「障害者雇用状況報告書ってなに?」
「初めて報告を担当することになったから、詳しい書き方を知りたい」
人事労務担当者の方で、このような悩みを抱えていませんか?
障害者雇用状況報告書は、企業がどれだけ障害者を雇用しているのかを報告するための書類です。
報告が義務付けられている企業は、毎年ハローワークに報告する必要があります。
そんな障害者雇用状況報告書をスムーズに作成できるように、今回は次の内容を解説していきます。
- 障害者雇用状況報告書とは
- 提出先、提出方法、期限
- 報告書の書き方
初めて報告することになったという方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
障害者雇用状況報告書とは
障害者雇用状況報告書は、企業が障害者の雇用状況を報告するための書類です。
障害者雇用促進法により、一定数以上の常用雇用労働者がいる企業は、障害者を雇用することが義務付けられています。
そして、その雇用状況を毎年「障害者雇用状況報告書」としてまとめ、報告しなくてはいけません。
毎年6月1日時点の雇用状況を報告するため「ロクイチ報告」とも言われています。
この報告は、企業がどれくらい障害者雇用を実施しているかを把握でき、雇用促進を実現するために役立ちます。
ロクイチ報告には、もうひとつ「高年齢者雇用状況等報告書」があるので、そちらも併せて提出してください。
提出義務がある企業
2023年度まで障害者雇用状況報告書の提出義務があったのは、常用雇用労働者が43.5人以上いる企業でした。
しかし、障害者雇用促進法が改正されて、2024年4月以降は次のように対象企業の範囲が拡大されます。
2023年度 | 2024年4月~ | 2026年7月~ | |
対象企業の範囲 | 43.5人以上 | 40.0人以上 | 37.5人以上 |
なお、雇用されている障害者が0人であっても、報告書は提出しなければいけません。
障害者雇用促進法の改正内容については、こちらの記事で詳しく解説しています。
提出先・提出期限・提出方法
- 提出先
-
事業所を管轄するハローワーク
- 提出期限
-
毎年7月15日まで
- 提出方法
-
- 郵送
- 窓口持参
- 電子申請 のいずれか
提出しなかった場合の罰則
障害者雇用状況報告書を提出しない、または虚偽の報告をすると、30万円以下の罰金の対象になります。
報告書の様式ダウンロード
障害者雇用状況報告書の様式は、厚生労働省のサイトでダウンロードできます。
なお、報告義務のある企業には、5月下旬から6月初旬にかけて必要書類が郵送で届けられます。
障害者雇用状況報告書の書き方を徹底解説
ここからは、障害者雇用状況報告書の書き方を解説していきます。
報告書は大枠として6つの区分に分かれています。
- A 事業主
- B 雇用の状況
- C 事業所別の内訳
- D 障害者の雇用の促進等に関する法律別表に掲げる種類別の身体障害者数
- E 障害者雇用推進者
- F 記入担当者
今回は、A~Dの書き方を解説するので、報告する際の参考にしてください。
A 事業主
Aの枠では、企業に関する情報を記入します。
雇用保険適用事業所番号(11桁)
番号は、障害者雇用状況報告書に同封された「ご挨拶」に記載されています。
紛失した場合は、次の書類で番号を確認できます。
- 適用事業所台帳
- 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主控え)
なお、次の認定を受けている場合、事業主別様式(※)には、親事業主もしくは事業協同組合等の番号をご記入ください。
- 関係会社特例
- 企業グループ特例
- 事業協同組合等特例
提出日
記入漏れしやすいので注意しましょう。
法人名称
スタンプ、ゴム印等で記入できますが、2枚目以降も忘れずに押印してください。
事業主氏名または代表者氏名
法人名称と同じく、スタンプやゴム印等で記入できますが、こちらも2枚目以降も押印してください。
社印、代表取締役印等の押印は必要ありません。
住所と電話番号
本社や本店など、主な活動拠点の住所と電話番号を記入します。
①事業の種類と産業分類(2桁)
産業分類は、同封の「ご挨拶」に記載されている番号を記入します。
②事業所の数
企業に所属する、以下全ての事業所の合計数を記入します。
- 本社
- 支店
- 営業所
- 工場
- 事務所 等
③法人番号(13桁)
国税庁法人番号公表サイトで確認して記入します。
C 事業所別の内訳
B枠の前に、C枠の書き方を紹介します。
C枠では、事業所別の内訳を記入します。
④適用事業所番号(11桁)
支社、支店等ごとに個別の雇用保険適用事業所番号がない場合は、直近上位の事業所の番号の頭4桁を記入します。
⑤事業所の名称
本店、支店、営業所、工場ごとに事業所名を記入します。
⑥事業所の区分
各事業所ごとに、次の3つから該当する番号を選んで記入します。
- 特例子会社に含まれる事業所
- 指定就労継続支援A型事業所
- 上記1と2以外
⑦事業所の所在地
郵便番号は必要ありません。
⑧⑨事業内容と除外率
各事業所の主な業種が、下記の除外率設定業種に該当する場合のみ記入します。
除外率設定業種 | 除外率(2024年度) | 除外率(2025年4月1日~) |
---|---|---|
・非鉄金属第一次製錬・精製業 ・貨物運送取扱業(集配利用運送業は対象外) | 15% | 5% |
・建設業 ・鉄鋼業 ・道路貨物運送業 ・郵便業(信書便事業を含む) | 20% | 10% |
・港湾運送業 ・警備業 | 25% | 15% |
・鉄道業 ・医療業 ・高等教育機関 ・介護老人保健施設 ・介護医療院 | 30% | 20% |
・林業(狩猟業は対象外) | 35% | 25% |
・金属鉱業 ・児童福祉事業 | 40% | 30% |
・特別支援学校 (専ら視覚障害者に対する教育を行う学校は対象外) | 45% | 35% |
・石炭・亜炭鉱業 | 50% | 40% |
・道路旅客運送業 ・小学校 | 55% | 45% |
・幼稚園 ・幼保連携型認定こども園 | 60% | 50% |
・船員等による船舶運航業の事業 | 80% | 70% |
⑩(イ)常用雇用労働者の数、⑩(ロ)短時間労働者の数
常用雇用労働者とは、週の所定労働時間が20時間以上の労働者であって、1年を超えて雇用される者(見込みを含みます。)をいいます。
⑩(イ)には、週の所定労働時間が30時間以上の方を、⑩(ロ)には20時間以上30時間未満の方を記入します。
⑩(ハ)常用雇用労働者の数
次の式で算出した数を、小数点以下第1位まで記入します。
計算式:イ+(ロ×0.5)
⑩(二)法定雇用障害者の算定基礎となる労働者の数
(ハ)の数字を記入します。
ただし、⑧⑨欄で除外率設定業種に該当する事業所は、次の式で算出した数をご記入ください。
計算式:ハ-(ハ×⑨の除外率)
除外率を乗じて計算した数は、端数切り捨てをしてから(ハ)の数から引いてください。
なお(ニ)の合計数は、小数点以下第1位まで記入します。
B 雇用の状況
続いてB枠の書き方です。
B枠では、障害者雇用の状況を記入します。
なお、⑪⑫欄の()内には、前年の6月2日から本年6月1日までに、新たに採用した数を内数としてご記入ください。
⑪(ホ)重度身体障害者の数
原則として、身体障害者手帳で1級もしくは2級に該当する人数を記入します。
週の所定労働時間が30時間以上の方をご記入ください。
下記リンクの参考2を参照してください。
なお、短時間労働者の数は含みません。
⑪(ヘ)重度身体障害者以外の身体障害者の数
原則として、身体障害者手帳で3級〜6級に該当する人数を記入します。
週の所定労働時間が30時間以上の方をご記入ください。
なお、短時間労働者の数は含みません。
⑪(ト)(チ)
⑪(ト)には、重度身体障害者であって、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方をご記入ください。
⑪(チ)には、重度身体障害者以外の身体障害者であって、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方をご記入ください。
⑪(リ)身体障害者の数
次の式で算出した数を、小数点以下第1位まで記入します。
計算式:(ホ×2)+ヘ+ト+(チ×0.5)
⑪(ヌ)重度知的障害者の数
児童相談所や障害者職業センター等で知的障害者と判断され、その中でも重度と判定された人数を記入します。
週の所定労働時間が30時間以上の方をご記入ください。
⑪(ル)重度知的障害者以外の知的障害者の数
重度知的障害者ではない知的障害者の人数を記入します。
週の所定労働時間が30時間以上の方をご記入ください。
⑪(ヲ)(ワ)
⑪(ヲ)には、重度知的障害者であって、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方をご記入ください。
⑪(ワ)には、重度知的障害者以外の知的障害者であって、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方をご記入ください。
⑪(カ)知的障害者の数
次の式で算出した数を、小数点以下第1位まで記入します。
計算式:(ヌ×2)+ル+ヲ+(ワ×0.5)
⑪(ヨ)精神障害者の数
精神障害者保健福祉手帳を持っている人数を記入します。
週の所定労働時間が30時間以上の方をご記入ください。
⑪(タ)精神障害者である短時間労働者の数
精神障害者である短時間労働者数(週の所定労働時間が20時間以上30時間未満)を記入します。
⑪(レ)精神障害者の数
(ヨ)と(タ)を合算した数を記入します。
⑫計
(リ)(カ)(レ)を合算した数を記入します。
なお、2024年度からは、週10時間以上20時間未満の特定短時間労働者が加わる見込みです。
⑬実雇用率
次の式で計算し、小数点以下第3位を四捨五入した数を記入します。
計算式:⑫÷⑩のニ×100
⑭身体障害者、知的障害者又は精神障害者の不足数
次の式で雇用障害者の不足数を記入します。
計算式:(⑩のニ×法定雇用率)-⑫
2024年4月から法定雇用率は2.5%になります。(一定の特殊法人等は異なります。)
計算結果がマイナスになる場合は0と記入します。
不足数が生じる場合は、小数点以下第1位までご記入ください。
D 障害者の雇用の促進等に関する法律別表に掲げる種類別の身体障害者数
最後のD枠では、下記の分類表に沿って、事業所ごとに種類別の実人数を記入します。
複数障害が存在する場合、主要な障害のみをカウントしてください。
なお、障害の程度による区分は必要ありません。
詳しくは、こちらのリンクの参考2を参照してください。
その他
障害者雇用状況報告書を作成する場合は、障害者の人数や障害種別などを確認する必要があります。
しかし、これはプライバシーに関する情報であるため、確認する際は従業員に十分配慮しながら行いましょう。
厚生労働省の「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」をご参照ください。
プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインの概要‐事業主の皆様へ‐|厚生労働省
まとめ|対象企業は忘れずに障害者雇用状況報告書を提出しよう
今回は、障害者雇用状況報告書について解説しました。
障害者雇用の促進は、社会的な要請になってきています。
忘れずに報告しましょう。