障害者の法定雇用率が引き上げに|雇用に関する4つの変更点も紹介

「障害者の法定雇用率ってどれだけ引き上げられるの?」

「引き上げに伴って、他に変更点とかある?」

「障害者の雇用を進める上で大切なことはある?」

人事・労務担当者の方で、このような悩みを抱えていませんか?

障害者雇用促進法に基づき、労働者が一定数以上の企業には、障害者の雇用が義務付けられています。

雇用すべき障害者の人数は法定雇用率で算出されますが、2023年からこの法定雇用率が段階的に引き上げられることが決定しました。

2023年4月から1年間は現状のままで据え置きになりますが、人事・労務担当者は今のうちから引き上げに伴う変更点を理解して、採用等の準備を進めなくてはいけません。

そこで、本記事では以下の内容を解説します。

  • 2023年~2026年の法定雇用率
  • 障害者雇用に関する変更点
  • 障害者雇用を進める上でのポイント

ぜひこの記事を参考にして、障害者雇用の準備を進めてください。

目次

2023年から障害者の法定雇用率を段階的に引き上げ

2023年から障害者の法定雇用率を段階的に引き上げ

障害者の法定雇用率が、現状の2.3%から段階的に2.7%まで引き上げられることが決定しました。

引き上げのスケジュールとしては、2023年は2.3%で据え置き、2024年から2.5%に、2026年の7月から2.7%と予定されています。

国や地方公共団体や教育委員会の法定雇用率も、同じく段階的に引き上げ予定です。

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2023年4月2024年4月2026年7月
民間企業の法定雇用率2.3%2.5%2.7%

障害者の法定雇用率引き上げの背景・目的

障害者の法定雇用率引き上げの背景・目的

法定障害者雇用率引き上げの背景には、障害者の雇用状況の改善や社会的包摂の促進があります。

目的は、障害者の社会参加を促し、生活の質を向上させることです。

令和4年の障害者雇用状況の集計結果(厚生労働省調べ)によると、2022年の民間企業の雇用障害者数は前年比を上回っていることが判明しました。

しかし、それでも非障害者に比べて雇用率は格段に低いです。

政府はこの問題に対処するために、法定雇用率を引き上げることで、企業が障害者の雇用に積極的に取り組むよう促しています。

雇用すべき障害者の人数の求め方

雇用すべき障害者の人数の求め方

雇用すべき障害者の人数は次の計算式で求められます。

計算式

障害者の雇用義務数=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×法定雇用率

例えば、A社の労働者数を例にして計算します。

常用雇用労働者数300人
短時間労働者数100人
法定雇用率(2023年時点)2.3%

(300人+100人×0.5)×2.3%=8.05

小数点以下の端数は切り捨てるので、A社の障害者の雇用義務数は8人となります。

障害者の法定雇用率引き上げに伴う4つの変更点

障害者の法定雇用率引き上げに伴う4つの変更点

障害者の法定雇用率の引き上げに伴って、4つの変更点があります。

  1. 対象事業主の範囲
  2. 除外率の引き下げ
  3. 障害者の算定方法
  4. 助成金の新設・拡充

ひとつずつ解説していきます。

変更点①:対象事業主の範囲

法定雇用率の引き上げに伴って、雇用義務の対象となる事業主の範囲も変更されます。

2024年4月から「労働者を40人以上」雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなくてはいけません。

また、2026年7月からは「労働者37.5人以上」に範囲が変更されます。

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2023年2024年4月2026年7月
対象事業主の範囲43.5人40人以上37.5人以上

なお、雇用義務が発生している事業主は、2つのルールを守る必要があります。

  1. 毎年6月1日時点での障害者雇用状況をハローワークに報告する
  2. 障害者の雇用促進と継続を図るために「障害者雇用推進者」を選任する(努力義務)

障害者雇用推進者とは、障害者の雇用を促進・継続するために、障害者の働きやすい環境を整える責任者のことです。

この障害者雇用推進者の専任は努力義務となっています。

変更点②:除外率の引き下げ

2つ目の変更は、除外率の引き下げです。

除外率とは、義務付けられている障害者の法定雇用率のうち、就業が難しいと認められる業種について、雇用義務を免除される割合のことです。

この除外率は廃止に向けて、2025年4月以降から次のように引き下げられます。

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除外率設定業種除外率
・非鉄金属一次製錬・精錬業
・貨物運送取扱業(集配利用運送業は対象外)
5%
・建設業
・鉄鋼業
・道路貨物運送業
・郵便業
10%
・港湾運送業
・警備業
15%
・鉄道業
・医療業
・高等教育機関
・介護老人保健施設
・介護医療院
20%
・林業(狩猟業は対象外)25%
・金属鉱業
・児童福祉事業
30%
・特別支援学校
(専ら視覚障害者に対する教育を行う学校は対象外)
35%
・石炭・亜炭鉱業40%
・道路旅客運送業
・小学校
45%
・幼稚園
・幼保連携型認定こども園
50%
・船員等による船舶運航業の事業70%

なお、現在除外率が10%以下の場合は、2025年4月以降に廃止されます。

変更点③:障害者の算定方法

3つ目は障害者の算定方法です。

短時間労働の精神障害者に対する算定特例が延長

「週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者を1カウントと見なす」という特例措置が、2023年3月31日で終了予定でした。

しかし、4月以降も精神障害者の算定特例を利用することができます。

特例の期限は、執筆時点では設けられていません。

そのため、当分の間は雇入れからの期間等に関係なく、対象の精神障害者を1カウントとして算定することができます。

週所定労働時間20時間未満の障害者の雇用率への算定

2024年4月から、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の次の障害者が、雇用率上0.5カウントとして算定できるようになります。

0.5カウントとして算定する障害者
  • 精神障害者
  • 重度身体障害者
  • 重度知的障害者

変更点④:助成金の新設・拡充

2024年4月から、障害者雇用に関する助成金が新設・拡充されます。

詳細が決まり次第、厚生労働省から発表がありますが、予定されているのは下記の通りです。

  • 雇入れや雇用継続に関する相談援助(原則無料)
  • 加齢に伴う課題に対応する助成金の新設
  • 「障害者介助等助成金」や「職場適応援助者助成金」など、既存助成金の拡充

障害者雇用を進める上で大切な4つのポイント

障害者雇用を進める上で大切な4つのポイント

障害者の法定雇用率が引き上げられ、障害者雇用に取り組み始める企業は増加すると予想されます。

では、実際に障害者雇用に取り組む際には、どのような点に注意するべきでしょうか。

主に4つのポイントがあります。

  1. 障害者雇用について社内理解を得る
  2. 雇用前に企業実習を行う
  3. 障害者雇用に関連する機関と連携をとる
  4. 職場環境を整備する

ひとつずつ解説していきます。

ポイント①:障害者雇用について社内理解を得る

社内の理解を深めることは、障害者雇用を進める上で重要です。

従業員が障害者雇用の意義や重要性を理解することで、より積極的に障害者と協力し、働きやすい環境をつくることができます。

具体的には、社内研修やセミナーを開催し、障害者雇用の意義や法的な背景について学ぶことが効果的です。

ポイント②:雇用前に職場実習を行う

職場実習は、障害者雇用において効果的な手段です。

実習を通じて、障害者が自分に適した仕事を見つけやすくなり、企業も障害者の能力を正確に把握できます。

労働局や公共団体によっては、障害者職場実習制度を案内しているところもあるので、そういった制度を利用してみるのもいいでしょう。

ポイント③:障害者雇用に関連する機関と連携をとる

障害者雇用に関連する機関と連携することも重要です。

連携により、助成金や支援制度を活用できるほか、障害者雇用に関する最新情報を得ることができます。

具体的には、障害者雇用促進センターやハローワークと連携し、情報交換や相談を行うことが効果的です。

ポイント④:職場環境を整備する

職場環境の整備は、障害者雇用を成功させるために重要です。

障害者にとって働きやすい環境を整えることで、生産性の向上や定着率の向上が期待できます。

具体的には、ユニバーサルデザインの導入や通勤支援、職場支援員の配置などです。

特にユニバーサルデザインは、障害の有無に関係なく誰もが使いやすく利用できるものを意味します。

非障害者の従業員にとってもよい職場環境になるでしょう。

障害者の雇用義務に違反した場合に受ける3つの罰則

障害者の雇用義務に違反した場合に受ける3つの罰則

障害者の雇用義務に違反した企業には、次のような罰則が科せられます。

  1. 障害者雇用納付金の徴収
  2. 行政指導
  3. 企業名の公表

それぞれ詳しく解説していきます。

罰則①:障害者雇用納付金の徴収

障害者雇用納付金とは、障害者の法定雇用率に達していない企業に支払いが求められる納付金です。

法定雇用率が未達成である常時100人以上の企業には、不足している障害者1人あたり月5万円の支払い義務が課せられてしまいます。

雇用納付金の納付が遅れた場合は、さらに追徴金や延滞金の催促が行われる可能性があります。

罰則②:行政指導

「変更点①:対象事業主の範囲」でも触れたように、障害者の雇用義務がある企業は、毎年6月1日時点での障害者雇用状況をハローワークに報告する必要があります。

報告を受けた企業の法定雇用率が基準に達していなかった場合、ハローワークによる行政指導が行われます。

具体的な行政指導の流れは、下記の通りです。

行政指導の流れ
  1. 雇入れ計画作成命令
  2. 雇入れ計画の適正実施勧告
  3. 特別指導

罰則③:企業名の公表

ハローワークからの障害者雇入れ計画の適正実施勧告を受けても、障害者の雇用状況の改善が見られなかった場合、厚生労働省のホームページに企業名が公表されることになります。

企業名だけでなく、ハローワークからの行政指導の状況も掲載されるので、障害者雇用に取り組んでいない企業として、大幅なイメージダウンとなるでしょう。

まとめ|障害者の法定雇用率の引き上げに向けて準備をしよう

まとめ|障害者の法定雇用率の引き上げに向けて準備をしよう

2023年現在の法定雇用率は、従来通りの2.3%のままです。

しかし、2024年4月から2.5%、2026年7月からは2.7%と段階的に引き上げられる予定になっています。

人事・労務担当者は障害者の雇用義務の有無や、義務がある場合には何人雇用する必要があるのかを確認して、採用等の準備を進めましょう。

また、障害者の雇用を進める上でご不明な点などがありましたら、飯田橋事務所へご相談ください。

人事労務の分野に精通した専門職員が、丁寧にサポートさせていただきます。

いつでもお気軽にご相談ください。

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