労災認定の手続き方法は?担当者が知りたい必要書類や請求時効を紹介

「会社で労働災害が起こって、労災認定の手続きをすることになった!どうすればいい?」

「必要な書類は?手続きの流れは?」

「労働者に負担をかけないように、できるだけ会社で手続きを行いたい」

人事労務担当者の方で、このような悩みを抱えていませんか?

労災認定の手続きは、原則として被災労働者本人が行うとされていますが、実際には会社が手続きをすることが一般的です。

問題なく手続きを進めようと思っても、必要な書類や提出期限などが分からずに、戸惑っている担当者の方は多いのではないでしょうか。

そこで、今回は次の内容を解説していきます。

  • 労災認定とは
  • 労災認定手続きの流れ
  • 労災保険給付の種類
  • 必要書類や請求時効

この記事を読めば、労災認定の手続きをスムーズに行えるので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

労災認定とは

労災認定とは

労災認定は、労働者が仕事中や通勤中に受けた怪我や病気が、業務に起因するものであると認められる制度です。

労働災害だと認定されると、労災保険から給付金を受け取ることができます。

労災に該当するのは次の3つです。

業務災害

労働者が、業務中に生じた怪我や病気を業務災害と言います。

例えば、工場での機械操作中に怪我をしたり、建設現場での落下事故などが業務災害に当てはまります。

通勤災害

労働者が、職場と自宅の往復中に生じた怪我や病気を通勤災害と言います。

通勤途中での交通事故、転倒による骨折、急な体調不良などが該当します。

精神障害

労働者が業務中または通勤中に精神的ダメージを受けて、精神障害を発症した場合、労災認定の対象になります。

例えば、パワハラやカスハラ(カスタマーハラスメント)が原因で、うつ病や適応障害が発症した場合、労災保険が補償されます。

【全部で5ステップ】労災認定手続きの基本的な流れ

【全部で5ステップ】労災認定手続きの基本的な流れ

労災認定の手続きは、おおむね次の流れで行われます。

STEP
従業員が労働災害を会社に伝える

労災が発生した際、従業員はその事実を上司に伝えます。

STEP
労災の請求書を作成する

労災の発生日時、場所、状況、傷病の程度などを労災請求書に記入します。

STEP
所轄の労働基準監督署又は労災指定医療機関などに提出する

請求書とともに必要な書類を、所轄の労働基準監督署又は労災指定医療機関などに提出します。

STEP
労災に該当するか調査が行われる

提出された請求書を基に、労働基準監督署が労災に該当するか調査します。

具体的には、会社に資料提出を求めたり、関係者に聞き取りを行うなどの方法です。

STEP
労災認定されたら保険給付が決まる

労災認定された場合、従業員は保険給付を受けることができます。

なお、支給決定については被災従業員のみに通知されます。

【8種類の労災保険給付】必要書類・請求時効・給付期間などを紹介

【8種類の労災保険給付】必要書類・請求時効・給付期間などを紹介

労災保険給付には8つの種類があります。

  • 療養(補償)等給付
  • 休業(補償)等給付
  • 傷病(補償)年金
  • 障害(補償)等給付
  • 介護(補償)等給付
  • 二次健康診断等給付
  • 遺族(補償)等給付
  • 葬祭料等(葬祭給付)

それぞれどのような給付なのか、申請手続きにどんな書類が必要かなどを説明していきます。

①療養(補償)等給付

療養(補償)等給付は、労働者が業務中または通勤中に傷病を負った際に、その治療やリハビリに要する費用が給付されます。

労災指定病院に受診した際に給付される「療養の給付」と、指定病院以外で受診した際に支給される「療養の費用の支給」があります。

療養の給付(労災病院・労災指定病院を受診した場合)
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提出書類(業務災害の場合)様式第5号(療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の給付請求書)
提出書類(通勤災害の場合)様式第16号の3(療養給付たる療養の給付請求書)
提出先受診した労災病院・労災指定病院
請求時効なし
給付期間労災による病気・怪我が治るまで
療養の費用の支給(労災病院・労災指定病院以外で受診した場合)
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提出書類(業務災害の場合)様式第7号(療養補償給付及び複数事業労働者療養給付たる療養の費用請求書)
提出書類(通勤災害の場合様式第16号の5(療養給付たる療養の費用請求書)
提出先所轄の労働基準監督署長
請求時効療養の費用を支出が確定した日の翌日から2年

②休業(補償)等給付

休業(補償)等給付は、被災労働者が治療や回復のために仕事を休業する場合に、その労働者に対して支給される給付金です。

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提出書類(業務災害の場合)様式第8号(休業補償給付・複数事業労働者休業給付支給請求書)
提出書類(通勤災害の場合)様式第16号の6(休業給付支給請求書)
添付書類賃金台帳、出勤簿の写し
提出先所轄の労働基準監督署長
請求時効賃金を受け取らなかった日の翌日から2年
給付期間病気・怪我の症状が治療されるまで

③傷病(補償)等年金

傷病(補償)等年金は、労働者の傷病が療養開始後1年6ヶ月経過しても治らず、一定の要件に該当したときに支給される年金です。

一般的に、療養開始後1年6ヶ月を経過したときに、労働基準監督署から労働者の元に届書が送付されます。

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提出書類様式第16号の2(傷病の状態等に関する届)
提出先所轄の労働基準監督署長
請求時効届が送付されてから1ヶ月
給付期間病気・怪我の症状が固定されるまで

④障害(補償)等給付

障害(補償)等給付は、労働者が業務上または通勤での事故が原因となり、身体に一定の障害が残った場合に支給される給付金です。

障害等級に応じて、障害年金と障害一時金のいずれかが給付されます。

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提出書類(業務災害)様式第10号(障害補償給付・複数事業労働者障害給付支給請求書)
提出書類(通勤災害)様式第16号の7(障害給付支給請求書)
添付書類診断書、レントゲンなどの資料
提出先所轄の労働基準監督署長
請求時効病気・怪我が治癒した日の翌日から5年
給付期間無期限

⑤介護(補償)等給付

介護(補償)等給付は、労災が原因で労働者が介護を要する状態になったときに支給されます。

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提出書類様式第16号の2の2(介護補償給付・複数事業労働者介護給付・介護給付支給請求書)
添付書類診断書
提出先所轄の労働基準監督署長
請求時効介護を受けた月の翌日の1日から2年
給付期間認定条件を満たしている間

⑥二次健康診断等給付

二次健康診断等給付は、労働者が職場で行われる定期健康診断(一次健康診断)で異常が認められた場合に、二次健康診断の受診費用などが給付されます。

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提出書類様式第16号の10の2(二次健康診断等給付請求書)
添付書類一次健康診断の結果の写し
提出先健診給付病院
請求時効一次健康診断の受診日から3ヶ月
給付を受け取れる回数1年度内に1回(4/1~3/31までの間)

⑦遺族(補償)等給付

遺族(補償)等給付は、労働者が業務または通勤が原因で亡くなった際、その労働者の遺族に対して支給されます。

内容は「遺族(補償)等年金」「遺族(補償)等年金前払一時金」「遺族(補償)等一時金」の3種類です。

通常、遺族(補償)等給付の手続きは遺族が行いますが、会社が協力して手続きの支援をすることがあります。

遺族(補償)等年金(被災労働者と特定の関係にある遺族がいる場合)
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提出書類(業務災害の場合)様式第12号(遺族補償年金・複数事業労働者遺族年金支給請求書)
提出書類(通勤災害の場合)様式第16号の8(遺族年金支給請求書)
添付書類死亡診断書、戸籍の謄本、賃金台帳
提出先所轄の労働基準監督署長
請求時効被災労働者が亡くなった日の翌日から5年
給付期間受給権者が失権するまで
遺族(補償)等年金前払一時金(年金を前払いで受ける場合)
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提出書類年金申請様式第1号(遺族補償年金・複数事業労働者遺族年金・遺族年金前払一時金請求書)
添付書類遺族(補償)等年金の提出・添付書類(年金の請求と同時に行うため)
提出先所轄の労働基準監督署長
請求時効被災労働者が亡くなった日の翌日から2年
遺族(補償)等一時金(遺族(補償)等年金を受け取る遺族がいない場合など)
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提出書類(業務災害の場合)様式第15号(遺族補償一時金・複数事業労働者遺族一時金支給請求書)
提出書類(通勤災害の場合)様式第16号の9(遺族一時金支給請求書)
添付書類死亡診断書、戸籍の謄本
提出先所轄の労働基準監督署長
請求時効被災労働者が亡くなった日の翌日から5年
給付期間受給権者が失権するまで

⑧葬祭料等(葬祭給付)

葬祭料等(葬祭給付)は、葬祭を行った遺族もしくは会社などに対して支給されます。

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提出書類(業務災害)様式第16号(葬祭料又は複数事業労働者葬祭給付請求書)
提出書類(通勤災害)様式第16号の10(葬祭給付請求書)
添付書類死亡診断書
提出先所轄の労働基準監督署長
請求時効被災労働者が亡くなった日の翌日から2年
※併せて遺族(補償)等給付の手続きを行う場合は、添付書類は必要ありません

【労災認定手続きだけじゃない】労災時に会社が行う2つの対応

【労災認定手続きだけじゃない】労災時に会社が行う2つの対応

労働災害が発生した際、会社が行うべき対応は労災保険の申請手続きだけではありません。

会社としての責任を果たし、再発防止に努めることが重要です。

①労働者死傷病報告の提出

労災が発生した際、会社は労働者死傷病報告を提出する必要があります。

労働者死傷病報告の提出は、労働基準に基づく義務であり、労災の原因究明と再発防止、労働環境の改善のために不可欠です。

報告を怠ると法的責任が問われる可能性があるので、速やかに提出しましょう。

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提出書類(死亡および休業4日未満の場合)様式第24号(労働者死傷病報告の提出)
提出書類(死亡および休業4日以上の場合)様式第23号(労働者死傷病報告の提出)
期限(死亡および休業4日未満の場合)四半期ごとの翌月末日まで
期限(死亡および休業4日以上の場合)遅滞なく
提出先所轄の労働基準監督署長

②再発防止策の策定・実施

労災の発生後、再発防止策を策定・実施して、安全で働きやすい職場環境にすることが大切です。

労働基準監督署から再発防止対策書の提出を求められることもあるので、発生原因を調査して再発防止に取り組みましょう。

労災再発防止対策の具体例
  • 機械に囲いを設置する(機械の挟まれ、巻き込まれ防止)
  • 手すりや中桟を設置する(高所からの転落防止)
  • 床の摩擦を高める(転倒防止)
  • 安全な作業手順を定めて周知する
  • 労災事例を発表して注意喚起し、労働者の安全意識を高める
  • 交通安全教育を行う
  • 労災発生時の行動マニュアルを作成・配布する

まとめ|労災認定の手続きに不安があれば飯田橋事務所に相談しよう

まとめ|労災認定の手続きに不安があれば飯田橋事務所に相談しよう

今回は、労災認定の手続きについて解説してきました。

労災の発生は、会社としても驚き不安に感じることだと思います。

しかし、被災した労働者の不安をなくすためにも、慌てず正確に手続きを行うことが大切です。

もし、労災認定の手続きについてご不明な点があれば、飯田橋事務所にご相談ください。

手続きに関することだけでなく、労災の再発防止についてのご相談も承っています。

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