働き方改革の推進に向けて、労働時間を減らす方法に頭を悩ませてはいませんか。
その方策の一つとして、1年単位の変形労働時間制の導入が有効になることがあります。
しかし、運用面を伺うと、1年間の休日日数が105日であるとしながら年間カレンダーで休日を明確に定めてなかったり、1年単位の変形労働時間制を導入する際に、協定書や協定届の作成・届け出が必要であるということをご存じなかったりといった、問題のあるケースが多くあります。
まずは制度の概要を押さえましょう。
なぜ休日日数を105日とするのか
会社で、下記のように休日を定めた場合、このままでは違法となってしまいます。
2019年5月
労働基準法第32条では、「1日8時間、週40時間」を法定労働時間と定めています。
5/12~18の週は、1日8時間労働の場合、8時間×6日で週の労働時間が48時間になっています。
よって、通常はこのようなカレンダーを作成することはできません。
これを可能とするのが1年単位の変形労働時間制なのです。
年間休日を105日とすると、年間労働日数は260日(365日-105日)です。
260日×8時間(1日)=2,080時間(年間労働時間)
1年間には52週あるため、
2,080時間÷52週=40時間
となり、1週間の平均労働時間が40時間となるため、1年間でみて、週の平均が40時間を超えなければ良いとしたのが1年単位の変形労働時間です。
よって、年間最低休日日数は105日となります。
割増賃金の支払方法
上記カレンダーでは、通常であれば5/18日の労働は、週40時間を超えていますから、すべて時間外労働としての割増賃金の支払いが必要となります。1年単位の変形労働時間制では、元々労働日であった5/18日の所定労働時間分(8時間)は割増賃金の支払いは不要です。
効果的な1年単位の変形労働時間制の導入方法
繁忙月と閑散月がはっきりしている会社ほど、1年単位の変形労働時間制を導入することで、時間外労働を効果的に減らすことができます。
2019年8月
2020年3月
例えば、8月が閑散月で3月が繁忙月の会社の場合、上記のように、8月の休日を12日、3月の休日を5日のようにすることで、繁忙月の労働日数を増やし、時間外労働を抑制することができます。
まとめ
今回は、制度を活用することで労働時間を減らすことができるケースについてご紹介しました。
制度を正しく運用するためには、毎年、労使協定書の取り交わしや労使協定届を所轄監督署に届け出を行う等の要件がありますので、ご注意下さい。
今後も、制度の活用の他、内部の取り組みにより、労働時間を減らすことができたケースなどお伝えしていく予定です。
また、1年単位の変形労働時間制についてのご相談は、当事務所開催の無料個別相談会をご利用下さい。
社会保険労務士 土井 牧子