成果主義による人事(給与)制度

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新しい制度の可視化

社会保険労務士法人飯田橋事務所では従業員おおよそ30人規模の人事制度を構築する「人事顧問」というメニューがあります。それにはこんな訳があります。

現在日本にも拠点がある、アメリカはシカゴに本拠を置く大手法律事務所メイヤーブラウンではかつて従業員(ここでは弁護士ということになるが)が顧客に請求した時間数と、もたらした収益額を給与制度に連動させたそうです。

この新しい給与制度では従業員一人一人の成績を目に見えるようにしました。事務所は従業員に点数を割り振り、それがその年の利益の分け前に変換され上位50人の名前を公表しました。

理屈ではこうした開示によってほかの従業員が発奮して仕事に励むはずでしたが実際には「従業員の間にこれ以上はないというほどの敵意を生み出した」そうです。

メイヤーブラウンの新しい給与制度は従業員の気持ちに影響を与えただけでなく行動も変えました。それは先に述べたように経営陣が望んだ方向にではなく、この給与制度の仕組みを考えれば完全に合理的な行動、つまり従業員はお互いに協力することをやめたのです。

給与はいわゆるゼロサムゲームなのだから同僚に手伝いを求めれば、それは売り上げを分けることになります。行動の変容はさらに続き、同僚の顧客を横取りしようと「お互いに競うように」なったのです。

個人ではなく全体での生産性

メイヤーブラウンでは最終的にこの給与制度を廃止しました。

現代の多くの仕事では、生産性とは努力の集合体として理解されるべきであり、労働者一人一人の仕事の総計として考えるものではない、といわれます。

ほぼすべての労働者は成果によって給与を払ってほしいと思っています!

給与を支払う側も個人の成果をもとに給与を分配したいと考えています。ただ、理屈はそうでも実際には信じられないほど複雑で、多くの場合実施不可能で、行われているところはほとんどありません!

ある研究によれば企業が成果主義による給与体系に飛びついたのは景気が後退した1980年代初めで2000年代初めにピークを迎えその後は減り続けているそうです。

最近の研究からは成果主義による給与制度を採用した企業では業務中にケガをする率が高くなり企業の業績も製品の品質も下がり残業も増える傾向にあることがわかっています。

誰ともかかわらずに働いている人はほとんどいない、ということです。労働者の生産性はまわりの人と一緒になって貢献した結果なのです。

中小企業、とりわけ従業員30人にも満たない企業に大企業の人事制度や本屋で売っている人事制度の本の内容を取り入れてもうまくいかないのは言うまでもありません。

この記事を書いた人

社会保険労務士 植田 秀樹

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