2021年も残すところあとわずかとなりました。多様化する労働環境の中で、人事・労務関連の法律は毎年多くの改正が行われます。実務担当者はその対応に追われていることと思います。
本稿では実務担当者がチェックしておくべき来年の法改正ピックアップ。自社で対応を検討しておかなければならない改正を確認して、早めの準備をしておきましょう!
改正雇用保険法(雇用保険マルチジョブホルダー制度)【2022年1月1日】
年明けひとつめは雇用保険法です。65歳以上で、副業・兼業で働いている従業員がいる場合は要チェックです。今回の改正では複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者について、勤務時間を合計して要件を満たせば、特例的に雇用保険の被保険者になることができる、というのものです。
以下のすべての要件を満たす場合が該当になります。【詳細はこちら】
①複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること。
②2つの事業所(1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満であるものに限る。)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
③2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること。
なお、雇用保険に加入できるのは2つの事業所までです。また、2つの事業所は異なる事業主であることが必要です。
育児・介護休業法【2022年4月1日~】
2022年4月より段階的に施行されることになり、目玉としては男性の育児休業取得促進のための枠組みが新たに追加されることです。ホットな話題の一つで、弊所ではセミナーも開催予定です。
セミナーにご参加いただけない方も、下記のブログを参考に、直近で必要な実務対応を確認してみてください。
改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」【2022年4月1日~】
2020年6月以降、大企業においてはすでに施工されていますが、中小企業についても2022年4月から適用されます。従来、法的規定のなかったパワハラについての定義を定め、防止措置を事業主に義務付けたものになります。
こちらも早急な対応が求められる一つで、弊所では実務担当者向けのセミナー開催も予定しています。開催要項については年明けに弊所HP内にてお知らせしますので、是非ご活用ください。
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大【2022年10月1日~】
年金制度の法改正が2020年5月に行われました。その中でも実務担当者が改正内容を把握し、特に準備を進めておきたいのが、健康保険・厚生年金保険の被保険者適用拡大です。【詳細はこちら】
2022年10月より短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の加入が101人以上の従業員規模の事業所に義務付けられ、こちらも段階的に適用範囲が拡大されていきます。
新たに被保険者となる短時間労働者の中には、現在扶養の範囲内で働いており、自分で社会保険に加入したくないという方もいるかもしれません。従業員本人にしっかりと説明し、今後の意向を確認しておく必要があります。また、これまでは雇用期間が1年以上見込まれることが要件とされていましたが、通常の被保険者と同様に2カ月超であれば加入の義務が生じます。自社のパート・アルバイト従業員の労働条件や実態の確認、適用対象者の洗い出しを早めに行い、法改正に備えてスケジュールを立てて対策を立てていくことが重要です。
何から手を付けてよいかわからない、従業員への説明をどのようにしたらよいのか…など、対策にお困りの場合は弊所の個別相談会もご活用いただけますので、ぜひご参加ください。
その他年金制度に関しては、2022年4月より段階的に順次施行されていきます。対象となる従業員がいる場合には質問等が出てきて、対応が必要になるかもしれません。下記の改正についても知識をつけておきましょう。
●在職中の年金受給の仕方の見直し
●受給開始時期の選択肢の拡大
●確定拠出年金の加入可能要件の見直し
最後に
2022年以降の法改正では、少子高齢化による労働人口の減少なども背景に、男女ともにワークライフバランスの実現を目指す働き方や、より多くの人が長期的に多様な働き方ができる社会にむけての改正が急速に進んでいます。人事労務担当者は従業員への理解を促しながら、業務をスムーズに進められるように体制を整えておく必要があります。
自社の法改正対応への見通しを立てて、よいお年をお迎えください。