「改善基準告示が改正されたけど、いつ適用されるの?」
「具体的にどこが変わったのか教えてほしい」
「適用される前に、慌てないで労働環境を整備したい」
運送会社の人事労務担当者の方で、このような悩みを抱えていませんか?
改善基準告示が改正され、2024年4月から適用されることが決まりました。
適用の直前になって慌てないように、改正内容を把握して、適切に労働環境を整備しなくてはいけません。
そこで今回は、次の内容を解説していきます。
- 改善基準告示とは
- 適用時期
- 違反したときの罰則
- 改正内容(トラック、タクシー、バス運転手)
現行と改正後の違いを分かりやすく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
改善基準告示とは
改善基準告示は、トラックやタクシー、バス運転手などの自動車運転者に対して、運転時間や休息期間などの基準を定めたものです。
運転手の健康と安全を確保し、労働環境を改善することを目的としています。
改正改善基準告示が適用される時期
改善基準告示は2022年に改正され、2024年4月1日から適用されます。
適用されるまでに、企業は改善基準告示の内容を見直しておくことが必要です。
改善基準告示に違反したときの罰則
改善基準告示の違反に、法的な罰則は存在しません。
しかし、国土交通省から行政処分が下される可能性があります。
これには、一定期間の車両の使用制限や事業停止が含まれており、事業者にとって大きな損失となります。
改善基準告示の改正内容
ここからは、改善基準告示で改正された事項をトラック、タクシー、バスごとに解説していきます。
トラック運転手
トラック運転手の改善基準告示は、以下の内容が改正されました。
- 1日の拘束時間
-
現行:原則13時間以内(上限16時間、15時間超は週2回まで)
改正後:原則13時間以内(上限15時間、14時間超は週2回まで)
ただし、一定の宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、週2回まで継続16時間まで延長が可能になります。
- 1ヶ月の拘束時間
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現行:293時間以内
改正後:284時間以内
- 1ヶ月の拘束時間(労使協定を結んだ場合)
-
現行:320時間まで延長できる(年6ヶ月まで)
改正後:①②を満たした場合のみ、310時間まで延長できる(年6ヶ月まで)
- 284時間超は連続3ヶ月まで
- 1ヶ月の時間外・休日労働時間数が100時間未満になるよう努める
- 1年の拘束時間
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現行:3,516時間以内
改正後:3,300時間以内
- 1年の拘束時間(労使協定を結んだ場合)
-
上記の基準に加えて、次の①②を満たした場合のみ、3,400時間まで延長することができます。
- 284時間超は連続3ヶ月までとする
- 1ヶ月の時間外・休日労働時間数が100時間未満になるよう努める
- 1日の休息期間
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現行:継続8時間以上
改正後:継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らない
ただし、一定の宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、週2回まで継続8時間以上が認められます。
また、休息のいずれかが9時間を下回った場合、運行終了後に継続12時間以上の休息期間を与える必要があります。
- 連続運転時間
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現行:4時間以内(運転の中断は1回連続10分以上、合計30分以上)
改正後:4時間以内(運転の中断時には原則として休憩を与える)
もしSA・PAなどに駐停車できず、やむを得ず連続運転時間が4時間を超える場合は、4時間30分まで延長が可能です。
- 予期し得ない事象
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改正に伴い、事故や故障など予期し得ない事象に対応した時間を、次の時間から除くことができるようになります。
- 1日の拘束時間
- 運転時間(2日平均)
- 連続運転時間
予期し得ない事象としては、次のような事例が挙げられます。
予期し得ない事象の具体例- 運転中に操作している車両が突然故障したこと
- 運転中に突然、乗るはずのフェリーが欠航したこと
- 運転中に、災害や事故のために道路が封鎖される、または交通が混雑したこと
- 異常気象(警報発令時)に巻き込まれ、通常の運行が困難になったこと
また、勤務が終わった後、通常の休息期間(連続11時間以上、最低でも9時間)を運転手に確保させる必要があります。
日勤のタクシー運転手
日勤とは、一般に朝から夕方までの時間帯に働くことを示します。
日勤のタクシー運転手の改善基準告示は、以下のように改正されました。
- 1日の拘束時間
-
現行:原則13時間以内(上限16時間)
改正後:原則13時間以内(上限15時間、14時間超は週3回までが目安)
- 1ヶ月の拘束時間
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現行:299時間以内
改正後:288時間以内
- 1日の休息期間
-
現行:継続8時間以上
改正後:継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らない
- 予期し得ない事象
-
改正に伴い、事故や故障など予期し得ない事象に対応した時間を、次の時間から除くことができるようになります。
- 1日の拘束時間
- 2暦日の拘束時間
予期し得ない事象としては、次のような事例が挙げられます。
予期し得ない事象の具体例- 運転中に操作している車両が突然故障したこと
- 運転中に突然、乗るはずのフェリーが欠航したこと
- 運転中に、災害や事故のために道路が封鎖される、または交通が混雑したこと
- 異常気象(警報発令時)に巻き込まれ、通常の運行が困難になったこと
対応した時間を含め1日または2暦日の拘束時間を超えた場合は、勤務が終わった後、それぞれ以下の休息期間を運転手に確保させる必要があります。
確保させる休息期間1日超えた場合:連続11時間以上
2暦日超えた場合:連続24時間以上
日勤のタクシー運転手(車庫待ち)
車庫待ちとは、車庫など指定された場所で待機する就労形態のことです。
車庫待ちの日勤タクシー運転手にも、上記の基準が適用されます。
しかし、改善基準告示の改正で、1ヶ月の拘束時間の特例が見直されました。
- 1ヶ月の拘束時間
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現行:労使協定により322時間まで延長できる
改正後:労使協定により300時間まで延長できる
隔日勤務のタクシー運転手
隔日勤務は、1日おきに出勤する勤務形態です。
隔日のタクシー運転手の改善基準告示は、次の内容が改正されました。
- 2暦日の拘束時間
-
現行:原則21時間以内
改正後:原則22時間以内、かつ、2回の隔日勤務の平均時間が21時間を超えない
- 2暦日の休息期間
-
現行:継続20時間以上
改正後:継続24時間以上を基本とし、22時間を下回らない
隔日勤務のタクシー運転手(車庫待ち)
こちらも上記の基準が適用されますが、1ヶ月・2暦日の拘束時間の特例が改正されます。
- 1ヶ月の拘束時間
-
現行:262時間以内(労使協定により270時間まで延長可)で、さらに下記の要件を満たす場合は、20時間を加えた時間まで延長できる
- 2暦日の拘束時間が21時間を超える勤務回数は、1ヶ月に7回以内とすること
- 夜間4時間以上の仮眠時間を与えること
改正後:262時間以内(労使協定により270時間まで延長可)で、さらに下記の要件を満たす場合は、10時間を加えた時間まで延長できる
- 2暦日の拘束時間が22時間超、および2回の隔日勤務の平均が21時間超の回数は、1ヶ月に7回以内とすること
- 夜間4時間以上の仮眠時間を与えること
- 2暦日の拘束時間
-
現行:下記の要件を満たす場合、労使協定で定めた1ヶ月に7回以内に限り、24時間まで延長できる
- 夜間4時間以上の仮眠を与えること
改正後:下記の要件を満たす場合、24時間まで延長できる
- 2暦日の拘束時間が22時間超、および2回の隔日勤務の平均が21時間超の回数は、1ヶ月に7回以内とすること
- 夜間4時間以上の仮眠時間を与えること
バス運転手
バス運転手の改善基準告示は、以下の内容が改正されました。
- 1ヶ月(1年)、4週平均1週(52週)の拘束時間の選択
-
現行:規定なし
改正後:①②のいずれかを選択できる
- 1年3,300時間以内および1ヶ月281時間以内
- 52週3,300時間以内および4週平均1週65時間以内
なお、貸切バス乗務者の場合、労使協定により次のように延長できます。
- 1年3,400時間以内および1ヶ月294時間以内(年6ヶ月まで、281時間超は連続4時間まで)
- 52週3,400時間以内および4週平均1週68時間以内(24週まで、65時間超は連続16週まで)
- 1日の拘束時間
-
現行:原則13時間以内(上限16時間、15時間超は週2回まで)
改正後:原則13時間以内(上限15時間、14時間超は週3回までが目安)
- 1ヶ月の拘束時間
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現行:原則281時間以内(上限309時間)
改正後:原則281時間以内(上限294時間)
- 1年の拘束時間
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現行:原則3,380時間以内
改正後:原則3,300時間以内
- 1日の休息期間
-
現行:継続8時間以上
改正後:継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らない
- 予期し得ない事象
-
改正に伴い、事故や故障など予期し得ない事象に対応した時間を、次の時間から除くことができるようになります。
- 1日の拘束時間
- 運転時間(2日平均)
- 連続運転時間
予期し得ない事象としては、次のような事例が挙げられます。
予期し得ない事象の具体例- 運転中に操作している車両が突然故障したこと
- 運転中に突然、乗るはずのフェリーが欠航したこと
- 運転中に、災害や事故のために道路が封鎖される、または交通が混雑したこと
- 異常気象(警報発令時)に巻き込まれ、通常の運行が困難になったこと
また、勤務が終わった後、通常の休息期間(連続11時間以上、最低でも9時間)を運転手に確保させる必要があります。
まとめ|2024年までに改善基準告示の内容を把握しておこう
今回は、改正された改善基準告示の内容を解説しました。
改善基準告示は法律ではなく、違反したとしても直接的な罰則はありませんが、国土交通省から行政処分が下されることがあります。
運転手や取引先からの信頼にも関わるので、今のうちに改正内容をしっかりと把握して、社内体制を整えておきましょう。
もし、改正に伴う体制づくりに不安がある場合は、飯田橋事務所にご相談ください。
人事業務に精通した専門職員が、体制作りを丁寧にサポートします。
他にも、改善基準告示についてご不明点などがありましたら、お気軽にご質問ください。