緊急事態宣言後のオフィス回帰
緊急事態宣言の最中においては、企業は望む・望まざるに関わらず在宅勤務を余儀なくされました。令和2年5月25日、全国の緊急事態宣言解除とともに、在宅勤務からオフィスへの回帰が徐々に進んでいます。
飲食などの接客を伴う業種、機械を操作する製造業など在宅勤務が難しい業種であればまだわかるのですが、在宅勤務ができる企業の通常勤務復活も少なくありません。
オフィス回帰に至ってしまった原因を探るため、在宅勤務継続のデメリットを整理して考えてみましょう。
在宅勤務継続のデメリット
➀仕事環境が低下する
プリンタやFAXが自宅にない、決裁がもらえない、子供が家にいて集中できない、郵送物を受け取れないなど不便を感じることがあったのではないでしょうか。また、気軽に上司や同僚とコミュニケーションが取れないと感じた方も多いはずです。
いきなり在宅勤務になったことで、電子化が進んでいなかったり、チャットやビデオ会議ツールに慣れていなかったりということが原因だと考えられます。仕事環境については、工夫次第でクリアする問題もいくつもあります。今後も在宅勤務を継続する中で、改善していく必要があるでしょう。
②在宅勤務による評価方法や規程が定まっていない
日本の人事評価制度は、成果だけでなく、プロセスや勤務態度も重視する傾向にあります。在宅勤務の場合、誰が何をしているのかがわからないため、人事評価をしにくいという声が上がっています。在宅勤務が通常となることで、将来的には成果を中心とした人事評価制度へと傾いていくのでないでしょうか。在宅勤務であっても、客観的に人事評価できる目標設定の整備が求められています。
規程についても、強制的に在宅勤務になった企業については、何もないまま導入してしまい、給与に「通信費」の負担を手当として支給するかどうか判断に迷ったというご相談も耳にしています。「光熱費」はどうするのか、「通勤手当」は支給しないのか。この機会に、在宅勤務規程を作成し、あらかじめ規定しておくことをお勧めいたします。
③業績向上に繋がるというエビデンスがない
コロナ渦で売上が減少している企業が多い中、在宅勤務を続けても業績に影響がないというエビデンスがありません。このまま在宅勤務を継続するという判断が、経営リスクなのではないかと考える経営者の方がいるのは当然のことです。
在宅勤務への流れは止められない
上記のようなデメリットから、在宅勤務継続に躊躇している企業もあると考えられます。しかし、労働人口の減少、天災など不測の事態への対応、優秀な人材の確保、コスト削減など、メリットも少なくない在宅勤務への流れを止めることはできないでしょう。そうであるならば、まずは週に1回や2回からでも良いので在宅勤務を継続し、運用方法を試行錯誤していくことが重要です。
そして、在宅勤務でも業績に影響がない、むしろ向上しているというエビデンスや自信が持てた段階で、全面導入に踏み切るのが良いのではないでしょうか。
社労士にできること
在宅勤務推進のため、勤怠管理の方法を決める、規程や人事評価制度の整備を行うなど、社労士がお手伝いできる課題もたくさんあります。活用できる助成金もあるので、人事労務分野であれば、一度ご相談頂けると幸いです。
社会保険労務士 土井牧子