「うちの会社に、こんな社員がいる…」
そう頭を悩ませている人事担当者や管理職の方はいませんか?
問題社員への対応を誤ると、職場環境の悪化や企業の損失に繋がりかねません。
本記事では、問題社員の定義から具体的な対応策、放置した場合のリスクまで、企業が取るべき対策を分かりやすく解説します。
適切な対応を理解し、健全な職場環境を守りましょう。
問題社員(モンスター社員)とは
まずは、問題社員(別名:モンスター社員)とは、どういう社員なのかを解説します。
問題社員の定義と特徴
「問題社員」とは、企業の就業規則や社会通念上、明らかに逸脱した行動を繰り返し行い、周囲に悪影響を及ぼす社員のことを指します。
明確な法的定義はありませんが、一般的には以下のような特徴が見られます。
- 業務命令への反発や指示無視を繰り返す
- 遅刻や欠勤が多い
- ハラスメントや暴言など、周囲に迷惑をかける
- 仕事に対する責任感や意欲が低い
- 会社や上司に対する不満や批判を繰り返し主張する
これらの行動が常態化し、企業活動や職場環境に悪影響を及ぼしている場合、「問題社員」と判断される可能性が高いと言えるでしょう。
一般的な問題行動の例
問題社員に見られる行動は多岐にわたりますが、代表的な例として、下記のような行動が挙げられます。
カテゴリ | 具体的な行動例 |
---|---|
業務遂行態度 | ・指示された業務を期日までに終わらせない、または全く行わない ・仕事のミスが多く、何度も注意を受けても改善しない ・無断で遅刻や早退、欠勤を繰り返す ・業務中に私語が多く、周囲の業務を妨害する ・インターネットやスマホを業務時間中に過度に利用する |
コミュニケーション | ・上司や同僚に対して、暴言や脅迫、侮辱などのハラスメント行為を行う ・指示に対して反抗的な態度を取り、指示に従わない ・自分の非を認めず、責任転嫁をする ・陰口や噂話など、職場の人間関係を悪化させる行為をする |
コンプライアンス違反 | ・会社の金銭や備品を私的に使用したり、横領する ・顧客情報や社外秘情報を漏洩する ・セクハラやパワハラなど、法令に違反する行為を行う ・就業時間中に飲酒する、または酒気を帯びた状態で出勤する |
上記はあくまで一例であり、問題社員の行動は上記以外にも多岐にわたります。
重要なのは、これらの行動が、企業や他の社員にどのような影響を与えているかを、客観的に判断することです
問題社員対応の基本的なステップ
問題社員への対応は、早期発見・早期対応が重要です。問題行動を見過ごしたり、適切な対応を怠ると、職場環境の悪化や企業の業績悪化に繋がる可能性もあります。
問題社員への対応に頭を悩ませている企業は、下記のステップを参考にして対応してください。
問題社員への対応は、問題行動に気づいた段階で、できるだけ早く行うことが重要です。
問題行動を放置すると、社員の意識が改善せず、周囲に悪影響が及ぶ可能性があります。
早急な対応は、事態の悪化を防ぎ、早期解決を図るために不可欠です。
指導は、具体的にどのような言動が問題だったのかを明確に伝え、改善を促すようにします。
頭ごなしに叱責するのではなく、冷静に事実を伝え、改善に向けた対話を心がけましょう。
問題社員との面談は、問題の背景や原因を把握し、改善策を検討するために有効な手段です。
面談では、問題行動に関する事実関係を確認するだけでなく、社員の言い分にも耳を傾け、状況を多角的に理解することが大切です。
面談を通して、問題の根本原因が、業務内容や職場環境にあるのか、あるいは社員個人の能力や意識に起因するのかを見極めます。
その上で、具体的な改善策を検討し、社員と合意形成を図りながら対応を進めていきます。
面談の内容は記録に残し、今後の指導や対応の参考資料としましょう。
問題社員への対応として、配置転換を検討する場合があります。
配置転換は、問題の発生源となっている人間関係や環境から社員を離し、新たな環境で心機一転を図ることで、問題行動の改善を促すことを目的とします。
配置転換を行う際には、社員の適性や能力を考慮し、新たな部署でも能力を発揮できるような配慮が必要です。
また、配置転換によって、新たな問題が発生する可能性もあるため、事前の環境整備やフォロー体制の構築が重要となります。
口頭での指導や面談で改善が見られない場合、書面による注意処分を検討します。
書面での注意処分は、問題の重大性を認識させ、社員の意識改革を促す効果があります。
注意処分を行う際には、就業規則に基づいた適切な手続きを踏んでください。
注意書には、問題とされた具体的な行動、改善を求める内容、改善が見られない場合の対応などを明記します。
また、注意書は社員に交付するだけでなく、会社側でも保管し、今後の対応の記録として残しておくことが重要です。
注意処分は、懲戒処分とは異なり、社員の身分や待遇に影響を与えるものではありませんが、厳粛な対応であることを理解させましょう。
様々な対応策を講じても改善が見られない場合、最終手段として退職勧奨を検討します。
退職勧奨は、会社都合ではなく、あくまでも社員の意思に基づく退職を促すものです。
そのため、強引な退職強要は違法となるため、注意が必要です。
退職勧奨を行う場合には、労働基準法などの法令を遵守し、適切な手続きを踏む必要があります。
弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談し、法的リスクを回避することも重要です。
問題社員を対応するときのポイント
問題社員に対応するときは、以下のポイントを踏まえて行いましょう。
客観的な証拠を残す
問題社員への対応をスムーズに進めるためには、問題行動の内容や日時、対応内容などを記録しておくことが重要です。
後々のトラブルを避けるためにも、客観的な証拠を残しておくようにしましょう。
具体的な記録方法としては、以下の方法が挙げられます。
- 日報や業務記録に記載する
- 面談の内容を議事録として残す
- メールの内容を保存する
特に、問題社員との面談は、重要な証拠となるため、必ず議事録を作成しましょう。議事録には、以下の項目を記載します。
項目 | 内容 |
---|---|
面談日時 | 年月日を記載する |
面談場所 | 会議室名などを記載する |
参加者 | 面談者、同席者、問題社員の名前と所属を記載する |
面談内容 | 問題行動の内容、改善を求めた点、問題社員の発言などを記載する |
上記以外にも、必要に応じて適宜項目を追加しましょう。
また、議事録は、参加者全員が内容を確認し、署名または記名押印を行うようにします。
問題社員が署名や記名押印を拒否した場合には、その旨を記載し、可能な限り録音などの証拠を残しておきましょう。
なお、録音や撮影は、問題社員のプライバシーを侵害する可能性があるため、慎重に行う必要があります。
事前に会社としての方針やルールを定めておくことが重要です。
また、録音や撮影を行う場合には、必ず問題社員に事前にその旨を伝え、同意を得るようにしましょう。
同意を得ずに録音や撮影を行った場合、違法となる可能性があります。
就業規則の確認と整備
問題社員への対応を行う前に、まずは就業規則を確認しましょう。
就業規則に、問題行動に対する懲戒処分などが定められている場合があります。
就業規則の内容が、現在の法律や社会通念に合致しているかどうかも確認し、必要があれば見直しを検討しましょう。
就業規則を整備することで、問題社員への対応をスムーズに行うことができます。
また、懲戒処分を行う場合にも、客観的な判断基準を示すことが可能になります。
就業規則は、会社と従業員双方にとって重要なものです。
定期的な見直しを行い、常に最新の状態に保つように心がけましょう。
就業規則の作成や変更については、専門家のアドバイスを受けることが望ましいです。
公平性の担保
問題社員への対応を行う際には、他の社員との公平性を意識することが重要です。
特定の社員だけを優遇したり、逆に冷遇したりすることは、職場環境の悪化につながる可能性があります。
問題社員だからといって感情的に対応するのではなく、常に冷静かつ公平な態度で接するように心がけましょう。
また、問題社員への対応について、他の社員に不公平な印象を与えないように、情報管理にも注意が必要です。
問題社員に関する情報は、必要最低限の人員で共有し、噂話や憶測が広がらないように注意しましょう。
これらを心がけることで、適切な対応を行うことで、問題の長期化や深刻化を防ぎ、職場環境の改善につなげることが期待できます。
問題社員を放置した場合のリスク
問題社員を放置した場合、以下のリスクが考えられます。
問題社員に同調する社員が増える
問題社員を放置することで、周囲の社員に悪影響が及ぶ可能性があります。
問題社員の言動を容認していると捉えられ、他の社員も同様の行動をとるようになります。
また、問題社員の言動が横行することで、職場の規律が乱れ、組織全体の士気が低下する恐れもあるでしょう。
優秀な社員が退職してしまう
問題社員の言動に耐えかねて、優秀な社員が退職してしまうケースは少なくありません。
特に、将来性のある若手社員ほど、職場環境の悪化に敏感に反応し、より良い環境を求めて転職してしまう傾向があります。
優秀な人材の流出は、企業にとって大きな損失です。
長年培ってきたノウハウやスキルが失われるだけでなく、新たな人材の採用・育成にも時間とコストがかかります。
企業イメージ・業績が悪化する
問題社員の存在は、顧客や取引先に悪印象を与え、企業イメージを損なう可能性があります。
一度失った信頼を取り戻すことは容易ではなく、顧客離れや取引停止につながる可能性も否定できません。
また、問題社員による不正行為やミスは、企業に直接的な損害を与える可能性があります。
金銭的な損失だけでなく、訴訟リスクや社会的制裁を受ける可能性も、十分考慮しなければなりません。
まとめ
問題社員への対応は、企業にとって非常にデリケートな問題です。
放置しておくと、社内の士気低下や優秀な人材の流出、顧客からの信頼失墜など、企業活動に深刻な影響を与える可能性があります。
重要なのは、問題行動が発生した段階で迅速かつ適切な対応を行うことです。
そのためにも、日頃から問題社員の特徴や対応策について理解を深めておくことが大切です。
早めの対応が、企業の健全な発展を守ることにもつながります。