労働者死傷病報告書とは?休業4日未満の場合や提出期限などを解説

「労働者死傷病報告書ってなに?」
「休業4日未満でも報告は必要なの?」
「誰がどこに提出すればいいの?」

労働者死傷病報告書とは、労働災害によって労働者が死亡・休業した際に提出するのが労働者死傷病報告書です。令和7年1月1日からは、電子申請が義務化されます。

労災の再発防止や事故の原因解明のために、会社は滞りなく報告することが義務付けられています。

しかし、いざ報告をしようと思っても、使用する様式や記載方法等が分からずに戸惑っている人事労務担当者の方もいるのではないでしょうか。

そこで、今回は以下の内容を解説します。

  • 労働者死傷病報告書とは
  • 提出者と提出先
  • 派遣労働者が被災した場合
  • 休業なしの場合
  • 休業4日未満の場合と4日以上の場合に使用する様式
  • 様式ごとの提出期限・記入例

この記事を読むと、スムーズに労働者死傷病報告書を作成・提出することができるので、ぜひ最後まで読んで参考にして下さい。

目次

労働者死傷病報告書とは

労働者死傷病報告書とは

労働者死傷病報告書は、労働者が労働災害により死亡・休業した際に提出する報告書です。

労働安全衛生法に基づき、労災が発生した際には、会社は「労働者死傷病報告書」を提出しなくてはいけません。

なお、休憩中の負傷で、事業場や付属する建築物の不備や欠陥による負傷等、労働災害となる場合についても報告が必要です。

労働者死傷病報告書により、労災の再発防止や事故の原因解明に役立ちます。

労働死傷病報告書の作成・提出者

労働死傷病報告書の作成労災に遭遇した従業員を直接雇用している事業主
労働死傷病報告書の提出者

労働者死傷病報告の作成・提出者は、原則として、労災に遭遇した従業員を直接雇用している事業主です。

建設業の下請け労働者が被災した場合も、被災労働者を直接雇用している下請けの事業主が提出します。

また派遣労働者が被災した場合は、派遣先と派遣元の双方が手続きを行う必要があります。

その場合の手続きの流れは以下の通りです。

  1. 派遣先が労働基準監督署に報告を提出する
  2. 報告内容の写しを派遣元に送付する
  3. 派遣元は送付された内容を元に、労働者死傷病報告書を作成・提出する
  4. 提出先は、それぞれの事業場の住所を管轄する労働基準監督署

労働死傷病報告書の作成・提出者はどのような雇用形態の場合も原則として、労災に遭遇した従業員を直接雇用している事業主となります。

もし、労働者が被災した場所が、会社の事業所の地域と異なる場合でも、勤務先を管轄する労働基準監督署に提出することになります。

労働者死傷病報告書の提出先

労働者死傷病報告書は、基本的に、被災労働者の勤務先を管轄する労働基準監督署へ提出します。

もし、労働者が被災した場所が、会社の事業所の地域と異なる場合でも、勤務先を管轄する労働基準監督署に提出することになります。

休業なしの場合

休業がない場合や、通勤災害が発生した場合は、労働者死傷病報告を提出する必要はありません

報告を怠った場合の罰則

労働者死傷病報告の報告を怠ったり、虚偽の内容で提出した場合は、労働安全衛生法違反により50万円以下の罰金が課せられることがあります。

また、厚生労働省のホームページで違反した企業名が公表されることもあります。

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2025年(令和7年)1月1日から、労働者死傷病報告の電子申請は原則義務化されます。

事業者の手間を削減するため、システム改修が行われe-Govと連携することで、スマートフォン等からでも電子申請することを可能とします。

パソコンやスマートフォンを所持していない事業者は、労働基準監督署に配置されるタブレットで電子申請を行うことが可能となります。

電子申請の義務化に伴う変更点

電子申請の義務化に伴い、労働者死傷病報告書の様式内容が変更されます。

事業の種類欄

事業の種類欄は、日本標準産業分類コード4桁を選択します。

被災労働者の職種欄

被災労働者の職種欄は、日本標準職業産業分類コード3桁を選択します。

傷病名及び傷病部位欄

傷病名及び傷病部位を分類コード2桁で選択します。

災害発生状況及び原因欄

災害発生状況及び原因の欄が、以下のように分割されます。

  1. どのような場所で
  2. どのような作業をしているときに
  3. どのような物又は環境に
  4. (化学物質が原因の場合は、その化学物質の名称を明記する)
  5. どのような不安全な又は有害な状態があって
  6. (保護具を着用していなかった、手すりが設置されていなかった等を記載する)
  7. どのような災害が発生したか
国籍・地域及び在留資格

該当する国籍・地域及び在留資格をそれぞれ3桁と2桁で選択してください。

記載事項の追加

休業4日未満(様式第24号)に、次の報告事項が追加されます。

  • 労働保険番号
  • 被災者の経験期間
  • 国籍・在留資格
  • 親事業場等の名称
  • 災害発生場所の住所

労働者死傷病報告書の必要書類・期限・記入例などを解説

労働者死傷病報告書の必要書類・期限・記入例などを解説

被災労働者が休業した日数によって、労働者死傷病報告書に使用する様式や提出期限は異なります。

休業日数については、労災発生日の翌日からカウントしてください。

労災発生日の翌日から被災労働者が出勤している場合は、休業日数は0日となります。

また、休業期間中に土日がある場合、その2日も休業日数にカウントされます。

  • 労災発生日の翌日からカウントする
  • 労災発生日の翌日以降、被災労働者が出勤している場合は休業日数が0日
  • 休業期間中に土日が含まれるなら、土日も休業日数にカウント

死亡および休業4日以上の場合

必要書類

様式第23号(労働者死傷病報告)を1部

提出期限

明確な提出期限はありませんが、遅延なく提出することが求められます。

ただし、労災発生から1ヶ月以上経過した場合は、報告遅滞理由書の提出が求められることがあります。

そのため、遅くとも1ヶ月以内に提出することが望ましいです。

提出方法
  • 電子申請

※ただし電子申請が困難な場合には、当面の間、書面による申請が認められています。
令和6年12月31日以前に発生した労働災害についても1月1日以降の報告受付分から適用となります

休業1日以上4日未満の場合

必要書類

様式第24号(労働者死傷病報告)を1部

提出期限

事故が発生した四半期の翌月末日までに提出する必要があります。

  • 1~3月に発生した場合 4月末日まで
  • 4~6月に発生した場合 7月末日まで
  • 7~9月に発生した場合 10月末日まで
  • 10~12月分に発生した場合 1月末日まで
提出方法
  • 電子申請

令和6年12月31日以前に発生した労働災害についても1月1日以降の報告受付分から適用となります

出典:帳票入力支援サービスを活用した 労働者死傷病報告の電子申請方法について

労働者死傷病報告書の入力支援サービスとは

厚生労働省が提供する「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」は、労働者死傷病報告書をはじめとする労働基準監督署への届出作成をサポートするツールです。

入力支援サービスの利用によって、以下のメリットがあります。

  • 届出書類の作成・印刷が簡単
  • スマートフォンからの利用も可能
  • 電子申請義務化への対応

入力支援サービスでは、必要なガイダンスに従って情報を入力するだけで、正確な帳票が作成できます。

パソコンとスマートフォンから利用が可能であり、入力作業の一時中断ができるため、入力ミスの削減や作業時間の短縮が期待できます。

帳票作成・印刷から電子申請までを一括で行うことができるため、業務負担の軽減につながるでしょう。

労働者死傷病報告書の入力支援サービスはこちらからアクセスできます。
出典:労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス|厚生労働省

労働者死傷病報告書の他に電子申請が義務化される報告

労働者死傷病報告と同様に、次の報告も電子申請が義務化されます。

  • じん肺健康管理実施状況報告
  • 総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告
  • 定期健康診断結果報告書
  • 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告書
  • 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書
  • 有機溶剤等健康診断結果報告書

労働者死傷病報告の他に会社が行う2つの対応

労働者死傷病報告の他に会社が行う2つの対応

労災が発生した場合、会社は労働者死傷病報告書の他にも行うことがあります。

労働者死傷病報告の他に会社が行う2つの対応は、以下のとおりです。

  • 労災認定手続き
  • 再発防止案の策定・実施

次の項目からは、労働者死傷病報告の他に会社が行う対応を解説します。

①労災認定手続き

労災認定手続きとは、労災が起こった際に、被災労働者が労働保険の給付を受けるための手続きのことを指します。

この手続きは、基本的に被災した労働者本人が行うとされていますが、実際には会社が手続きを担当することがほとんどです。

労働者の生活のために、速やかに手続きをする必要があります。

労災認定手続きについては、こちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にして下さい。

②再発防止案の策定・実施

労働者の安全を確保するため、労災が発生した際には再発防止案を策定し、それを実施することが必須になります。

労災は従業員の命や健康を脅かすだけでなく、会社のブランドイメージや信頼性にも悪影響を及ぼす可能性があります。

そのため、一度発生した労災をきっかけに、再発を防ぐための具体的な対策を速やかに策定し、それを徹底的に実施することが重要です。

具体的な労災再発防止対策は、次の通りです。

  • 機械に囲いや覆いを取り付ける
  • 安全な作業床を設置する
  • 機器のメンテナンス回数を増やす
  • 照明を明るくする
  • 危険な作業が生じた際には、労働者との情報共有のためのミーティングを都度開催する
  • 労働時間を見直す

まとめ|労災が起きた際は労働者死傷病報告書を忘れず提出しよう

まとめ|労災が起きた際は労働者死傷病報告書を忘れず提出しよう

それでは最後に、本記事のおさらいをしましょう。

本記事のおさらい
  • 労働者死傷病報告は、労働者が労働災害により死亡・休業した際に提出する報告書
  • 提出者は、労災に遭遇した労働者を直接雇用している事業主
  • 派遣労働者が被災した場合は、派遣先と派遣元の双方が提出する
  • 休業がない場合や通勤災害が発生した場合は、提出する必要はない
  • 被災労働者の休業が4日以上の場合は「様式第23号」を提出する
  • 被災労働者の休業が4日未満の場合は「様式第24号」を提出する

冒頭でも述べたように、労働者死傷病報告は労災の再発防止や原因解明のために提出する報告です。

内容に誤りがないように、しっかり災害の発生状況等を把握して作成しましょう。

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