「社員がうつ病になったみたいだけど、どう対応すれば良いのか分からない…」
人事労務担当者の方で、このような悩みを抱えていませんか?
うつ病は、強い憂鬱感や興味の喪失、疲労感などが続き、日常生活や仕事に支障をきたす病気です。
現代社会では誰にでも起こりうる病気です。
しかし、社員がうつ病になった場合、適切な対応をすることで早期回復をサポートし、職場環境を整えることができます。
この記事では、うつ病の社員に対する具体的な対応方法を詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、参考にしていただければ幸いです。
社員がうつ病になったときの対応
まず、社員がうつ病になったときの対応を解説します。
社員にうつ病の兆候が見られたとき、まずは医師の診察を受けさせましょう。
うつ病の兆候には、以下の症状があります。
- 気分が落ち込んでいる
- 以前よりもイライラしている
- 作業効率が低下した
- 集中力が欠けている
これらの症状が続くと、社員の精神的負担が増し、業務に支障をきたす可能性があります。
医師の診断を受けることで、症状の原因が明確になり、適切な治療が開始されるため、社員に上記の症状が見られたときは、医師の診察を勧めてください。
社員が病院に受診した場合、医師の診断書を提出してもらいましょう。
診断書には、下記の内容が明記されています。
- 社員が仕事を続けられるか
- 休職は必要か
- 必要であればどのくらいの期間か
これらの内容を確認することで、会社は適切な対応を取るための重要な情報を得ることができます。
そのため、社員には必ず診断書を提出してもらってください。
社員がうつ病で休職する際には、休職制度や復職の流れを詳しく説明します。
これにより、社員の不安を取り除き、安心して療養に専念できる環境を提供できます。
休職制度の内容は会社によって異なりますが、以下の内容は詳しく説明するように心がけましょう。
- 休職期間
- 休職期間中の給与
- 社会保険料の負担
- 休職期間中の連絡方法
- 経済的な保障制度(傷病手当金、自立支援医療制度など)
- 復職の手続き
上記の情報を文書で提供すると、後々のトラブルを防ぐことができます。
業務の引き継ぎを行う際には、社員の体調を考慮し、無理をさせないようにします。
後任者を早急に決定し、必要最低限の連絡で引き継ぎを行いましょう。
また、本人の許可なしにうつ病の詳細を、後任者や他の社員と共有しないように注意してください。
うつ病は私生活上のストレスだけでなく、職場の環境や過重労働が原因で発症することもあります。
社員がうつ病になった場合、以下の点を確認してください。
- 月45時間・年360時間を超える時間外労働はなかったか
- パワハラやセクハラ、いじめなどがなかったか
- 過度なノルマが課されていなかったか
- 上司からの過度な叱責がなかったか
- 業務上の重大な事故やミスがなかったか
- 昇進や配置転換によるストレスがなかったか
もし、いずれかに該当し、労働環境が不適切であれば、速やかに是正措置を講じることが重要です。
うつ病の社員が「復帰したい」と希望したときの対応
続いて、うつ病の社員が復帰を希望したときの対応について解説します。
うつ病の社員が「復帰したい」と希望したときは、必ず主治医の診断書を提出してもらってください。
主治医の診断書は、社員の症状がどの程度回復しているかを、客観的に把握するための重要な資料です。
しかし、主治医の診断書だけでは、職場の業務を遂行できる状態まで回復しているかどうかを判断するには、不十分なことがあります。
そのため、会社側は職場で必要な業務遂行能力や勤務制度を主治医に共有し、その上で復職の可否を判断してもらうことも重要です。
社員本人は「早く復職したい」と思っているかもしれませんが、その意思が焦りから来ている可能性があります。
本人の状態を正確に把握するためには、主治医の診断書に加えて、日常生活の様子を最もよく知っている家族の意見も重要です。
家族が「まだ無理ではないか」と感じている場合、無理に復職させると、再び病状が悪化するリスクがあります。
また、家族との面談を検討する際は、社員本人の意向を尊重し、無理強いをしないことが大切です。
リハビリ出勤制度とは、社員が本格的に復職する前に、試行的に勤務を行う制度です。
この制度を活用することで、社員は職場復帰に対する不安を軽減し、徐々に業務に慣れることができます。
導入や運用方法は自由に決定できるため、自社に適した形でリハビリ出勤制度を制度化しましょう。
今回は、制度の中から「模擬出勤」「通勤訓練」「試し出勤」の3種類を紹介します。
- 模擬出勤
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デイケアや図書館で勤務時間帯を過ごし、模擬的な軽作業やグループミーティングを行う。
- 通勤訓練
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自宅から職場付近まで通勤し、職場やその付近で一定期間過ごした後に帰宅する。
- 試し出勤
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実際の職場に一定期間出勤し、業務に従事するか、座席で読書などをして過ごす。
復職が決まると、社員は再発の恐れや業務内容、人間関係に対する不安を感じることがあります。
それが過度なストレスとなり、うつ病の再発を引き起こす恐れがあるため、職場全体でのサポートが必要です。
まず、復帰後は時間短縮勤務や業務軽減などの措置を段階的に行い、徐々に通常勤務に戻していきましょう。
また、周囲の同僚にも配慮をお願いし、復職者を自然に迎え入れるようにしてください。
「おはようございます」「また一緒に働けてよかった」という自然な挨拶や声かけが、復職者の安心感を高めます。
心身の状態を確認し、適切なフォローアップを行うために、定期的な面談も欠かせません。
復帰して1年ほどは不安を抱えていることが多いため、継続的なサポートを心がけてください。
うつ病の社員に対してやってはいけないこと
次に、うつ病の社員に対して避けるべき行動について解説します。
休業が必要なのに働かせる
うつ病の社員に対して、医師から休業が必要と診断されているのに、働かせることは絶対に避けましょう。
短い期間でも無理に働かせることで、社員の精神疾患をさらに悪化させる可能性があります。
また、場合によっては安全配慮義務違反として、会社が責任を追及されることもあるため、医師の診断を尊重し、速やかに休養を取らせましょう。
「頑張れ」と励ます
うつ病の社員に「頑張れ」などと励ますことは避けましょう。
うつ病は、生真面目で完璧主義な人がなりやすいとされています。
そんな社員に「頑張れ」などの励ましの言葉は、逆にプレッシャーとなって社員を追い詰め、病状を悪化させる恐れがあります。
そのため、うつ病の社員に対しては、十分に頑張っていることを認めるような声かけを心がけましょう。
うつ病を理由に解雇する
労働契約法第16条では、解雇が認められるためには「客観的に合理的な理由」が必要とされています。
社員がうつ病と診断されたというだけでは、合理的な理由に該当しません。
無理矢理うつ病の社員を解雇してしまうと、不当解雇として訴えられるリスクが生じてしまいます。
社員がうつ病となった場合、まずは治療に専念させ、復職の可能性を検討することが必要です。
社員がうつ病にならないための対策
続いて、社員がうつ病にならないために、会社で実施すべき具体的な対策について解説します。
ストレスチェック制度を導入する
ストレスチェック制度は、社員がストレスについての質問票に答え、その結果を集計・分析する一連の検査プロセスです。
この制度の実施は、労働安全衛生法に基づき、2015年から50名以上の社員がいる企業に義務付けられています。
ストレスチェックの結果は本人に通知されるため、社員自身がストレスケアに取り組むことができます。
また、職場全体のデータを分析することで、労働環境の改善にも役立つでしょう。
メンタルヘルスケア研修を実施する
メンタルヘルスケア研修は、社員にメンタルヘルスに関する正しい知識を提供し、企業全体での共通認識を形成するための研修です。
この研修では、ストレスの基礎知識や部下の異変に気付く方法、メンタルヘルスの保ち方や向上の仕方を学びます。
継続的に研修を行うことで、社員がメンタルヘルスについて深く理解し、自身の不調に早期に気付けるようになります。
また、管理職向けの研修では、部下のメンタル不調を早期に発見し、適切なアプローチを習得することが期待できるでしょう。
相談窓口を設置する
社員が安心して働ける職場環境を作るためには、業務や人間関係に関する悩みを相談できる、社内窓口の設置が必要です。
常勤の産業医が窓口となるのが理想的ですが、非常勤の場合は人事管理担当者や衛生担当者が窓口となるケースもあります。
また、社内で相談することが難しいと感じる社員のために、精神科クリニックと契約するなど、外部の相談機関を活用することも重要です。
相談窓口を適切に運用することで、社員のメンタルヘルスを守り、うつ病の予防につながります。
まとめ
この記事では、社員がうつ病になった際の適切な対応と予防策などを解説しました。
休職手続きをスムーズに進め、他の社員もうつ病にならないように、職場環境の改善を心がけましょう。
ストレスチェックやメンタルヘルス研修、相談窓口の設置も大切です。
ぜひ、この記事を参考にして、社員が安心して働ける環境を整えてください。