「労働トラブルが起こって、従業員からあっせんを申し立てられた!どうすればいい?」
「誰か会社の代理人として、あっせんに立ち会わせることはできるの?」
「あっせん代理人は具体的に何をしてくれるの?」
人事・総務部の責任者の方で、このような悩みを抱えていないでしょうか?
なるべく円滑に交渉を進めるために、あっせんには代理人を立てて交渉に臨みたいと考えている方は多くいます。
しかし、あっせん代理人は誰に頼めばいいのか、具体的には何をしてくれるのか分からないと代理業務を依頼できませんよね。
この記事ではあっせん代理を頼みたい方や、代理人として何をしてくれるのか知りたい方に向けて、次の内容を紹介します。
- あっせん、あっせん代理人とは
- 誰が代理権を持っているのか
- 代理を依頼するメリット
- 費用
失敗しないあっせん代理人の選び方も紹介しているので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
あっせんとは|第三者が入って話し合いで労働紛争を解決すること
そもそもあっせんとは、どういった制度なのでしょうか?
あっせんは、労使間で起きたトラブルが自主的に解決できないとき、第三者が介入して解決を図る制度です。
労働委員会や紛争調整委員会などが「あっせん員」という名の第三者になり、双方の話し合いの調整を行います。
あっせん制度の流れ
従業員と会社の間の紛争(個別労働関係紛争)のあっせん制度は、おおむね次の流れで行われます。
①あっせんを申請する
労働者、または使用者が労働委員会にあっせんを申請します。
労働委員会だけではなく、紛争調整委員会でも申請可能です。
- 労働委員会とは
-
労使トラブルを解決するために、各都道府県労働委員会に設置された委員会。
公益を代表する「公益委員」、労働者を代表する「労働者委員」、使用者を代表する「使用者委員」で構成されている。
- 紛争調整委員会とは
-
労使トラブルを解決するために、都道府県労働局に設置された委員会。
弁護士、大学教授、社会保険労務士など労働問題の専門家が委員となっている。
②事前調査が行われる
委員会から選出されたあっせん員が、当事者双方から紛争の状況を伺います。
その際に、申請を受けた相手方にあっせんの参加意思も確認します。
③あっせんが実施される
当事者の相手方が参加する場合、あっせんが実施されます。
あっせん員が当事者双方から意見や主張を聞き、解決案の提示などを行います。
④あっせんの終結
いずれかの形で、あっせんが終結します。
解決:両者が解決案に納得すれば、合意書を作成して締結する
打ち切り:紛争解決の見通しが立たない場合は、あっせん員が打ち切りを宣言する
取り下げ:あっせん実施前に当事者間で解決すれば、申請者があっせんを取り下げる
「打ち切り」となった場合、あっせん員から他の紛争解決機関を紹介されます。
また、いずれかの形で終結しても、あっせん当日に当事者双方が顔を合わせることはありません。
あっせんの対象になる紛争
次の個別労働紛争は、あっせんの対象になります。
- 賃金、解雇、雇い止めなど労働条件に関する紛争
- いじめやパワハラなどの職場環境に関する紛争
- 会社分割による労働契約の承継、同業他社への就業禁止などの労働契約に関する紛争
- 退職に伴う研修費用の返還、会社所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争
- 募集・採用に関する紛争(ただし、紛争調整委員会によるあっせんの対象にはならない)
あっせんの対象にならない紛争
次の紛争は、あっせんの対象にはなりません。
- 労働組合と事業主の間の紛争
- 労働者と労働者の間の紛争
- 裁判で争っている、または確定判決が出ているなど他の制度で処理されている紛争
- 労働組合と事業主のトラブルとして取り上げられていて、自主的に解決するために話し合いが進められている紛争
あっせんと他の制度との違い
あっせんの他にも、民事訴訟や労働審判といった紛争解決制度があります。
一見どれも同じような制度に思えますが、どのような違いがあるのでしょうか?
下記の表をご覧ください。
あっせんと他の制度との大きな違いは、費用と処理期間です。
他2つの制度は有料ですが、あっせんの利用にはお金はかかりません。
また、処理期間も3つの制度のなかで最も短いことが分かりますね。
このように、どれも紛争解決のための制度ですが、それぞれ相違点があることがうかがい知れます。
あっせん実施のメリット
あっせんの実施には、4つのメリットがあります。
- 費用がかからない
- 非公開なのでプライバシーが守られる
- 労働者と顔を合わせずに交渉できる
- 手続きに時間や手間がかからない
裁判で解決するより費用と時間がかからないのが、あっせんの大きなメリットです。
ただしあっせん代理人に依頼した場合は、その報酬を負担することになります。
あっせん実施のデメリット
あっせんにはデメリットも存在するので、忘れずに確認しておきましょう。
- 相手方が参加しないことがある
- 必ずしも解決するわけではない
- 解決できなかったら裁判に発展する恐れがある
あっせんは短期間で解決しやすいですが、全てのトラブルが円満に終結するとは限りません。
当事者同士の対立が深く、あっせんは打ち切られて裁判をすることになった、というケースもあります。
あっせん代理人とは|特定社労士が担う当事者の代理人
あっせん代理人は、当事者の代理として意見を述べたり相手方と交渉する人のことです。
弁護士と特定社会保険労務士(以下.特定社労士)のみが、あっせん代理人を受任できます。
特定社労士は、労働紛争の解決に長けた社労士です。
専門家としての知識と経験を活かして、迅速かつ円満な解決が期待できます。
あっせん代理人の業務内容
あっせん代理人は、主に次の業務を行います。
- あっせん手続きについての相談
- あっせん申請書・答弁書の作成
- 和解の交渉
- 和解契約の締結
あっせん代理を依頼するメリット
会社の代理人として、あっせん代理を依頼するメリットは3つあります。
- あっせん業務に時間をとられない
- 精神的に心強い
- 労使問題の専門家だから円満解決に導きやすい
特定社労士にあっせん代理人を依頼するときの費用
本記事を掲載している飯田橋事務所の、あっせん代理費用を参考価格として紹介します。
顧問先事業所 | 相談は無料 |
その他事業所 | 初回:相談無料 2回目以降:5,000円/30分 |
あっせん受託時着手金 (事前調査料及びあっせん申請書、答弁書作成・提出料を含む) | 50,000円 |
あっせん期日の陳述 | 15,000円/1時間 |
下記の表は成功報酬です。
申請人の場合 | 解決金の10% |
被申請人の場合 | 請求額と解決金の差額に対して10% |
※別途・消費税
代理費用、および成功報酬は社労士事務所によって異なります。
あくまで一例として参考にしてください。
失敗しないあっせん代理人(特定社労士)の選び方
個別労働紛争のあっせん代理人は、特定社労士に依頼できると紹介しました。
しかし依頼するといっても、どうやって特定社労士を選んだらいいのかとお悩みの方もいると思います。
従業員との紛争をつづがなく終わらせるために、社労士選びは失敗したくないものです。
結論から言うと、特定社労士を選ぶ際は次のポイントをチェックしてください。
- 行きやすい場所に社労士事務所があるか
- 説明が分かりやすいか
- 仕事が早いか
- 社会保険労務士名簿に付記されているか
それぞれのポイントを、順に説明していきます。
①行きやすい場所に社労士事務所があるか
まず、会社と社労士事務所の距離を確認しましょう。
事務所に赴いて相談をするとき、場所が遠いと移動にかかる時間がもったいないです。
時間だけでなく交通費もかかるので、できるだけ会社に近い社労士事務所を選びましょう。
②説明が分かりやすいか
次に、会話をするときに説明が分かりやすいかチェックしましょう。
難しい専門用語をたくさん使われると、なにを話しているのか分からなくなりますよね。
分かりやすく説明してくれる特定社労士だと、会話はスムーズになって相談もしやすくなります。
③連絡や対応が早いか
せっかく代理業務を依頼したのに、連絡が取れなかったり、対応が遅いと不安になってしまいますよね。
あっせん業務も滞ってしまい、いつまでも紛争が解決しないままになります。
最初に社労士事務所に連絡を取るときに、メールや電話の返事がどれぐらいで届くのか確認しましょう。
④社会保険労務士名簿に掲載されているか
先ほど説明したように、あっせん代理は弁護士以外では特定社労士しか受任できません。
特定社労士と名乗るには特別講習を修了し、紛争解決手続き代理業務試験に合格する必要があります。
さらにそれらの旨を、社会保険労務士名簿に付記しなければいけません。
「特定社労士ではない人にあっせん代理を依頼してしまった!」となったら、当然大きなトラブルに繋がります。
そうした事態を防ぐために、事前に社会保険労務士会のサイトで、該当の特定社労士が掲載されているか確認しましょう。
- ネットで「全国社会保険労務士会連合会」のサイトを検索する
- 「社労士会リスト」をクリックする
- 該当の社労士がいる都道府県をクリックする
- 遷移した社労士会のサイトで社労士を検索する
上記の流れで、依頼したい特定社労士が掲載されているか確認してください。
まとめ|労働紛争の早期解決を望むならあっせん代理人を依頼しよう
最後に、この記事のおさらいをしましょう。
- あっせんとは
-
従業員と会社の間に第三者が入り、話し合いによって解決に導く制度。
- あっせん代理人とは
-
一方の当事者の代理人として、和解交渉したり手続きを行う人のこと。
弁護士か特定社労士しか認められない。
- あっせん代理人の業務内容
-
- あっせん手続きについての相談
- あっせん申請書の記載・提出
- 和解の交渉
- 和解契約の締結
- あっせん代理人を依頼するメリット
-
- あっせん業務に時間をとられない
- 精神的に心強い
- 労使問題の専門家だから、円満解決に導きやすい
- 失敗しないあっせん代理人(特定社労士)の選び方
-
- 行きやすい場所に社労士事務所があるか
- 説明が分かりやすいか
- 仕事が早いか
- 社会保険労務士名簿に付記されているか
突然従業員からあっせんの申立をされたら、会社側としてはとても戸惑うかと思われます。
速やかに解決して労働状況の改善に努めるなら、労使問題の専門家である特定社労士にあっせん代理を依頼しましょう。
この記事を掲載している飯田橋事務所も、あっせん代理人の依頼を承っています。
顧問先事業所ではなくても初回相談は無料となっているので、お気軽にお問い合わせください。
顧問先事業所 | 相談は無料 |
その他事業所 | 初回:相談無料 2回目以降:5,000円/30分 |
あっせん受託時着手金 (事前調査料及びあっせん申請書、答弁書作成・提出料を含む) | 50,000円 |
あっせん期日の陳述 | 15,000円/1時間 |