「せっかく採用したのに、配置転換を断られた…」
そんな悩みをお持ちではありませんか?
従業員に配置転換を拒否されるケースは、企業側にとっても大きな痛手となります。
しかし、従業員には配置転換を拒否できる正当な理由が存在することも事実です。
そこで、この記事では以下の内容をご紹介します。
- 従業員に配置転換を拒否された際に企業側が取るべき対応
- 配置転換拒否が認められるケース
- トラブルを防ぐための方法
本記事を参考にして、スムーズな配置転換を目指しましょう。
従業員に配置転換を拒否された場合の対処法
従業員に配置転換を拒否された場合、企業側はまず冷静に状況を把握し、適切な対応を取る必要があります。
感情的な対立を避け、法令遵守を徹底しながら、問題解決を目指しましょう。
①拒否した理由をヒアリングする
配置転換を拒否した従業員には、まずその理由を丁寧にヒアリングすることが重要です。
拒否の理由が曖昧な場合は、具体的にどのような点が不安や不満なのかを明確に聞き取りましょう。
従業員の主張を最後まで聞き、理解を示す姿勢が大切です。
配置転換を拒否する理由は、主に下記の理由が考えられます。
- 家庭の事情
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介護や育児などの家庭の事情で、転勤に伴う引っ越しや勤務時間の変更が難しい場合など。
- 健康上の理由
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持病や体質、あるいは精神的な理由で、転勤先での勤務が困難な場合など。医師の診断書などが提出される場合もある。
- キャリアプランとの不一致
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現在の仕事内容やキャリアパスを重視しており、配置転換によって自身のスキルアップやキャリア形成に支障が生じると考えている場合など。
- 職場環境への不安
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転勤先での人間関係や職場環境に不安を感じている場合など。
過去の経験や、具体的な情報に基づいた不安である場合もある。
- 業務内容への不満
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配置転換後の業務内容に興味が持てなかったり、自身の能力や経験を活かせないと感じたりする場合など。
②配置転換の必要性を説明する
従業員が納得できるよう、配置転換の必要性を丁寧に説明する必要があります。
会社全体の経営状況や人員配置の状況、そして配置転換によって期待される成果などを具体的に示し、理解を求めましょう。
また、配置転換が従業員自身のキャリアアップに繋がる可能性についても説明することで、納得を得やすくなる可能性があります。
③給与や手当などの待遇を見直す
配置転換によって従業員に金銭的な負担や不利益が生じる場合は、給与や手当などの待遇を見直すことを検討する必要があります。
転勤に伴う引っ越し費用や住宅手当の支給、通勤費用の負担など、従業員の負担を軽減するための具体的な対策を提示することで、配置転換への理解と協力を得やすくなるでしょう。
待遇面での改善は、従業員のモチベーション維持にも繋がります。
④懲戒処分を検討する
企業側が提示する配置転換の命令が、業務上の必要性に基づき、かつ、従業員にとって著しい不利益がないと認められる場合には、従業員には配置転換命令に従う義務があります。
ただし、懲戒処分を検討する場合は、慎重に進める必要があります。
安易な懲戒処分は、従業員のモチベーション低下や労使関係の悪化に繋がりかねません。
配置転換を拒否した従業員に対しては、まずは話し合いを通じて理解を求める姿勢が重要です。
それでもなお、拒否を続ける場合には、就業規則に基づいた懲戒処分を検討する必要がある場合もあります。
ただし、懲戒処分はあくまでも最終手段として、慎重に判断してください。
配置転換の拒否が認められる5つの正当な理由
会社から配置転換を命じられた場合、従業員は必ずしも従わなければならないわけではありません。
労働契約法第15条は、労働条件の変更について「就業規則の変更」などの合理的な理由が必要と定めています。
つまり、従業員側に正当な理由があれば、会社の命令する配置転換を拒否できる場合があります。
では、具体的にどのような場合、配置転換を拒否できるのでしょうか?
ここでは、配置転換の拒否が認められる主な正当な理由を5つ解説します。
正当な理由に該当するかどうかは、個々の状況によって判断する必要があるため注意が必要です。
職種・出勤場所が限定されている
採用時に職種や勤務場所が限定されている場合、会社はその範囲内で配置転換を行う必要があります。例えば、
- 営業事務として採用し、勤務地は東京都内
- システムエンジニアとして採用し、勤務地は本社
といった契約内容の場合、会社が一方的に営業職への転換や、大阪支店への転勤を命じることはできません。
これは、労働契約の内容に反するからです。
ただし、契約書や就業規則に「将来的に他の部署への異動や転勤の可能性がある」といった記載がある場合は、拒否が難しい場合もあります。
業務上の必要性がない
配置転換を行うには、業務上の必要性があることが大前提です。
会社側の都合のみで、従業員に不利益を強いるような配置転換は認められません。
例えば、
- 業績不振の責任を一方的に従業員に押し付け、閑職への異動を命じる
- 従業員との個人的なトラブルを理由に、他の部署への異動を強要する
といったケースは、業務上の必要性がないと判断される可能性があります。
配置転換の理由が妥当かどうかは、会社の経営状況や人事評価の基準なども考慮されます。
従業員の給与が下がる
配置転換によって従業員の給与が減額される場合、原則として拒否することができます。
なぜなら、給与は労働契約の重要な要素であり、会社の一方的な変更は認められないからです。
例えば、
- 管理職から一般社員への降格を伴う配置転換で、給与が大幅に減額される
- 残業時間の少ない部署への異動により、残業代が減り収入が減少する
といったケースでは、従業員は配置転換を拒否することができます。
ただし、会社の業績悪化などにより、給与体系全体の見直しが行われる場合は、この限りではありません。
従業員の不利益が大きい
配置転換によって従業員に著しい不利益が生じる場合、拒否が認められる可能性があります。具体的には、
- 単身赴任や長距離通勤を余儀なくされ、家族の生活に大きな影響が出る
- 持病の治療や介護などの事情により、転勤が困難である
といったケースが考えられます。
このような場合は、会社の都合だけでなく、従業員の置かれている状況や家庭環境などを総合的に判断する必要があります。
不当な目的で配置転換を命令している
会社が、従業員を退職に追い込む目的や、嫌がらせを目的として配置転換を命じることは違法です。
このような場合は、配置転換を拒否することができます。例えば、
- 従業員組合に加入したことを理由に、遠隔地への転勤を命じる
- 上司に意見したことをきっかけに、閑職への異動を命じる
といったケースは、不当な目的による配置転換とみなされる可能性があります。
配置転換に関するトラブルを防ぐ方法
配置転換は、業務上の必要性や従業員のキャリアアップなどの目的で行われますが、トラブルに発展することも少なくありません。
トラブルを未然に防ぎ、円滑な配置転換を実現するためには、企業側の事前の対策が重要となります。
配置転換に関するルールを明確化し、周知徹底する
就業規則への明記はもちろんのこと、配置転換の際に考慮すべき事項や手続きを具体的に定めた規定を設けることが重要です。
- 配置転換の根拠となる規定(就業規則の該当条項など)
- 配置転換を行うことができる範囲(業務内容、勤務地、所属部署など)
- 配置転換の対象となる従業員
- 配置転換の手続き(通知期間、面談の実施など)
- 異動に伴う費用負担(引っ越し費用、交通費など)
- 配置転換を拒否できるケース
- 配置転換に関する相談窓口
これらの内容を分かりやすくまとめた資料を作成し、従業員が入社時に必ず目を通せるようにする、社内ポータルサイトに掲載するなど、周知徹底を図りましょう。
また、定期的な研修などを実施し、従業員の理解を深めることも有効です。
従業員の意見を尊重し、コミュニケーションを徹底する
配置転換を一方的に通達するのではなく、従業員の意見を聞き、納得感を得られるよう丁寧に説明することが大切です。
従業員の不安や疑問を解消し、安心して業務に取り組めるよう配慮しましょう。
- 従業員のキャリアプランや希望をヒアリングする
- 配置転換の必要性や目的を具体的に説明する
- 従業員の不安や疑問に寄り添い、真摯に対応する
- 配置転換後のキャリアパスを示す
配置転換後のフォローアップ体制を整える
配置転換後も、従業員が新しい環境にスムーズに適応できるよう、定期的な面談や研修など、継続的なサポートが必要です。
- 新しい業務内容の習得状況や課題の把握
- 人間関係構築のサポート
- 配置転換に伴うストレスや不安のケア
これらの取り組みを通じて、企業は従業員との信頼関係を築き、円滑な配置転換を実現することができます。
配置転換は、企業と従業員双方にとって、メリットのあるものでなければなりません。
企業は、従業員の権利と利益を尊重し、納得性と透明性の高い人事制度を構築していくことが求められます。
まとめ
従業員に配置転換を拒否された場合、企業側はまず拒否の理由をきちんと聞き取り、配置転換の必要性について丁寧に説明する必要があります。
それでも納得してもらえない場合は、給与や待遇を見直したり、配置転換後のキャリアパスを示すなど、従業員にとってメリットとなる条件を提示することが重要です。
配置転換をめぐるトラブルを避けるためには、就業規則に配置転換に関する規定を設け、採用時にしっかりと説明しておくことが大切です。
また、従業員の意見を尊重し、個々の事情に配慮した対応を心がけましょう。