みなし労働時間制の第3回目は、「企画業務型裁量労働制」について説明します。
企画業務型裁量労働制とは、事業の運営に関する事項について、企画、立案、調査及び分析の業務を行う事務系労働者につき、業務の遂行手段や時間配分を自らの裁量で決定し、使用者が具体的な指示をしない制度です。
企画業務型裁量労働の導入には、労使委員会の設置、労使委員会における裁量労働に関する決議及びその届出が必要で、当該業務、業務に必要な時間等を決議した場合、その業務に従事した労働者は決議で定めた時間労働したものとみなされます。
この制度が、事業場外労働のみなし労働時間制や専門業務型裁量労働制と大きく異なるのは、以上の手続きや就業規則の定めだけでなく、その適用にあたって本人の同意を得なければならないことです。
対象事業場、対象業務、対象者
対象事業場
いかなる事業場においても導入できるということではなく、「対象業務が存在する事業場」のみ実施することができる。本社・本店である事業場のほか、①企業全体の事業運営に大きな影響を及ぼす決定が行なわれる事業場、②本社等の具体的な指示を受けることなく独自に、当該事業場に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社・支店等である事業場。
対象業務
事業運営に関する事項について企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務の性質上、これを適切に遂行するためには、その遂行方法を労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務遂行手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務。
対象者
対象業務を適切に遂行するための知識・経験を有する者(大学卒業後3~5年程度の職務経験)で、業務に常態として従事する者。個別の同意が必要。
導入要件
労使委員会で、次の事項を委員の5分4以上の多数決により決議し、所轄の労働基準監督署に届け出が必要。また、監督署への定期報告も必要。専門業務型裁量労働制に比べ、手続きは猥雑となります。
決議事項
①対象業務の範囲
②対象労働者の範囲
③みなし労働時間数
④対象労働者の労働時間の状況に応じた健康・福祉を確保するための措置とその実施
⑤対象労働者の苦情の処理に関する措置とその実施
⑥労働者の同意、同意しない労働者への不利益取扱いの禁止
⑦その他厚生労働省令で定める事項
定期報告
労使委員会の決議を所轄の労働基準監督署長に届け出るとともに、その後も6ヵ月以内ごとに、対象労働者の労働時間の状況、健康、福祉措置の実施状況を所轄の労働基準監督署長に報告しなければならない。
労使委員会とは?
労使委員会は、労働条件に関する事項を調査審議することを目的とする委員会で、次の要件を充たす必要があります。労使各1名の委員会は認められません。
①委員の半数が、過半数労働組合(無い場合は従業員の過半数代表者)に任期を定めて指名されて
いること
②議事録を作成し、3年間保存すること
③議事録を労働者に周知していること
④労使委員会の招集、定足数、議事その他労使委員会の運営について必要な事項に関する規程が定められていること