【2023年3月で終了】雇用調整助成金のコロナ特例は4月以降どうなる?

「4月から雇用調整助成金ってどうなるの?」

「支給要件とか受給額が変わるのかな?」

「4月以降もスムーズに申請できるようになりたい」

人事・労務担当者の方でこのような悩みを抱えていませんか?

通常の雇用調整助成金制度に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業に向けて実施されていた特例措置。

この特例措置は、2023年3月31日をもって終了します。

「それじゃあ、4月以降にコロナで休業したらどうすればいいの?」と、戸惑っている方も多いと思います。

そこで今回は、次の内容を説明します。

  • 4月以降の雇用調整助成金の支給要件
  • 受給額
  • 提出書類

この記事を読むと、4月以降に雇用調整助成金を利用する際にスムーズに申請できるので、ぜひ参考にしてください。

目次

2023年3月31日をもって雇用調整助成金(コロナ特例)は終了

2023年3月31日をもって雇用調整助成金(コロナ特例)は終了

雇用調整助成金とは、経済上の理由で事業縮小せざるを得ない場合に、従業員の雇用維持を図るために休業を実施する事業主に対して、政府が休業手当などの一部を助成する制度です。

通常時の雇用調整助成金とは別に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業に対して特例措置が実施されていました。

この特例措置は2022年12月以降は通常制度とし、一定の経過措置が設けられていましたが、2023年3月31日をもって終了することになりました。

なお、通常の雇用調整助成金の制度自体は4月以降も運用されます。

厚生労働省は4月以降の取扱については、新型コロナウイルス感染症の感染状況などを踏まえて、改めて通達すると発表しています。

【2023年4月以降に休業した場合】雇用調整助成金の支給要件

【2023年4月以降に休業した場合】雇用調整助成金の支給要件

2023年4月1日以降に雇用調整助成金を申請する場合も、いくつかの支給要件があります。

ただし、休業理由が景気変動や産業構造の変化などである場合と、新型コロナウイルスである場合とで、少し支給要件が異なります。

主な支給要件はご覧の通りです。

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休業理由景気変動や産業構造の変化新型コロナウイルス
支給要件①雇用保険の適用事業主である
②直近3ヶ月の生産指標が前年同期と比べて10%以上低下している
③雇用保険被保険者や派遣労働者数が一定の雇用量である
④最後の休業等実施日から1年以上経過している
⑤実施する雇用調整が一定の基準を満たしている
(左の①~④と同様)
・計画届の提出は行わない
・残業相殺は行わない
・短時間休業の要件を緩和する

また、この記事では主な支給要件となる対象時間や期間に絞って解説していますが、景気変動などが休業理由の場合は、他にも要件が数多くあります。

他の要件も知りたいという方は、当事務所にお問い合わせください。

①雇用保険の適用事業主である

1つ目の要件は、雇用保険の適用事業主であることです。

労働者が雇用される事業は、業種を問わずすべて適用事業になります。

②直近3ヶ月の生産指標が前年同期と比べて10%以上低下している

2つ目の要件は、直近3ヶ月の生産指標(売上高、販売量)が前年同期と比べて、10%以上低下していることです。

会社を立ち上げて日が浅く、比較できる前年同期がない場合は雇用調整助成金を利用できません。

③雇用保険被保険者や派遣労働者数が一定の雇用量である

3つ目の要件は、休業等を実施する事業所が一定の雇用量を満たしていることです。

  • 雇用保険被保険者
  • 受け入れている派遣労働者数

彼らの直近3ヶ月の平均値が前年同期と比較して、5%を超えてかつ6名以上増加していないことが求められます。

中小企業事業所の場合は、10%を超えてかつ4名以上増えていないことが要件です。

④最後の休業等実施日から1年経過している(クーリング期間要件)

この要件は、特例措置を利用していた事業所が、2023年4月1日以降に通常制度を申請する場合に求められる要件です。

件の事業所は、最後の休業等実施日を含む判定基礎期間末日から1年経過している必要があります。

通常制度では、対象期間終了後1年経過していることが必要です。

⑤実施する雇用調整が一定の基準を満たしている

実施する雇用調整が、下記の通りに基準を満たしている必要があります。

休業の場合

労使協定により、所定労働日の全日にわたって行われるものであること

被保険者全員について一斉に1時間以上実施されるものであっても認められる

教育訓練の場合

職業に関する知能・技能・技術の習得や向上のために行われるものであること

実施時間は、所定労働時間の前日または半日(3時間以上で所定労働時間未満)であること

出向の場合

対象期間内に始まり、3ヶ月以上1年以内に出向元企業に復帰するものであること

ここからの要件は、休業理由が新型コロナウイルスである場合の特別要件です。

新型コロナウイルスが理由で休業した場合、上記①~④の要件に次の要件も加わります。

【コロナ要件】計画届の提出は必要ない

従来の雇用調整助成金では、休業等を実施する前に計画届を提出する必要がありました。

しかし、2023年4月1日以降に新型コロナが理由で休業等を実施した場合、2023年6月30日までの間は計画届を提出する必要はありません。

【コロナ要件】残業相殺は行わない

残業相殺とは、休業等の延べ日数から残業時間を差し引くことです。

コロナ前は、判定基礎期間中に実施した休業等の延べ日数から、所定時間外労働日数を相殺することが必要でした。

けれど、2023年4月1日以降の休業等については、2023年6月末まで残業相殺は行いません。

【コロナ要件】短時間休業の要件を緩和する

コロナ前は、助成対象の従業員全員に一斉に休業を行うことが必要でした。

しかし、一部の従業員を対象にした短時間休業も助成対象になります。

2023年4月以降の雇用調整助成金の支給額

2023年4月以降の雇用調整助成金の支給額

2023年4月以降は、事業主が支払った休業手当負担額などに下記の助成率を乗じた額が、雇用調整助成金として支給されます。

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助成率と加算額中小企業中小企業以外
・休業を実施した場合の休業手当
・教育訓練を実施した場合の賃金相当額
・出向を行った場合の出向元事業主の負担額
※対象労働者1人あたりの8,355円が上限(2022年8月)
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教育訓練を実施したときの加算額(1人1日あたり)1,200円(1人1日あたり)1,200円

支給額を計算する際は、対象労働者1人あたり8,355円を上限にしなくてはいけません。

教育訓練を行った場合のみ、賃金相当額に助成率を乗じた上で、1人1日あたり1,200円が加算されます。

また、休業や教育訓練を行った場合は、その初日から1年の間に最大100日分、3年の間に最大150日分が支給されます。

雇用調整助成金の提出書類

雇用調整助成金の提出書類

雇用調整助成金を申請する際には、様々な書類の提出が求められます。

雇用調整によって提出書類も異なるので、人事・労務担当者は間違えないように気を付けましょう。

また、下記の表に記載されている書類以外にも、審査の過程で提出が求められる場合があります。

休業等の場合

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書類の種類確認書類の内容
様式第5号(1)雇用調整助成金(休業等)支給申請書
様式第5号(2)
様式第5号(2)-2
雇用調整助成金助成額算定書
様式第5号(3)休業等実績一覧表及び所定外労働等の実施状況に関する申出書
様式第13号雇用調整助成金支給申請合意書
共通要領様式第1号支給要件確認申立書
確認書類(4)労働保険料に関する書類
①前年度の労働保険確定保険料申告書(写し)
②労働保険料等算定基礎賃金等の報告(組様式第4号の写し)
※②は労働保険事務組合に業務委託している場合
確認書類(5)労働・休日及び休業・教育訓練の実績に関する書類
・出勤簿
・タイムカードの写し
・勤務カレンダー
・シフト表
確認書類(6)教育訓練の受講実績に関する書類
・受講者アンケート
・受講者レポート

出向の場合

「休業」の提出書類に加えて、次の書類を提出します。

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書類の種類確認書類の内容
様式第6号(1)雇用調整助成金(出向)支給申請書
様式第6号(2)出向先事業所別調書
様式第6号(3)雇用調整助成金出向に関する確認書
※4~7欄の記載は不要
様式第6号(4)出向元事業所賃金補填額・負担額調書
共通要領様式第1号支給要件確認申立書
確認書類(8)出向の実績に関する書類
・出向元事業所および出向先事業所の労働者名簿や出勤簿等
・被保険者資格が出向先→出向先の雇用保険被保険者資格取得等確認通知書

出向労働者の賃金の支払い状況等の確認のための書類
・賃金台帳
・就業規則

上記の書類は、出向元事業主と出向先事業主の間の賃金の負担関係に応じて、様式や提出書類を変更する必要があります。

出向元事業主と出向先事業主の間の賃金の負担関係に応じた提出書類
出向元事業主が出向先事業主に賃金の一部補助を行っているケース

※出向先事業主が出向労働者に賃金を支払っている場合

  • 様式第6号(2)-1
  • 様式第6号(3)
  • 様式第6号(4)-1

※双方が出向労働者に賃金を支払っている場合

  • 様式第6号(2)-1
  • 様式第6号(2)-2
  • 様式第6号(3)
  • 様式第6号(4)-1
  • 様式第6号(4)-2
出向先事業主が出向元事業所に賃金の一部補助を行っているケース

※出向元事業主が出向労働者に賃金を支払っている場合

  • 様式第6号(2)-2
  • 様式第6号(3)
  • 様式第6号(4)-2
出向元・出向先事業主間で賃金補助を行っていないケース

※双方が出向労働者に賃金を支払っている場合

  • 様式第6号(2)-2
  • 様式第6号(3)
  • 様式第6号(4)-2

まとめ|4月以降の雇用調整助成金の申請に注意

まとめ|4月以降の雇用調整助成金の申請に注意

いかがでしたか?

4月以降の雇用調整助成金は、コロナ特例は終了して通常制度に戻ります。

しかし、支給要件は申請理由によって異なるので、人事・労務担当者は混同しないように気を付けましょう。

最後にもう一度、4月以降の雇用調整助成金の支給要件をおさらいしましょう。

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休業理由景気変動や産業構造の変化新型コロナウイルス
支給要件①雇用保険の適用事業主である
②直近3ヶ月の生産指標が前年同期と比べて10%以上低下している
③雇用保険被保険者や派遣労働者数が一定の雇用量である
④最後の休業等実施日から1年以上経過している
⑤実施する雇用調整が一定の基準を満たしている
(左の①~④と同様)
・計画届の提出は行わない
・残業相殺は行わない
・短時間休業の要件を緩和する

もし、雇用調整助成金の申請でご不明な点などがありましたら、ぜひ飯田橋事務所にご相談ください。

当事務所の専門スタッフが丁寧にサポートさせていただきます。

どうぞお気軽にご相談ください。

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