると、受付の印が付けられた1部が後ほど返されます。
- 提出期限
-
事故が発生した四半期の翌月末日までに提出する必要があります。
- 1~3月に発生した場合 4月末日まで
- 4~6月に発生した場合 7月末日まで
- 7~9月に発生した場合 10月末日まで
- 10~12月分に発生した場合 1月末日まで
- 提出方法
-
- 労働基準監督署の窓口に持参
- 郵送
- 記入例と記載事項
-
- 災害発生期間
- 事業の種類
- 事業の名称
(建設業での災害では工事名も記載する) - 事業所の所在地
- 電話番号
- 労働者数
- 被災労働者の氏名
- 被災労働者の性別
- 被災労働者の年齢
- 被災労働者の職種
- 労災の発生月日
- 傷病名及び傷病の部位
(右腕の骨折等、分かる範囲で記載する) - 休業日数
- 災害発生状況
- 報告書作成者職氏名
- 報告書作成年月日
- 事業者職氏名
(支店等で報告権限が委譲されている場合は、支店長名等でも可) - 提出先の労働基準監督署名
- 派遣労働者の場合は欄に〇、派遣先の事業場の名称
(派遣労働者が被災した場合のみ記載する)
【2025年1月】労働者死傷病報告書の電子申請が原則義務化に
2025年(令和7年)1月1日から、労働者死傷病報告の電子申請は原則義務化されます。
事業者の手間を削減するため、システム改修が行われe-Govと連携することで、スマートフォン等からでも電子申請することを可能とします。
パソコンやスマートフォンを所持していない事業者は、労働基準監督署に配置されるタブレットで電子申請を行うことが可能となります。
電子申請の義務化に伴う変更点
電子申請の義務化に伴い、労働者死傷病報告書の様式内容が変更されます。
- 事業の種類欄
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事業の種類欄は、日本標準産業分類コード4桁で入力することになります。
- 被災労働者の職種欄
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被災労働者の職種欄は、日本標準職業産業分類コード3桁で入力することになります。
- 災害発生状況及び原因欄
-
災害発生状況及び原因の欄が、以下のように分割されます。
- どのような場所で
- どのような作業をしているときに
- どのような物又は環境に
(化学物質が原因の場合は、その化学物質の名称を明記する) - どのような不安全な又は有害な状態があって
(保護具を着用していなかった、手すりが設置されていなかった等を記載する) - どのような災害が発生したか
- 記載事項の追加
-
休業4日未満(様式第24号)に、次の報告事項が追加されます。
- 労働保険番号
- 被災者の経験期間
- 国籍・在留資格
- 親事業場等の名称
- 災害発生場所の住所
労働者死傷病報告書の他に電子申請が義務化される報告
労働者死傷病報告と同様に、次の報告も電子申請が義務化されます。
- じん肺健康管理実施状況報告
- 総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告
- 定期健康診断結果報告書
- 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書
- 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書
- 有機溶剤等健康診断結果報告書
労働者死傷病報告の他に会社が行う2つの対応
労災が発生した場合、会社は労働者死傷病報告書の他にも行うことがあります。
①労災認定手続き
労災認定手続きとは、労災が起こった際に、被災労働者が労働保険の給付を受けるための手続きのことを指します。
この手続きは、基本的に被災した労働者本人が行うとされていますが、実際には会社が手続きを担当することがほとんどです。
労働者の生活のために、速やかに手続きをする必要があります。
労災認定手続きについては、こちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にして下さい。
②再発防止案の策定・実施
労働者の安全を確保するため、労災が発生した際には再発防止案を策定し、それを実施することが必須になります。
労災は従業員の命や健康を脅かすだけでなく、会社のブランドイメージや信頼性にも悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、一度発生した労災をきっかけに、再発を防ぐための具体的な対策を速やかに策定し、それを徹底的に実施することが重要です。
具体的な労災再発防止対策は、次の通りです。
- 機械に囲いや覆いを取り付ける
- 安全な作業床を設置する
- 機器のメンテナンス回数を増やす
- 照明を明るくする
- 危険な作業が生じた際には、労働者との情報共有のためのミーティングを都度開催する
- 労働時間を見直す
まとめ|労災が起きた際は労働者死傷病報告書を忘れず提出しよう
それでは最後に、本記事のおさらいをしましょう。
- 労働者死傷病報告は、労働者が労働災害により死亡・休業した際に提出する報告書
- 提出者は、労災に遭遇した労働者を直接雇用している事業主
- 派遣労働者が被災した場合は、派遣先と派遣元の双方が提出する
- 休業がない場合や通勤災害が発生した場合は、提出する必要はない
- 被災労働者の休業が4日以上の場合は「様式第23号」を提出する
- 被災労働者の休業が4日未満の場合は「様式第24号」を提出する
冒頭でも述べたように、労働者死傷病報告は労災の再発防止や原因解明のために提出する報告です。
内容に誤りがないように、しっかり災害の発生状況等を把握して作成しましょう。