「継続雇用制度ってなに?」
「制度の対象者にはパートも含まれる?」
「制度を導入するメリットやデメリットを知りたい」
「制度を導入するときの注意点や流れを知って、導入時の参考にしたい」
人事労務担当者の方で、このような悩みを抱えていませんか?
2025年4月までに、企業は「65歳までの継続雇用制度導入」「65歳までの定年引き上げ」「定年制の廃止」のいずれかを行う必要があります。
その取り組みの1つである継続雇用制度を導入しようか検討して、詳しく知りたい担当者の方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、継続雇用制度について次の内容を解説します。
- 継続雇用制度とは
- 対象者
- メリットとデメリット
- 導入する際のポイント
- 導入~継続雇用するまでの流れ
- 導入で受け取れる助成金
ぜひ最後まで読んで、取り組みを選ぶときの参考にしてください。
継続雇用制度とは?2つの種類を解説
継続雇用制度は、従業員が定年を迎えた後も、希望すれば引き続き働くことができる制度です。
この制度には、再雇用制度と勤務延長制度の2種類があります。
①再雇用制度
再雇用制度は、定年退職した従業員を、新しい契約で再雇用する制度です。
それまでの役職はなくなり、契約社員や嘱託社員といった新しい形態で働くので、勤務時間や日数等の労働条件は変更されます。
なお、従業員は一度定年を迎えているため、退職金を支払う必要があります。
②勤務延長制度
勤務延長制度は、従業員が定年を迎えても雇用関係が継続される制度です。
役職、賃金、仕事内容はほとんど変わらず、勤務期間のみが延長されます。
退職金は、延長期間終了後に支払います。
継続雇用制度の対象者
継続雇用制度の対象者は、65歳までの勤務を希望するすべての労働者です。
過去には、労使協定によって対象者を限定することが可能でした。
しかし、2025年以降は、65歳まで継続雇用を希望する労働者について、希望者全員継続雇用の義務が生じます。
継続雇用制度を導入する4つのメリット
継続雇用制度を導入した場合、企業には次のメリットが期待できます。
- 人手不足を解消できる
- 各種コストを削減できる
- 顧客との繋がりを維持できる
- 助成金を受け取れる
ひとつずつ解説していきます。
人手不足を解消できる
少子化の影響で、若い人材を確保することが難しくなっていますが、その一方で高年齢労働者は増加しています。
そのため、継続雇用制度を利用して高年齢者を再雇用することで、少なくとも短期的には人手不足の問題を解消できます。
各種コストを削減できる
定年を迎えた従業員を継続雇用することで、新しい採用にかかるコストを削減できます。
こういった従業員は既に必要なスキルと経験を持っているため、求人広告の費用やトレーニングにかかる時間等はかかりません。
顧客との繋がりを維持できる
新しい担当者への移行によって、顧客満足度の低下や契約解消に繋がる可能性があります。
しかし、定年を迎えた営業担当者を再雇用することで、顧客との関係を維持でき、契約解消等のリスクを回避できます。
助成金を受け取れる
継続雇用制度を導入することで、企業は政府から助成金や給付金を受けられる可能性があります。
政府が提供している助成金は、次の通りです。
- 65歳超雇用推進助成金
- 特定求職者雇用開発助成金
これらの助成金については、後ほど詳しく解説します。
継続雇用制度を導入する2つのデメリット
継続雇用制度を導入すると数々のメリットが期待できますが、一方で次のデメリットも想定されます。
- 若い世代が育たない
- 希望者は全員再雇用しなくてはいけない
それぞれ解説していきます。
若い世代が育たない
高年齢者を継続雇用することで、若い世代が育たないという問題が発生することがあります。
経験豊富な高年齢者が職場に留まることで、若手社員の成長機会や、昇進のチャンスが限られるためです。
また、これにより若手社員の間での不満が増え、職場の雰囲気が悪化し、結果的には離職率の増加につながる恐れもあります。
希望者は全員再雇用しなくてはいけない
継続雇用制度には「希望者は全員再雇用する」というルールがあります。
このルールにより、たとえ問題のある従業員であっても、その人が再雇用を希望する場合、企業側は彼らを再雇用しなければいけません。
継続雇用制度を導入するときの3つのポイント
継続雇用制度を導入するときは、次のポイントに留意してください。
- 賃金を見直す
- 労働条件を見直す
- モチベーション維持できる労働環境にする
ひとつずつ解説していきます。
①賃金を見直す
継続雇用制度のうち、多くの場合は従業員の雇用形態が変更されます。
これに伴い、新しい労働条件に基づいた、適切な賃金設定を行う必要があります。
ただし、大幅に賃金を下げることは、法律に違反する可能性が高いです。
「同一労働同一賃金」の原則に従い、公正かつ適正な賃金設定を行い、しっかりと従業員の同意を得ましょう。
②労働条件を見直す
高年齢者の体力や健康状態を考慮すると、定年前と同じ労働条件での継続は、あまり現実的ではありません。
従業員の希望に応じて、フレックスタイムや隔日勤務、短時間勤務といった柔軟な勤務形態を導入しましょう。
これにより、高年齢者は健康を維持しながら、無理なく働き続けることができます。
労働条件の変更がある場合は、特に労働契約書、労働条件通知書をしっかりと作成しましょう。
③モチベーション維持できる労働環境にする
継続雇用制度の目的は、高年齢者の能力を発揮し、意欲的に働けるようにすることです。
そのため、高年齢者がモチベーション維持できる労働環境を整備することが重要です。
例えば、以下のような案があります。
- 若手社員の育成を任せる
- 経験やスキルを活かせる専門職制度を設ける
- 高年齢者のニーズに合わせた福利厚生プランを提供する
【4ステップ】継続雇用制度の導入~継続雇用の流れ
ここからは、企業が継続雇用制度を導入し、実際に従業員を継続雇用するまでの流れを解説していきます。
継続雇用制度を導入する際、まずは就業規則の変更と労働基準監督署への届出が必要です。
就業規則には、定年年齢の引き上げや継続雇用制度の詳細について記載します。
変更したら、必要な書類を準備し、管轄の労働基準監督署に提出してください。
書類は、以下のものを準備します。
- 変更した就業規則
- 就業規則(変更)届
- 意見書
なお、届出が終わったら、変更した就業規則を全従業員に周知する必要があります。
就業規則の変更手続きについては、こちらの記事をご覧ください。
続いて、対象者に継続雇用を希望するか意思確認を行います。
対象者とのトラブルを避けるために、口頭ではなく書面で通知・意思確認を行うことが重要です。
希望する場合は「継続雇用に関する希望申出書」を、希望しない場合は「再雇用辞退申出書」を提出してもらってください。
なお、継続雇用を希望しない従業員には、従来の定年退職の手続きを行います。
継続雇用を希望する従業員とは、個別面談を通じて雇用条件を確認し合います。
確認する雇用条件は、主に次の内容です。
- 賃金
- 雇用期間
- 更新の有無
- 職位
- 仕事内容
- 勤務時間 等
雇用条件に変更がある場合、以前の部下が上司になることや、今まで取り組んできた企画から外れることがあります。
不満やモチベーションの低下を招く恐れがあるので、事前に十分な説明と理解を求めることが大切です。
雇用条件の合意後は、労働契約書を交付して雇用契約の正式な手続きを行います。
再雇用制度の場合、従業員の給与が大幅に減額した際には、社会保険料の変更手続きも必要です。
また、同制度は定年退職をしてから再契約という形になるので、退職金の支払い等の準備も進める必要があります。
継続雇用制度の導入で受け取れる2つの助成金
継続雇用制度を導入することで、企業は次の助成金を申請できます。
- 65歳超雇用推進助成金
- 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
それぞれ解説していきます。
①65歳超雇用推進助成金
65歳超雇用推進助成金は、65歳以上の高年齢者を継続雇用する企業を対象にした助成金です。
この助成金には3つのコースがあります。
65歳超継続雇用促進コース
65歳以上の従業員が希望すれば、引き続き働くことができる制度を導入した企業を対象にしたコースです。
具体的には、次のいずれかを実施した企業が助成を受けられます。
- 65歳以上への定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入
- 他社による継続雇用制度の導入
高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
高年齢者のために雇用管理制度を整備した企業を対象にしたコースです。
具体的には、次の措置を実施した企業が助成を受けられます。
- 高年齢者の職業能力を評価する仕組みと賃金・人事処遇制度の導入または改善
- 高年齢者の希望に応じた短時間勤務制度や隔日勤務制度等の導入または改善
- 高年齢者の負担を軽減するための在宅勤務制度の導入または改善
- 高年齢者が意欲と能力を発揮して働けるために必要な知識を付与するための研修制度の導入又は改善
- 専門職制度等、高年齢者に適切な役割を付与する制度の導入または改善
- 法定外の健康管理制度(人間ドック、生活習慣病予防検診)の導入 等
高年齢者無期雇用転換コース
50歳以上で定年に達していない有期雇用労働者を、無期雇用に転換させた企業が助成を受けられるコースです。
②特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
この助成金は、ハローワーク等を通じて高年齢者や障害者を採用し、継続雇用(雇用保険の一般被保険者として雇用)する企業を対象にした助成金です。
ただし、一時的な雇用ではなく安定した長期雇用が条件となります。
なお、特定求職者雇用開発助成金のうちの「生涯現役コース」は2023年3月に廃止されました。
まとめ|継続雇用制度を活用して高年齢者の雇用機会を確保しよう
今回は、継続雇用制度について解説しました。
継続雇用制度は、2013年の法改正によって義務付けられた取り組みです。
しかし「定年引き上げ」や「定年制の廃止」を選ぶことも可能なので、どの取り組みが企業に合っているのか、よく検討して導入しましょう。