「代替休暇ってどんな制度?」
「代休や振替休日とどう違うの?」
「どれだけの休みを従業員に与えればいいんだろう?」
経営者の方で、こんな悩みを抱えていませんか?
代替休暇(だいたいきゅうか)は簡単に言うと、残業代を払う代わりに休暇を与える制度です。
従業員の健康が守られて人件費削減にもなる制度ですが、概要が分かっていないと会社に取り入れるのを躊躇ってしまいますよね。
そこで、この記事では以下の内容を説明します。
- 代替休暇とは
- 他の制度との違い
- 休暇日数(時間)の計算方法
- 制度を導入するための手続き
「代替休暇が気になっているけど、導入すべきか迷っている」という経営者の方は、ぜひ記事をご覧になって参考にしてください。
代替休暇とは50%以上の割増賃金の代わりに与える休暇制度
法律では1日8時間かつ週40時間を、法定労働時間(労働時間の上限)と定めています。
法定労働時間を超える労働には、割増率25%以上の割増賃金を支払わなくてはいけません。
そして時間外労働が月60時間を超えた場合、割増率は50%以上に引き上げられます。
この引き上げは中小企業は猶予されていましたが、令和5年4月1日から適用されることになりました。
代替休暇は、その引き上げ分の賃金の代わりに、従業員に有給の休暇を与える制度です。
企業は残業代の支払いを抑えられ、従業員は心身をリフレッシュできるというメリットを得られます。
25%以上の割増賃金の支払い義務はなくならない
休暇に代替できるのは、時間外労働が月60時間を超えた場合の引上げ分のみです。
代替休暇を付与しても、25%以上の割増賃金は支払わなくてはいけません。
代替休暇の取得は従業員の自由
代替休暇を取るか取らないかは、従業員の自由です。
従業員が「代替休暇は取りません」と決めたら、会社は引上げ分の割増賃金を支払います。
また従業員は代替休暇の一部を取得して、残りは割増賃金として受け取ることが可能になっています。
代替休暇と3つの休暇制度の違いを説明(代休・振替休日・有給休暇)
代替休暇の他にも、代休や振替休日などがあります。
それぞれ代替休暇とどんな違いがあるのでしょうか。
代休とは
代休は休日労働を行った後に、他の勤務日を休みにする制度です。
勤務日を休みにしても、法定休日に働いたことには変わりないので、休日労働手当として35%以上の割増賃金が発生します。
振替休日とは
振替休日は、あらかじめ勤務日と休日を入れ替える制度です。
入れ替え後の勤務日は法定休日ではなくなるので、休日労働の割増賃金の支払いは必要ありません。
有給休暇とは
有給休暇は、給料が支払われる休暇制度です。
休暇を取得しても給料は支払われますが、割増賃金は発生しません。
同じ「休暇」というカテゴリーですが、代替休暇はどの休暇とも異なります。
制度 | 概要 | 割増賃金の発生 |
---|---|---|
代替休暇 | 月60時間超の時間外労働に対する、25%以上から50%以上に引上げられた割増賃金の代わりに、休みを付与する | 〇 |
代休 | 休日労働の後に他の勤務日を休みとして付与する | 〇 |
振替休日 | あらかじめ勤務日と休日を入れ替える | × |
有給休暇 | 給料が支払われる休暇 | × |
従業員に与えられる代替休暇日数(時間数)の求め方
ここでは、従業員に与えられる代替休暇の計算方法を紹介します。
代替休暇日数(時間数)の求め方
代替休暇の時間数は、以下の計算式で算出します。
(1ヶ月の時間外労働時間数-60)×換算率
換算率は、以下の計算式で求めます。
月60時間以上の時間外労働に対する割増率-通常の時間外労働に対する割増率
付与する代替休暇の単位は1日か半日
代替休暇の単位は、下記のうちどれかになります。
- 1日
- 半日
- 1日または半日
まとまった単位で付与する理由は、従業員の休息時間が確保できるからです。
これにより上記の計算方法で算出した時間数を、いずれかの単位に換算します。
時間数に端数がある場合は、他の有給休暇と合わせて付与することもできます。
ただし、あらかじめ労使協定でその旨を定めておくことが必要です。
代替休暇日数の計算例
それでは、実際に具体例を使って計算していきましょう。
下記の例で、代替休暇の時間数を求めます。
代替休暇を付与する単位 | 1日または半日 |
通常の割増賃金率 | 25% |
月60時間以上の割増賃金率 | 50% |
所定労働時間 | 8時間 |
ある月の時間外労働 | 80時間 |
①換算率を求める
月60時間以上の時間外労働の割増賃金率- 通常の時間外労働の割増賃金率
計算式:50%-25%=25%
②代替休暇の時間数を計算する
(1ヶ月の時間外労働時間数-60)×換算率
計算式:(80-60)×25%=5
代替休暇の時間数は5時間だと分かりました。
しかし時間数は1日の所定労働時間に達していないため、1日単位では取得できません。
それにより、従業員が休めるのは半日単位になります。
ただし、端数として出てきた時間数に他の有給休暇と合わせて取得することを、労使協定で定めている場合はこの限りではありません。
【代替休暇の導入に必要】労使協定で定める4つの事項
代替休暇を導入するには、労使協定を結ぶ必要があります。
労使協定には、次の4つの事項を定めます。
- 代替休暇の時間数の具体的な算定方法
- 代替休暇の単位
- 代替休暇を与えることができる期間
- 代替休暇の取得日の決め方・割増賃金の支払日
それぞれどのように規定するか、説明していきます。
代替休暇の計算方法
労使協定には、先ほど説明した代替休暇の計算式を記入します。
なお、換算率や割増賃金率は会社によって異なるので、それぞれ何%なのかも明記しましょう。
代替休暇の単位
先ほど説明したように、代替休暇の単位は次のいずれかになります。
- 1日
- 半日
- 1日または半日
どれを単位として採用するのかを、労使協定に記載します。
半日については、所定労働時間の1/2にするのではなく、次の時間数を「半日」に設定することも可能です。
- 午前(9:00~12:30)の3時間半
- 午後(13:00~17:30)の4時間半
代替休暇を与えることができる期間
いつまで代替休暇を与えられるのか、その期間を労使協定に定めます。
法律では「法定時間外労働が月60時間を超えた月の末日の翌日から2ヶ月以内」と定められています。
長時間労働を行った従業員に、なるべく早めの休息を確保させるためです。
なお、定めた期間内に休暇が取得されなくても、割増賃金の支払い義務がなくなる訳ではないので注意してください。
代替休暇の意向確認の手続き・割増賃金の支払日
代替休暇の取得は従業員の自由です。
けれど早めに従業員に意向を確認しないと、割増賃金の支払額が確定できませんよね。
給料を滞りなく支払うために、従業員の意向の確認方法や、取得日の決定方法についても決めておきましょう。
割増賃金の支払日についても同様です。
代替休暇を付与する場合は通常の割増賃金を、付与しない場合は代替休暇分を含めた総額の割増賃金を支給します。
それぞれどのタイミングで支払うのか決めておくと、従業員との賃金トラブル防止に繋がります。
忘れずに規定してください。
代替休暇の導入に必要な2つの手続き
代替休暇の導入には、次の2つの手続きが必要です。
- 労使協定の締結
- 就業規則への記載、変更の届出
それぞれどのように手続きをするのか、説明していきます。
手続き①労使協定の締結
1つ目の手続きが、労使協定の締結です。
労使協定に先ほど紹介した事項を定めて、従業員の代表者と締結します。
具体的には、次の手順で手続きを行ってください。
- 労働組合の代表者、もしくは従業員の過半数代表者を選ぶ
- 代表者と労使協定を締結する
- 労使協定の内容を全従業員に周知する
この労使協定は、労働基準監督署への届出は不要です。
手続き②就業規則への記載、変更の届出
2つ目は就業規則への記載です。
取り結んだ労使協定の内容を、就業規則にも記載します。
休暇に関する内容は、就業規則に記載することが義務付けられているからです。
また、常時10人以上の労働者を使用している事業場では、所轄労働基準監督署長に届出をしなくてはいけません。
上記の事業場では就業規則を変更したら届出義務が発生するので、必ず届け出ましょう。
義務を怠った場合、30万円以下の罰金が科せられます。
届出には、次の書類が必要です。
- 従業員から聴取した意見書
- 就業規則変更届
- 変更後の就業規則
就業規則変更届は、厚生労働省のサイトでダウンロードできます。
まとめ|代替休暇の導入に迷ったら飯田橋事務所へ
最後に、この記事のおさらいをしましょう。
- 代替休暇とは
-
50%以上になった割増賃金の代わりに付与する休暇制度
- 制度導入に必要な手続き
-
- 労使協定の締結
- 就業規則への記載、変更の届出
この記事が、代替休暇制度の導入に迷っている方のお力になれば幸いです。
また「代替休暇を取り入れたいけど、他にやることが多くて手が回せない…」という方は、飯田橋事務所にご相談することをオススメします。
労使協定の作成や就業規則の変更など、面倒な業務はすべて当事務所がお引き受けするので、経営者の方は他の業務に専念できます。
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