テレワーク継続・導入のポイント (就業規則編)

テレワークルールを決めることで、従来の労働条件に変更が生じることが考えられます。テレワークが円滑に実施されるため、また、従業員とのトラブルを防止するため、テレワークルールを就業規則(テレワーク規程)に落とし込む必要があります。

本稿では、就業規則に落とし込む際に最低限考えなければならない事項を見ていきます。

規定例文も載せていますので、参考に自社の規則作成の参考にもしてみてください。

目次

テレワーク勤務の目的

テレワークを実施する際は、目的に応じて認めるテレワークの種類や対象者などが決まっていくため、なぜテレワークを実施するのかという目的を明確にしておく必要があります。事業継続のためのテレワークなのか、従業員のワークライフバランスの向上なのか、業務効率の向上のためなのかといった目的を定義する必要があります。

例1 この規程は、テレワークにより、
災害時の事業継続性の確保を可能とすることを目的とする。
例2この規程は、テレワークにより、
従業員の私生活の向上を可能とすることを目的とする。

テレワーク勤務の定義

 導入ポイント編で述べたように、テレワークには在宅勤務、モバイル勤務、サテライトオフィス勤務という3つの形態があります。

会社としては在宅勤務だけを認めるとするつもりでも、テレワーク勤務を認めるとするだけでは、モバイル勤務を行っても良いと勘違いされてしまう可能性があります。思わぬ情報漏洩のリスクが発生する可能性もありますので、就業規則にはっきり明示する必要があります。

例1 テレワークは在宅勤務のみを認め、
在宅勤務とは、従業員の自宅で情報通信機器を利用した業務をいう。
例2 在宅勤務とは、従業員の自宅、その他自宅に準じる場所(会社指定の場所に限る。)で
情報通信機器を利用した業務をいう。

対象者

対象者についても従業員とのトラブルになりうる事項ですので、全従業員が対象なのか、正社員だけを対象とするか、勤続年数等で対象者を限定するかなどを明示しておく必要があります。

例 在宅勤務の対象者は、次の各号の条件を全て満たした従業員とする。
(1)在宅勤務を希望する者
(2)勤続1年以上の者で、在宅勤務によって業務に支障がないと認められる者

また、災害や伝染病等で全従業員へのテレワークを命じるための定めや、テレワークを取り消す定めをすることも考えておいた方が良いと考えられます。

例1 会社が従業員に対し、テレワークの実施を指示する場合がある。
例2 会社は業務上その他の事由により、テレワークの許可を取り消す場合がある。

テレワーク利用方法

届出のみでテレワークを認めるのか、テレワークは許可制とするのか、届出・許可はいつまでに誰に、どのような方法で提出するかなども定める必要があります。会社の状況によってどのような利用方法をとるのかは大きく変わると思われますが、テレワーク下における管理の問題となるため、会社の状況に則して定める事項となります。

例1 在宅勤務を希望する者は、原則として1週間前までに、
在宅勤務申請書を所属長に提出するものとする。
例2 在宅勤務を希望する者は、原則として1週間前までに、
在宅勤務申請書を所属長に提出し、その許可を受けなければならない。

労働時間・休憩・休日

出勤時と変更がないのであれば、「就業規則〇○条の定めるところによる」と定めれば良い

事項ですが、変更があれば、その内容を定める必要があります。

よくある事項として始業・終業時刻や休憩時間の変更の要望がでることがあります。

例 所属長の承認を受けて始業時刻、終業時刻、休憩時間の変更をすることができる。

出退勤管理・業務報告・連絡体制

テレワーク勤務者が何時から仕事を始め、何時まで仕事を行ったかの把握のため、出退勤管理の方法についても定める必要があります。勤怠管理ツールなどを用いていた場合は、テレワークにおいても同様の出退勤管理を行えると思いますが、タイムカード管理であった場合は、別の管理方法を定める必要があります。

例 テレワーク勤務者は、勤務の開始及び終了について
電話報告(メール報告・勤怠管理ツール報告)をしなければならない。

テレワーク勤務者の作業内容等を把握するため、業務報告についても定めておいた方が

良い事項です。出退勤管理同様、社内システム・電話報告・メール報告等、業務報告の方法

のほか、報告頻度を定めることとなります。

例 テレワーク勤務者は、毎日、社内システムを通じて
所属長に所要の業務報告をしなくてはならない。

また、テレワーク勤務時の事故・トラブル発生時の連絡体制も定めておくほうが良い事項

です。

例 在宅勤務時における連絡体制は次のとおりとする。
(1)事故・トラブル発生時には所属長に連絡すること。なお、所属長が不在の場合は、所属長が指名した代理の者に連絡すること。
(2)社内における従業員への緊急連絡事項が生じた場合、在宅勤務者 へは、所属長が連絡すること。

時間外労働・中抜け 

時間外労働について、出勤時と変更がある場合は、その内容を明示する必要があります。通常の時間外労働については許可制にするが、休日労働と深夜労働は禁止するといったことも考えられます。

例 テレワーク勤務者が時間外労働をする場合は、所定の手続きを経て、所属長の許可を受けなければならない。
テレワーク勤務者は休日労働及び深夜労働を行ってはならない。

中抜け時間については、始業終業時間の変更同様、従業員から要望があがることがありますので、認める・認めないのほか、認める場合は、中抜け時間の給与はどうなるのかといった取扱いについて定める必要があります。

例1 勤務時間内の私的事由による労働の中断は、原則として認めない。ただし、やむを得ない事情で労働を中断する必要がある場合は、予め所属長の許可を得て、労働時間中の中抜けをすることができる。
例2  中抜け時間は無給とする。

テレワークを認めることで、通信料・光熱費といった出勤時にはかからなかった費用が発生すること、出勤が減ったために通勤費が減ることといった変化が生じます。その際、これらの費用負担をどうするかといった点も考えなければなりません。

通信費・光熱費の負担は会社と従業員のどちらが負担するか、会社の負担とする場合はどうやって算出するかを定めなければなりません。算定が難しい場合、在宅勤務手当として対応することも考えられます。

通勤手当については、在宅勤務の日数が一定を超えたら実費精算とすることも考えられます。

例1 会社が貸与する情報通信機器を利用する場合の通信費は会社負担とする。
在宅勤務に伴って発生する水道光熱費は在宅勤務者の負担とする。
例2 会社は、賃金規程に定めるところにより、終日在宅勤務を行った者に対し、
1日当たり〇円の在宅勤務手当を支給する。
例3 終日の在宅勤務が週〇日以上の場合は、毎月定額の通勤手当は支給せず、
実際に勤務に要する往復運賃の実費を支給する。

このように検討しなければならない点は多岐に渡りますが、テレワーク検討の材料にしていただけたら幸いです。

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この記事を書いた人

社会保険労務士 山之内大

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