2022年4月から始まる改正育児介護休業法で何が変わるのか?

2021年(令和3年)6月9日に育児介護休業法の法改正が行われ、2022年(令和4年)4月1日より3段階で施行されます。育児介護休業法は2009年(平成21年)の法改正以降3度の改正を経験しており、少子高齢化や働き方の多様化など社会情勢の影響を大きく受けています。このブログでは、今回の改正の背景と今後の取組について最新の情報を交えて解説いたします。

こちらでも詳しく解説いたします。

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目次

今回の改正の背景

女性の出産・育児による退職

今回の改正の趣旨は、「令和3年改正法の概要」で下記のように明示されています。(※傍線は筆者)

出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするため、子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、育児休業給付に関する所要の規定の整備等の措置を講ずる。

少子高齢化による人手不足が社会的な課題としてある中、仕事と生活の両立をめぐり約5割の女性が出産・育児により退職している現状があります。さらに、その理由としては「両立の難しさで辞めた」(41.5%)が最も多く、両立が難しかった具体的理由として、勤務先の雰囲気や制度利用の困難さの影響があることが伺えます。

男性の家事・育児時間との関係

また、男性の家事・育児時間が女性の継続就業に与える影響もあると考えられています。「夫の家事・育児時間が長いほど、妻の継続就業割合が高く、また第2子以降の出生割合も高い傾向にある」ようです。

男性の育児休業制度利用を阻む要因

そこで、男性の育児休業の取得促進が今回の改正のキーワードとなります。しかし、男性の育児休業取得率は、女性の81.6%に対して12.65%(令和2年)と上昇傾向にあるものの依然として大きな差が存在しています。男性が育児休業制度を利用しなかった理由としては以下のことが挙げられています。

「収入を減らしたくなかったから」(41.4%)

「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから、または会社や上司、職場の育児休業取得への理解がなかったから」(27.3%)

「自分にしかできない仕事や担当している仕事があったから」(21.7%)

業務とも調整しやすい柔軟で利用しやすい制度と育児休業を申出しやすい職場環境等の整備

男性の育児休業取得期間は、5日未満が36.3%、8割が1か月未満(平成30年)であり、男性の多くは「出産後8週間以内」(46.4%)に取得していることから、この時期の取得ニーズが高いと考えられています。また、育児休業制度に関して個別の働きかけ等がないことが制度利用を阻んでいると考えられることから、育児休業を申出しやすい環境の整備が求められています。

これらの背景を受けて、下記のとおり3段階で改正法が施行されます。

【2022年(令和4年)4月1日施行】

(1)雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化

(2)有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

【2022年(令和4年)10月1日施行】

(3)産後パパ育休(出生時育児休業)の創設

(4)育児休業の分割取得

【2023年(令和5年)4月1日施行】

(5)育児休業取得状況の公表の義務化

2022年(令和4年)4月施行の内容

まずは第1段階である2022年(令和4年)4月施行の2つの内容を見ていきましょう。これらの内容は企業規模問わずすべての企業が対象となります。

妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置

本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関する以下の事項の周知と休業の取得意向の確認を、個別に行わなければなりません(産後パパ育休については、2022年10月1日から)。措置実施の留意点として、取得を控えさせるような形での周知及び意向確認の措置の実施は認められないこと、意向確認の措置については、事業主から労働者に対して、意向確認のための働きかけを行えばよいとされています。

【周知事項】

①育児休業・産後パパ育休に関する制度

②育児休業・産後パパ育休の申し出先

③育児休業給付に関すること

④労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

【個別周知・意向確認の方法】

①面談(オンライン面談可) ②書面交付 ③FAX ④電子メール等 のいずれか

※③、④は労働者が希望した場合のみ

【実施時期】

・妊娠・出産の申出が出産予定日の1カ月半以上前まで

 ⇒出産予定日の1か月前まで

・妊娠・出産の申出が出産予定日の1か月前までに

 ⇒2週間以内

・妊娠・出産の申出が出産予定日の1か月前~2週間前の間

 ⇒1週間以内

・妊娠・出産の申出が出産予定日の2週間前以降~子の出生後

 ⇒できる限り速やかに

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備

事業主は以下のいずれかの措置を講じなければなりません(産後パパ育休については、2022年10月1日から)。

①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施(全労働者を対象とすることが望ましいが、少なくとも管理職については研修を受けたことがある状態にすることが必要)

②育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口の設置

③自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供(労働者が閲覧できること)

④自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

有期雇用労働者が育児・介護休業を申し出ることができる条件の1つとして、改正前は「引き続き雇用された期間が1年以上」がありましたが、改正後はこれが撤廃され、要件が緩和されます。

したがって、育児休業は「1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない」、介護休業は「介護休業開始予定日から93日経過日から6か月を経過する日までに契約が満了することが明らかでない」という条件を満たせば休業の申出をすることができるようになります。

なお、「契約が満了することが明らかでない」とは、休業の申出があった時点で労働契約の更新がないことが確実であるか否かによって判断されます。契約更新の有無の条項について、「更新しない」旨の明示をしていない場合(「更新する場合があり得る」など)については、原則として、「労働契約の更新がないことが確実」とは判断されません。

2022年(令和4年)10月施行の内容

次に第2段階である2022年(令和4年)10月施行の2つの内容を見ていきます。これらの内容も企業規模問わずすべての企業が対象となります。

産後パパ育休(出生時育児休業)の創設

産後パパ育休(出生時育児休業)とは、子の出生後8週間以内に取得できる育児休業のことをいいます。この育児休業は4週間まで取得可能です。また、1子につき2回に分割(例えば、出生時や退院時に1回、その後もう1回)することもでき、その場合は1回目の申出時にまとめて申し出ることが必要となります。申出期限は原則として休業の2週間前までとなっています。

その他のポイントについては下記のとおりです。

労使協定の締結により申出期限を1か月前までとすることが可能

この申出期限ですが、労使協定を締結することによって1か月前までとすることが可能です。その場合は次の①~③の職場環境の整備等の措置(今回の法的義務を上回る措置)を講ずる必要があります。

①次に掲げる措置のうち、2以上の措置を講ずること。

・雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施

・育児休業に関する相談体制の整備

・雇用する労働者の育児休業の取得に関する事例の収集及び当該事例の提供

・雇用する労働者に対する育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する方針の周知

・育児休業申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分又は人員の配置に係る必要な措置

②育児休業の取得に関する定量的な目標(取得率などの数値目標)を設定し、育児休業の取得の促進に関する方針を周知すること。

③育児休業申出に係る当該労働者の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取組(最初の意向確認のための措置の後に、返事がないような場合は、リマインドを少なくとも1回は行うことが必要)を行うこと。

労使協定の締結により休業中の就業が可能

具体的な手続の流れは以下のとおりです。

①労働者が休業中に就業することを希望する場合は、休業開始予定日の前日までに就業可能日、就業可能日における就業可能な時間帯(所定労働時間内の時間帯に限る。)その他の労働条件(テレワークの可否を含む就業の場所に関する事項など)について事業主に申出

②事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で、就業させることを希望する日(就業させることを希望しない場合はその旨)、就業させることを希望する日に係る時間帯その他の労働条件を労務者に速やかに提示

労働者が同意

④事業主は、同意を得た旨と就業させることとした日時その他の労働条件を労働者に通知。

なお、休業中の就業日数等には上限があります。

・休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分

・休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満

休業中の就業については、下記の点にも留意してください。

・事業主から労働者に対して就業可能日等の申出を一方的に求めることや、労働者の意に反するような取扱いがなされてはならないこと。

・休業中の就業の仕組みについて知らせる際には、育児休業給付金及び育児休業(出生時育児休業含む。)期間中の社会保険料免除について、休業中の就業日数によってはその要件を満たさなくなる可能性があることについてもあわせて説明すること。

労使協定の締結により産後パパ育休を適用除外できる労働者

労使協定を締結することで、次の労働者を対象外とすることが可能となります。

①雇用された期間が1年未満の労働者

②申出の日から8週間以内に雇用関係が終了する労働者

③週の所定労働日数が2日以下の労働者

有期雇用労働者の産後パパ育休の要件

有期雇用労働者については、子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日から6月を経過する日までに契約が満了することが明らかでない場合に対象となります。

育児休業の分割取得

改正後は、1歳未満の子について、原則2回まで分割して取得することができるようになります。これにより、様々なタイミングによって夫婦が交代で育休を取得しやすくなります。

2023年(令和5年)4月施行の内容

従業員数1,000人超の企業は、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられます。公表内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」の予定となっています。

まとめ

今回の改正により、新たに創設された産後パパ育休(出生時育児休業)、育児休業の分割取得、有期雇用労働者の要件緩和について、就業規則の改定が必要となります。育児休業を取得しやすい環境整備(研修や相談窓口の設置など)と併せて規定の整備を進めてください。

男性が育児休業を取得しやすい環境になることが、女性の継続就業につながり、人材不足の解消や優秀な人材の確保に貢献することが望まれます。

※このブログの内容は、2021年(令和3年)11月19日現在の情報に基づいています。

こちらでも詳しく解説いたします。

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【参考資料】

・厚生労働省 雇用環境・均等局 職業生活両立課「育児・介護休業法の改正について」(2021年11月5日)

・育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の
一部を改正する法律の概要(令和3年法律第58号、令和3年6月9日公布)

この記事を書いた人

社会保険労務士 横島 洋志

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