「新入社員の入社手続きを担当することになったから、具体的な手続きを知りたい」
「入社手続きに必要な書類を確認したい」
「事前に起こりやすいトラブルを知っておいて、ミスを防ぎたい」
人事労務担当者の方で、このような悩みを抱えていませんか?
新入社員を受け入れるために、会社側は入社までに様々な手続きや準備を行う必要があります。
しかし、手続きがスムーズに行えない、何を準備すべきか分からないと、戸惑っている担当者の方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は次の内容を解説します。
- 入社前に内定者に交付する書類
- 内定者に準備してもらう書類
- 会社側が準備しておくもの
- 会社側が行う行政手続き
- よくあるトラブルと対処法
この記事を読めば、入社手続きの流れを理解できるので、ぜひ最後までご覧ください。
【入社前】会社側が内定者に交付する4つの書類
新入社員が入社する前に、会社側は以下の書類を交付してください。
- 採用通知書
- 入社承諾書
- 労働条件通知書
- 雇用契約書
ひとつずつ解説していきます。
①採用通知書
採用通知書(内定通知書)は、応募者を採用したことを公式に伝える書類です。
作成する際は、一般的に次の項目を記載します。
- 日付
- 内定者の氏名
- 社名、代表取締役の氏名
- 採用試験への応募のお礼
- 採用決定のお知らせ
- 提出書類の内容
- 提出期限
- 提出宛先
- 入社日(もし未定の場合は、後日改めて通知することを明記します)
- 人事担当者の氏名、連絡先
法的に採用通知書を交付する義務はありません。
しかし、一度交付した後に採用を取り消す行為は違法となる可能性があるので、取り扱いには注意してください。
②入社承諾書
入社承諾書(入社誓約書)は、採用通知書に対する内定者の返答として使われる書類です。
こちらも交付に法律上の義務はありませんが、入社の意思を明確にし、内定者との誤解やトラブルを防ぐために有効となります。
交付する際は、返送用の封筒も同封しましょう。
③労働条件通知書
労働条件通知書は、従業員に明示すべき労働条件を記載した書類です。
労働基準法第15条に基づき、会社は従業員を雇う際には、労働条件を書面で明示することが義務付けられています。
作成する際には、次の事項を必ず記載してください。
- 労働契約期間、契約更新の基準
- 就業場所
- 業務内容
- 始業時刻、終業時刻
- 所定時間外労働の有無
- 休日や休暇および休憩時間
- 就業時転換(労働者を二組以上に分けて就業させる場合)
- 賃金
- 退職(解雇も含む)
これらの記載すべき事項を「絶対的明示事項」といいます。
労働条件通知書の作成について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
④雇用契約書
雇用契約書は、会社と従業員が合意した労働条件を記載した書類です。
一般的に、双方の署名・押印が必要になります。
法律で交付は義務付けられていませんが、労働条件に関する誤解やトラブルを防ぐのに役立ちます。
雇用契約書と労働条件通知書を兼ねた「労働条件通知書兼雇用契約書」を交付するケースが多いです。
【入社前】内定者に準備してもらう7つの書類
先ほど触れたように、内定者に交付する「内定通知書」には、入社までに提出してもらう書類についても記載します。
具体的に、内定者に提出してもらう書類は以下の通りです。
- 年金手帳(基礎年金番号通知書)
- マイナンバー
- 給与振込先届出書
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 健康保険被扶養者(異動)届
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
ひとつずつ解説していきます。
年金手帳(基礎年金番号通知書)
これらは、基礎年金番号を確認するための書類です。
基礎年金番号は、厚生年金保険の加入手続きの際に利用されます。
マイナンバー
年末調整や雇用保険、社会保険の加入手続きで使用します。
利用目的を記載した書類を配布する等、必ず内定者に利用目的を通知または公表しましょう。
給与振込先届出書
給与振込先届出書は、内定者の給与振込に使用する口座を確認するために必要です。
会社によっては、通帳コピーも提出してもらうことがあります。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
扶養家族の有無等を確認し、それに基づいて所得税を計算するために使用します。
内定者に扶養家族がいなくても提出が必要です。
健康保険被扶養者(異動)届
内定者に配偶者や子ども等、扶養家族がいる場合、被扶養者を新しい健康保険に加入させるために必要です。
雇用保険被保険者証 ※転職者のみ
雇用保険被保険者証は、内定者が転職者の場合のみ提出を求めてください。
雇用保険に関する手続きで必要になります。
源泉徴収票 ※転職者のみ
源泉徴収票も、内定者が転職者の場合のみ提出してもらってください。
所得税の年末調整で必要になります。
ただし、年明けに入社する等、当年に前職の給与の支給がない場合は必要ありません。
【入社前】会社側が準備するもの
書類を内定者に交付するのと並行して、以下のものを揃えておきましょう。
- 法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)
- 貸出物、備品
それぞれ解説していきます。
①法定三帳簿
法定三帳簿とは、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿のことです。
労働基準法により、作成と保存が義務付けられており、雇用形態に関係なく、すべての従業員について作成が必要です。
後ほど解説しますが、雇用保険の加入手続きで必要になるので準備しておきましょう。
労働者名簿
労働者名簿は、従業員の基本的な情報を記載する書類です。
以下の情報を記載し、退職、解雇、死亡等の日から起算して、5年間保存する必要があります。
- 氏名
- 性別
- 生年月日
- 入社後の人事異動等の履歴
- 住所
- 従事する業務の種類
- 入社年月日
- 退職年月日と退職事由(解雇の場合はその理由)
- 死亡年月日と死亡事由
賃金台帳
賃金台帳は、従業員に支払われた給与について記録する書類です。
労働者名簿と同様に、5年間の保存が義務付けられています。
賃金台帳には、以下の項目を必ず記載しましょう。
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 時間外労働時間数
- 休日労働時間数
- 深夜労働時間数
- 基本給・手当の種類と金額
- 控除項目と金額
出勤簿
出勤簿は、従業員の勤務状況を記録するための書類です。
こちらも5年間保存する必要があります。
出勤簿で必ず記載しなければいけない項目は、以下の通りです。
- 氏名
- 出勤日、労働日数
- 始業、終業時刻、休憩時間、日別の労働時間数
- 時間外労働を行った日付、時刻、時間数
- 休日労働を行った日付、時刻、時間数
- 深夜労働を行った日付、時刻、時間数
②貸出物、備品
新入社員がスムーズに業務を始められるように、必要な貸出物や備品を事前に準備しておきましょう。
以下のリストを参考にしてください。
- デスク
- パソコン
- 事務用品
- 社員証
- 名刺
- 制服(必要な場合)
- メールアドレス
- 社内システムアカウント
【入社後】会社側が行う4つの行政手続き
新入社員が入社した後、会社は次の行政手続きを行う必要があります。
- 社会保険
- 雇用保険
- 所得税
- 住民税
ひとつずつ解説していきます。
社会保険の加入手続き
1つ目は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入手続きです。
- 提出書類
-
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
- 添付書類
-
- 被扶養者異動届(被扶養者がいる場合)
- 国民年金第3号被保険者関係届(配偶者がいる場合)
- 提出期限
-
入社日から5日以内
- 提出先
-
所轄の年金事務所もしくは健康保険組合
- 提出方法
-
- 窓口持参
- 郵送
- 電子申請
雇用保険の加入手続き
2つ目は、雇用保険の加入手続きです。
- 提出書類
-
雇用保険被保険者資格取得届
- 添付書類
-
- 賃金台帳
- 労働者名簿
- 出勤簿
- 提出期限
-
入社日の属する月の翌月10日まで
- 提出先
-
所轄のハローワーク
- 提出方法
-
- 窓口持参
- 郵送
- 電子申請
所得税の手続き
3つ目は所得税の手続きです。
源泉徴収する所得税額を計算するために、源泉徴収簿を作成する必要があります。
作成には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が必要なので従業員に提出してもらってください。
転職者で当年に前職の給与の支給がある場合は、前職の源泉徴収票も必要です。
住民税の手続き
最後は、住民税の手続きです。
住民税はいずれかの方法で納付します。
普通徴収:従業員が自身で支払い処理を行って納税する
特別徴収:会社が毎月の給与から差し引いて代理で納税する
新入社員が特別徴収を希望する場合は、会社側で手続きを行う必要があります。
- 提出書類
-
特別徴収にかかる給与所得者異動届出書
- 提出期限
-
転職した月の翌月10日
- 提出先
-
納付先の市町村区
- 提出方法
-
- 窓口持参
- 郵送
- 電子申請
入社手続きでよくあるトラブルと対処法
ここからは、入社手続きで起こりやすいトラブルと、その対処法を紹介していきます。
①基礎年金番号が分からない
基礎年金番号は、厚生年金保険に加入する際の手続きで使用します。
年金手帳等を紛失して番号が分からない場合は、マイナンバーによる手続きが可能です。
②雇用保険被保険者番号が分からない
雇用保険の加入手続きには、新入社員の雇用保険被保険者番号が必須です。
雇用保険被保険者証の紛失等で番号が分からない場合は、次の方法で照会できます。
- 前職の会社に問い合わせる
- 前職の会社名、在籍期間を資格取得届の備考欄に記載する
2で「雇用保険被保険者証再交付申請書」を一緒に提出すれば、雇用保険被保険者証も即日交付されます。
③保険手続きが間に合わなかった
必要書類が間に合わない等の理由で、期限内に保険手続きができないことがあります。
この場合、遅延の度合いによっては追加書類を求められることがあります。
そのため、できる限り早く対応して手続きを完了することが重要です。
まとめ|会社側の入社手続きを万全にしよう
今回は、会社側の入社手続きについて解説しました。
手続きが多くて、初めて担当される方は戸惑うかもしれません。
少しでもミスなくスムーズに行えるように、早めに手続きの準備を整えておきましょう。