「ロクイチ報告ってなに?」
「いつまでに報告すればいいの?」
「高年齢者雇用状況等報告書の書き方を教えてほしい」
人事労務担当者の方で、このような悩みを抱えていませんか?
ロクイチ報告とは、高年齢者および障害者の雇用状況を報告する制度です。
毎年6月1日時点での雇用状況を報告するため「ロクイチ報告」と言われています。
そんなロクイチ報告を初めて行うことになって、戸惑っている担当者の方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、次の内容を解説していきます。
- ロクイチ報告とは
- 対象企業や提出方法
- 高年齢者雇用状況等報告書の書き方
この記事を読むと、スムーズにロクイチ報告を行うことができるので、ぜひ最後までご覧ください。
ロクイチ報告とは?対象企業や提出方法などを説明
ロクイチ報告は、事業主が毎年6月1日時点での、高年齢者および障害者の雇用状況を報告する制度です。
報告の際には次の書類を提出します。
- 高年齢者雇用状況等報告書
- 障害者雇用状況報告書
ロクイチ報告は、国が高年齢者および障害者の雇用状況を把握し、必要な雇用政策を講じるために活用されます。
ロクイチ報告の提出義務がある企業
ロクイチ報告は、次の企業に提出義務があります。
高年齢者雇用状況等報告書 | 常用労働者が31人以上の企業 |
障害者雇用状況報告書 | 常用労働者が43.5人以上の企業 |
障害者雇用状況報告書については、障害者を一人も雇用していない場合でも報告が必要です。
ロクイチ報告の提出期限
ロクイチ報告の提出期限は、毎年7月15日です。
なお、対象企業には、5月末から6月初めにかけて必要な書類が郵送で送られてきます。
ロクイチ報告の提出方法と提出先
ロクイチ報告は、次のいずれかの方法で提出します。
- 窓口持参
- 郵送
- 電子申請
提出先は、事業所管轄のハローワークです。
報告しなかった場合の罰則
「障害者雇用状況報告書」の提出を怠ったり虚偽の報告をした場合は、30万円以下の罰金の対象となります。
一方「高年齢者雇用状況等報告書」には、法的な罰則は設けられていません。
しかし、報告をしなかったり、雇用状況が改善されていない場合は、厚生労働省のサイトに企業名が公表されてしまうことがあります。
【令和5年最新】高年齢者雇用状況等報告書の書き方
「高年齢者雇用状況等報告書」では、次の内容を記入します。
- 事業主情報
- 定年制の状況
- 継続雇用制度の状況
- 創業支援等措置の状況
- 65歳を超えて働ける制度等の状況
- 常用する労働者数の状況
- 過去1年間の離職者の状況
- 65歳まで及び65歳を超えて働ける制度の過去1年間の適用状況
- 経過措置に基づく継続雇用の対象者に係る基準の過去1年間の適用状況
- 65歳を超えて働ける制度の対象者に係る基準の過去1年間の適用状況
- 高年齢者雇用等推進者・記入担当者
ひとつずつ解説していくので、報告書を書くときの参考にしてください。
事業主情報
記入欄①〜⑦に以下の内容を記入します。
- 企業名
- 代表者氏名
- 住所
- 電話番号
- 法人番号
- 産業分類番号
- 事業の具体的内容
- 労働組合の有無
- 雇用保険適用事業所番号
定年制の状況
記入欄⑧、⑨では定年制の状況について記入します。
- 記入欄⑧
-
就業規則に定年が設定されている場合は「定年あり」にチェックをし、最も若い定年年齢を記入します。
なお、定年年齢が60歳未満だと法律違反のため、速やかに改善する必要があります。
定年がない場合は「定年なし」にチェックしてください。
- 記入欄⑨
-
定年の改定・廃止予定の有無、その予定年月を記入します。
改定予定がある場合は、改定後の年齢も記入してください。
継続雇用制度の状況
継続雇用制度とは、従業員が定年に達した後も、希望すれば継続して働くことができる制度です。
記入欄⑩、⑪では継続雇用制度の有無や改定予定等について記入します。
- 記入欄⑩
-
就業規則等で制度を定めている場合は、以下の内容にも記載します。
- a.継続雇用先
- b.対象(上限年齢が設定されていない場合は「99」と記入)
- 基準の根拠
例えば、希望者全員を自社で65歳まで継続雇用する場合、以下のように記載します。
- a.継続雇用先は「65歳以下」(イ)「自社」をチェック
- b.対象は(イ)「希望者全員を対象」をチェックして「65歳まで雇用」と記入
- 基準の根拠は「基準(65歳以下)の根拠」のうち(a)または(b)をチェック
なお、希望者を70歳まで継続雇用する場合は、基準の根拠は「65歳超」のうち(a)または(b)をチェックしてください。
- 記入欄⑪
-
継続雇用制度の導入・改定予定の有無を記入します。
導入もしくは改定予定がある場合は、以下の内容も記入してください。
- 予定年月
- 引上げ後の上限年齢
- 導入・改定内容
創業支援等措置の状況
創業支援等措置とは、従業員ではなくフリーランスとして業務委託する仕組みのことです。
2021年の法改正により、企業には努力義務として、次のような制度導入が求められています。
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度
- 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度
- 事業主が自ら実施する社会貢献事業
- 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
出典:高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~|厚生労働省
- 記入欄⑫
-
創業支援等措置の有無について記入します。
措置を実施している場合は、以下の内容も記入してください。
- 実施している措置
- 過半数労働組合等の同意
- 対象
- 記入欄⑬
-
創業支援等措置の導入・改定予定の有無について記入します。
導入もしくは改定予定がある場合は、以下の内容も記入してください。
- 導入・改定予定年月
- 就業支援する上限年齢
- 導入・改定内容
65歳を超えて働ける制度等の状況
記入欄⑭では、65歳を超えて働ける制度等の有無や、規定されている上限年齢について記入します。
ただし、以下のいずれかに該当する場合は記入する必要はありません。
- 記入欄⑧で「定年なし」または対象年齢を70歳以上と記入している
- 記入欄⑩で「年齢の規定がない」または対象年齢を70歳以上と記入している
- 記入欄⑫で「年齢の規定がない」または対象年齢を70歳以上と記入している
常用する労働者数の状況
常用労働者とは、次の要件を満たす労働者です。
- 1年以上継続して雇用している
- 週の所定労働時間が20時間以上
記入欄⑮では、6月1日時点の常用労働者数を記入します。
以下の年齢別に記入して、総数と女性人数も記入してください。
- ~44歳
- 45~49歳
- 50~54歳
- 55~59歳
- 60~64歳
- 65~69歳
- 70歳~
過去1年間の離職者の状況
記入欄⑯では、過去1年間に離職した45歳以上70歳未満の従業員数と、そのうち求職活動支援書を作成した人数を記入します。
総数と女性人数も記入してください。
離職理由に該当するのは、以下の理由です。
- 解雇(労働者の責めに帰すべき理由によるものを除く)
- 継続雇用制度の対象者となる基準(平成24年改正の経過措置に基づくもの)に該当しなかったことによる退職
- 事業主の都合による退職
- 創業支援等措置による契約が事業主都合により終了する場合(労働者の責めに帰すべき理由によるものを除く)
出典:高年齢者雇用状況等報告書の記入方法|職業安定局 高齢者雇用対策課
65歳まで及び65歳を超えて働ける制度の過去1年間の適用状況
記入欄⑰では、65歳まで働ける制度の過去1年間の適用状況を記入します。
記入欄⑱は、65歳を超えて働ける制度の過去1年間の適用状況です。
これらは、記入欄⑧・⑩・⑫で記入した制度の有無や上限年齢に応じて、記入方法を変えていきます。
経過措置に基づく継続雇用の対象者に係る基準の過去1年間の適用状況
2012年に高年齢者雇用安定法が改正され、65歳までの継続雇用制度の導入が義務付けられました。(※1)
ただし、継続雇用の対象者を限定する基準を設けていた(※2)場合は、経過措置として、制度の適用年齢を段階的に引き上げることが認められています。
段階的な引上げ期間 | 適用年齢 |
---|---|
2013年4月1日~2016年3月31日 | 61歳以上の従業員 |
2016年4月1日~2019年3月31日 | 62歳以上の従業員 |
2019年4月1日~2022年3月31日 | 63歳以上の従業員 |
2022年4月1日~2025年3月31日 | 64歳以上の従業員 |
2025年4月1日以降 | 経過措置が終了 |
記載欄⑲では、過去1年間で適用年齢に到達した従業員数を記入します。
内訳として女性人数も記入してください。
(※1)具体的には「65歳までの定年引上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年制の廃止」の3つから、いずれかを実施しなくてはいけません。
(※2)具体的には、2013年3月31日までに限定基準を労使協定に記載している必要があります。
65歳を超えて働ける制度の対象者に係る基準の過去1年間の適用状況
記入欄⑳では、65歳を超えて働ける制度の対象者を限定する基準を導入している場合、基準の適用年齢に到達した従業員数を記入します。
内訳として女性人数も記入してください。
高年齢者雇用等推進者・記入担当者
最後の欄には、高年齢者雇用等推進者と、報告書の記入担当者を記入します。
高年齢者雇用等推進者は、高年齢者の安定した雇用機会を促進するために、中心的な役割を担う人です。
まとめ|ロクイチ報告は雇用状況を見直すために必要な制度
ロクイチ報告は、事業主が毎年6月1日時点での、高年齢者および障害者の雇用状況を報告する制度です。
国が必要な雇用方針を講じるための制度ですが、企業にとっても自社の雇用状況を改めて把握できる貴重な機会となります。
誤りがないように報告書を作成して、雇用体制を見直すために活用してください。