「休日手当の計算方法が知りたい」
「休日手当を計算するときに注意点はある?」
上記のお悩みを抱える人事労務の担当者の方がいらっしゃるのではないでしょうか。
休日手当とは、労働基準法に定められた法定休日に出勤したときの手当です。
休日手当の割増率は一般的に1.35倍であり、月給制または時給制なのかによって計算方法の手順が異なります。
また、法定休日に出勤したとしても振替休日の日程が確定している場合には休日手当の支給は不要です。
本記事では、休日手当の計算方法の手順を解説します。
休日手当を計算するときの注意点や計算ミスを予防するポイントも解説しますので、人事労務の担当者の方はぜひご確認ください。
休日手当の計算方法
休日手当の計算方法は、以下のとおりです。
- 賃金を時給で算出する
- 時給に割増率1.35を乗ずる
- 勤務時間に当てはめて計算する
次の項目からは、休日手当の計算方法を詳しく解説します。
賃金を時給で算出する
休日手当の計算方法は「時給×割増率×出勤時間」です。
そのため、賃金を時給で算出する必要があります。
時給制の労働者であれば省略できますが、月給制の場合は「基本給 ÷1ヵ月の所定労働時間」で時給額を計算しましょう。
たとえば、基本給20万円で所定労働時間が170時間なら時給1,176円として計算します。
時給に割増率1.35を乗ずる
休日手当の割増率は、1.35倍です。
ただし、休日出勤と深夜労働が重複する22時~24時の2時間に労働している場合には割増率が 1.60倍となります。
休日出勤をしても24時を超えると法定休日でなくなるため、割増率1.60倍となるのは22時~24時のみです。
休日出勤の時間帯 | 割増率 |
---|---|
9時~22時 | 1.35倍 |
22時~24時 | 1.60倍 |
また、休日出勤に24時を超えて労働している場合には、時間外割増を付与します。
時間外割増とは、法定労働時間を超えて労働した場合に付与される手当です。
時間外労働は、労使間で36協定を締結している場合に行うことができます。
時間外労働の割増率は1.25倍となるため、労働時間によって反映させましょう。
勤務時間に当てはめて計算する
最後に、勤務時間に当てはめて計算します。
法定休日の9時から17時までの勤務で、1時間の休憩をとった場合の勤務時間は7時間です。
時給1,000円の7時間勤務に休日出勤の割増率である1.35をかけると、休日出勤をした日の日給は9,450円になります。
休日手当を計算するときの注意点
休日手当を計算するときの注意点は、以下のとおりです。
- 休日出勤には36協定の締結と届出が必要になる
- 小数点以下は四捨五入で処理する
- 休日手当が発生するのは法定休日の労働のみ
ここからは、休日手当を計算するときの注意点を解説します。
休日出勤には36協定の締結と届出が必要になる
従業員に休日出勤を命じる場合には、36協定の締結と届出が必要です。
36協定とは、時間外労働に関する取り決めを指します。
36協定の締結によって、労使間で時間外労働に関する事項の合意が可能です。
ただし、36協定を締結しているとしても、月45時間・年間360時間の上限があります。
36協定にはその他にも時間外労働に関する複数の取り決めがあるため、上限時間を超えないように注意が必要です。
36協定の締結と届出を確実に行ったうえで、上限時間を超えないように注意しましょう。
参考:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針|厚生労働省
小数点以下は四捨五入で処理する
割増率に小数点を使用することから、休日手当を計算すると割り切れない数字になる場合があります。
小数点以下は、4以下は切り捨て・5以上なら切り上げで計算しましょう。
また、1ヵ月中の時間外労働の合計時間数が1時間未満の端数がある場合には30分未満は切り捨てであり、30分以上は切り上げで計算します。
時間外労働には法定労働時間外の労働すべてが含まれるため、休日出勤だけなく残業時間と深夜労働も含めることが重要です。
休日手当が発生するのは法定休日の労働のみ
休日手当が発生するのは、法定休日の労働のみです。
法定外休日の休日出勤の場合、休日手当の支給義務が発生しません。
法定休日と法定外休日の違いは、労働基準法で保障されているかどうかです。
法定休日 | 毎週1回の休日、又は4週間を通じ4日の休日(労働基準法で定められている休日) |
---|---|
法定外休日 (所定休日) | 企業が自由に設定できる休日 |
法定休日は労働基準法で保障されており、従業員の休む権利が優先されるため、企業側に休日手当の支給義務が生じます。
一方で法定外休日は企業が独自に定めている休日なため、休日手当は適用されません。
しかし法定外休日の出勤でも週40時間を超える労働となっている場合には、時間外手当として割増が適用されるケースがあります。
休日手当が支給されるのは法定休日の出勤のみですが、前提条件によって変化するためケースごとに注意が必要です。
休日手当の計算ミスを予防するポイント
では、休日手当の計算ミスを予防するにはどうすればいいのでしょうか。
ここからは、注意点を踏まえた休日手当の計算ミスを予防するポイントを解説します。
法定休日と法定外休日を明確にする
法定休日と法定外休日の明確化によって、休日手当の有無に関するトラブルを予防することが可能です。
就業規則などで「法定休日を日曜日とする」と明記できれば、従業員から休日手当に関する内容を質問された際に回答しやすくなります。
労働基準法では法定休日の明確化は義務付けられていません。
しかし法定休日を明確にしておくことで、計算ミスやトラブルの予防につながります。
振替休日または代休かどうか
同じ休日出勤でも、振替休日または代休を取得しているかどうかで休日手当の有無が異なります。
振替休日と代休に関する内容は、以下のとおりです。
概要 | 休日手当の有無 | |
---|---|---|
振替休日 | 休日出勤の前に取得している | なし |
代休 | 休日出勤の後に取得している | あり |
振替休日と代休は、いずれも休日の振り替えを行っています。
振替休日は振替先が休日となるため、休日出勤の際には休日手当が不要です。
対して代休は休日が移動する前に労働しているため、法定休日であれば休日手当の支給を行う必要があります。
休日の振り替えを行っている場合でも、振替休日もしくは、代休かによって休日手当の有無が変わるため注意しましょう。
参考:振替休日と代休では、割増賃金の 取り扱いなどが異なります。|厚生労働省
休日出勤でも休日手当が発生しないケースを理解する
休日出勤でも休日手当が発生しないケースは、以下のとおりです。
- 法定外休日の出勤で時間外労働にならないとき
- 振替休日を取得しているとき
- 管理監督者が休日出勤をしているとき
法定外休日の出勤で労働時間を合計しても週40時間未満の場合には時間外労働にならないため、手当が発生しません。
また、管理監督者が休日出勤をした場合だと休日手当および時間外手当が不要となります。
管理監督者は経営に関する重要な職務を背負っていることから、勤務形態が労働時間の規制に不適格なためです。
ただし役職や肩書きが管理職の場合でも、必ずしも管理監督者とは限りません。
管理監督者は職務内容と権限に要件が定められているため、休日手当の支給に疑問を感じる場合には職務内容などを確認する必要があります。
参考:しっかりマスター 管理監督者編(平成30年9月)|厚生労働省
まとめ
休日手当は「時給×割増率×出勤時間」で計算します。
月給制の場合には、時給制に置き換えて計算する必要があるため注意しましょう。
また、割増率に関する取り決めはさまざまです。
休日手当または時間外手当かどうかで割増率は異なります。
ケースによっては、休日手当が発生しない場合もあるため計算する際には注意が必要です。
休日手当を計算する際には、注意点を抑えて行いましょう。